夏になると抜群においしく感じられる「ビール」かつては地ビールと呼ばれていたものが、最近はクラフトビールと呼ばれるようになりどんどんおいしくなっている。石川県でそんなクラフトビールを製造する会社が、新しい挑戦を始めたという。それはウイスキー。いったいどういう事か、取材した。

クラフトビールの製造から始まりついにウイスキーに

ビアガーデンの客:
乾杯!

連日30度を超える暑い日が続くと「とりあえず!」と一杯飲みたくなるのが「ビール」だ。

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石川県内にはビールの醸造所が5カ所あり、それぞれ個性あふれるクラフトビールを作っている。

オリエンタルブルーイング 田中誠社長:
(クラフトビールとは)小規模醸造所が作るユニークなビールって思ってもらったら良いと思います。

オリエンタルブルーイングの田中誠(たなか・まこと)社長。小松市出身で8年前に脱サラし、ビールの世界に飛び込んだ。

田中社長:
会社を辞めて妻と2人で1年弱ぐらい世界一周したんですね。その中でもスウェーデンで1カ月間、山の方でビールの醸造所に寝泊りしながら色々教えてもらって、こういう生活を今後していこうかなと思って、勉強して本を読んでレシピを書いて「これやってみたい」と。アドバイスをもらいながら実際に作ってみたんです。色んな人にふるまったら「美味しい」って言ってもらえた、すごく覚えています。

意外に知らないビールの製造工程

そもそもビールはどうやって出来るのだろうか。

田中社長:
ここは糖化釜、あっちはろ過釜、そっちは煮沸釜。今言った順番で液体が流れる。

麦のデンプンを液体(水)に抽出して麦汁作るのが糖化だ。

この麦汁をろ過し綺麗な麦芽ジュースを作る。これにビールの苦味や香りの決め手となるホップを合わせ、酵母を入れて発酵させればビールの完成だ。

記者:
色が急激に変わったのはホップ?
醸造長 片山圭さん:
ホップの緑色です。ホップの香りはこのタイミングで入れたら結構飛んじゃうんですよ、苦みだけ出て香りは飛んじゃうんですけれど、煮沸が終わった後に(ホップを)入れると結構香りも残る。

オリエンタルブルーイングでは、醸造所のリーダー片山さんを中心にビールを月に2、3回製造している。クラフトビールは、まさ職人の技が詰まったビール。製造するたびに味のチェックも欠かさない。

田中社長:
ちょっとずつ苦くなくなっている?酸味が強くなってるのかな。苦味だけちょっと足してみたらどうかな?

田中社長:
僕ら評価する時はもっと分析的で、分ける。色・泡・炭酸・苦み・香り。ビールって種類が同じなら全部同じ味だって思いがちなんですが、ロットによって微妙に違ったり、保存状態でも。提供温度、あとはグラスでも印象が違うので。毎回、同じグラスで味見するようにしています。ビール専門のグラスってあんまり無くってワイン用のを使っています。inao(イナオ)っていって国際的なワインの品評会とかは全部この会社のグラスでやっていると思います。

ビールのおいしい飲み方を 醸造所の社長に聞く

そんなこだわりの詰まったオリエンタルブルーイングのクラフトビール。田中社長にビールの美味しい飲み方を教えてもらった。

 

田中社長: 
ビールの種類がたくさんあったら、色の薄いやつから、もしくはアルコール度数の低めのものから楽しむのがオススメ。キンキンに冷やしすぎる必要は無くて、ビンや缶のままではなくてグラスに注いでもらえたら良いのかな。

田中社長:
量を楽しむこともそうなんですが、やっぱり一口ずつ味を楽しんでもらえたらなと思います。

お客さんの反応は…

客:
自分、クラフトビール好きなので。美味しいです、スタウトとかも。
客:
これ何杯でもいけますね。どんどん入っちゃう…

田中社長:
世界中で色んなビールを飲んで美味しかったんですけど、いっぱい飲むと大体一緒なんですよ。そうじゃないローカルでユニークなビールを作りたいと思っています。

田中社長がこう話すように、これまで湯涌特産の柚子を使ったり加賀棒茶を使ったりと石川県らしいものや…

新型コロナの影響で大量に余ってしまったカボチャを使ったビールなど地元を応援してきた。

次の一手は“コメ”を使ったウイスキー

そんな田中社長、いま、新たなことに挑戦しているという。

田中社長:
空樽が多いです。それのオーナーになってくれる人をクラウドファンディングで募集しているんですけども。

ずらりと並んでいるのはウイスキーの樽。田中社長、今、ウイスキーの製造に挑戦しているのだ。

田中社長:
石川では、僕らが唯一の(ウイスキー)製造業者でそれ自体が面白いなと思いました。

実は石川県内にウイスキーの蒸留所はない。ハイボールの人気で需要が高まる中、ローカルなウイスキーを作ろうと考えた田中社長。

驚きはその原料だ。

田中社長:
米とモルトの配合で出していきたい。日本らしいもしくは金沢らしいウイスキーを造りたいってなった時、にここは米どころですし、お米はたくさんある。

使うのはなんと米。それも日本酒の大吟醸を作る際に出る米の削りかすを使うのだ。

田中社長:
シングルモルトで能登ヒバの樽で3カ月寝かしたやつ。麦が元来、ハチミツみたいな香りを濃縮してエッセンスになると甘い香りがするんですね。順調に熟成していくんじゃないかなと言う、感じがします。

既に米を使ったジンの製造には成功。3年後の出荷を目指し、クラウドファンディングで資金を集め、なんと2500万円が集まったと言う。

田中社長:
ビールがインバウンドだとしたら、ウイスキーはアウトバウンド。ビールやウイスキーを通して色んな人に出会ったりコラボしたり。(この仕事は)人生の楽しみです。

クラフトビールを製造する仕事は酒造りに情熱を傾け石川の魅力を発信し続ける地元愛にあふれたものだった。田中社長の次の一手にも注目だ。

(石川テレビ)

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