天皇皇后両陛下は9日、結婚から30年=パール婚を迎えられました。喜びも悲しみも共にされた30年の節目に撮影された映像には、陛下のある強い思いがありました。
30年の節目はご養蚕映像
「互いに助け合いつつ、喜びを分かち合い、そして時には悲しみを共にし、これまでの歩みを進めてこられたことに深い感謝の念を覚えます」20万人が歓喜したあの結婚パレードから30年。
この記事の画像(29枚)両陛下は共に歩んで来た日々を「感慨もひとしお」と振り返られました。30年の節目にあたり撮影されたのは、皇居内の紅葉山御養蚕所。
明治以降、歴代の皇后に伝わるご養蚕を陛下と愛子さまが手伝い、ご家族3人で楽しそうに話しながら繭を取り出す作業を進められています。
これまで結婚の節目の映像は、お住まいの庭で撮影されていました。今回はなぜ、ご養蚕所で撮影されたのでしょうか。
1日に3回の撮影
実は撮影された先月30日、皇后さまはまずお一人で、午後5時半過ぎ、蚕に桑の葉を与える「ご給桑」という行事にジャケット姿で臨まれました。
その後、皇后様は、淡いグリーンのシャツに着替え、午後7時頃、陛下と愛子さまと共にご養蚕所に戻り、できあがった繭を取り出す「繭掻き」をされました。
養蚕に取り組んで4年目の皇后さまは手際よく作業が進み、まだ繭が残っていた愛子さまと途中で場所を交代される場面も見られました。
そして、午後8時半には閉店後のデパートへ。ご家族3人、淡いブルーに色味を揃えた装いに着替え、即位5年と結婚30年を記念した特別展を鑑賞されました。
夕方から夜にかけて3回もの撮影は、皇后さまにとって負担も大きかったと思いますが、蚕の成長に合わせて作業する必要があり、かなり工夫して体調を整えられたのではないかと感じました。
養蚕所での撮影は陛下が判断
蚕はとてもデリケートな生き物で、飼育には細心の注意が必要です。
「皇后のお仕事」である大切な養蚕に雅子さまが安心して取り組めるよう、陛下は一貫して寄り添われています。
愛子さまも学業の合間に手伝われ、こうした家族のサポートを受け、皇后さまは徐々に腕を上げ、喜びを感じながら作業をされているそうです。
養蚕の時期と重なった結婚30年の節目。
実は今回、これまでのように庭ではなく、養蚕所での撮影を選ばれたのは陛下なんだそうです。
ある側近は「『これまでもこれからも家族で支え合っていく』という陛下のお気持ちが色濃く出ている」と話していました。
ご家族の絆と素顔の公開
結婚30年の前日、今年4月にご一家が御料牧場に滞在された際の写真が公開されました。
両陛下の頭が「ごっつん」するハプニングがあった、あの牧場での写真です。
動物好きのご一家にとってお気に入りの場所である牧場での、およそ4年ぶりのご静養。
どんなふうに過ごされたのか記者会から要望したところ、宮内庁を通じて17枚の写真が提供されました。
防護服を着用して牛と触れあったり、鶏舎で卵を採られる様子や生まれたての子牛のもとを訪ね、直前に空に虹がかかったことから、愛子さまが「レインボー」と名付けた子牛にミルクを与える様子、またヘルメットを着用してサイクリングしたり、タケノコ掘りやイチゴの収穫を楽しまれる様子も収められていました。
天皇、皇后としてではなく、ご家族3人で過ごされるつかの間の休日。リラックスした表情はとても新鮮で、「素顔を知っていただくのも良いのではないかと考えられたと思う」と側近は推し量っていました。
コロナ禍以降初めての静養で、広々とした牧場でゆっくり過ごされたことが伝わり、素顔の公開には共に歩む国民への信頼のお気持ちもあるのではないかと感じました。
喜びも悲しみも共にした30年の歳月で築かれた揺るぎない家族の絆。
家族で支え合い、国民に寄り添い、両陛下の歩みはこれからも続きます。
(フジテレビ社会部・宮内庁担当 宮﨑千歳)