仕事のミスを指摘したら萎縮されてしまった、指導したつもりが“厳しい叱責”と捉えられてしまった…。部下を持つ上司の立場ならば、そんな場面を経験したことがあるかもしれない。

「パワハラ防止法」が施行されてから2年が経ち、パワハラを撲滅しようという風潮は年々高まっているが「部下にこれを言ったら、パワハラと思われてしまうのではないか…」と敏感になってしまっている人も多いのではないだろうか。

そんな中、従業員総活躍をサポートするHRサービス・Humap(ヒューマップ)を提供する、株式会社アスマークが「上司に聞いた“叱責”に関する実態調査」を行った。

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調査は、全国の30~50代の管理職従業員・男女495人を対象に実施したインターネット調査(2022年6月21日~6月28日・Humap/株式会社アスマークによる調査)。

まず「あなたは部下を叱ることがあるか」との質問に対して、「よくある・時々ある」と最も多く答えたのは、30代男性(43.0%)。最も部下を叱らないのは50代男性(23.0%)。

「部下にパワハラだと思われそうで指導しづらいと感じることはあるか」という質問では、「よくある・時々ある」と最も多く回答したのは、30代男性(52.0%)。その後は30代女性(48.0%)、40代女性(47.7%)と続き、50代女性(35.1%)が最も少なくなった。

40〜50代に比べて、30代の方が部下を叱る場面も、「パワハラと思われそうで指導しづらい…」と考えていることも多いという調査結果。

しかし一方で、30代が「部下を叱ることをやめよう」という結論に至っていないこともわかっている。

「あの時、叱らなければよかったと実際に思ったケースはあるか」との質問に対しては、最も多く「ある」と答えたのは50代女性(33.3%)。最も少ないのは30代女性(24.0%)となった。

また、「部下の成長のためには、叱ることも必要だと思うか」という質問に対しては、30代男性は「そう思う・ややそう思う」が55.0%。各世代の男女ともに半数以上が「部下を叱ることも必要」と考えていることがわかった。

これらの調査結果について、調査を行ったアスマークは「叱ることも上司の役割の1つであるという考え方が、世代を問わずに存在している」「不安を解消し、スムーズに指導するためには、パワハラになる叱り方・ならない叱り方の知識を身につけることが求められる」と分析している。

30代は「怒られて指導されてきた人が減っている」世代

部下を叱ることも時には必要と思いつつ、自分がパワハラの加害者になってしまっていないか、上司世代よりも心配している。若い世代が陥っているそんな板挟みの現状や、知っておいた方がいい「パワハラになる叱り方・ならない叱り方」について、アスマークにお話を聞いた。


――この調査をしたきっかけは?

パワハラ防止法対策パッケージCHeck(チェック)という「企業のコンプライアンス・ハラスメント状況を診断するサービス」を自社で展開しています。調査の中で「上司・部下または同僚に改善して欲しいことや『コンプライアンス』に関してのご意見」を自由記述で尋ねた際、「マネージャーがちゃんと指導できていない」とか「すぐにハラスメントだという風潮もあり指導しづらい」といった意見があがっており、上司の方がハラスメントを心配して指導をうまくできていないのではと感じていました。

最近は「怒られた経験がない人が多い」「実は叱ってほしいという若者も多い」といった話を耳にすることや、逆に「理不尽に怒られたので会社をやめた」といった話を耳にすることもあったので、叱る・叱られることへの考えや上司と部下の違いを明らかにすることで、ハラスメントの理解を促進する足掛けとなればと思い、今回の調査を企画しようと考えました。 


――個人を呼び出して話す、大勢の前で怒鳴る…「叱る」「叱責する」とはどんなものを想定している?

業種や職種を限定して調査していないこともあり、口頭注意、メールなど、叱責の方法にはいろいろなパターンがあると考え、特に状況を指定せずに回答者の主観に任せて回答してもらっています。

――「部下にパワハラと思われそうで指導しづらい」のは30代が多く、40・50代は少ない傾向。この受け止めは?

想定に近い結果だったと受け止めています。40代や50代と比べ、30代くらいだと、時代背景的にも怒られて指導されてきた人は減っているのではないかと考えていました。この仮説が正しければ、叱責されてこなかった人が、必要に応じて叱責して指導する立場になった際、指導に難しさ感じるのではないかと考えていました。 


――なぜ30代が最もパワハラを気にしていると思う?

上記の「叱責で指導されてきた経験の多い・少ない」といった要因もあると考えていますが、一番の要因は、30代で部下を持つ立場ということで、現場に近いポジションで経験の浅い20代を指導する必要があるからではないかと思います。

若い世代ほど離職率も高いですし、ハラスメントに敏感といった話も聞きますので、そのようなことも気にして指導しづらさを感じる人も多いのではないでしょうか。 

40・50代は「叱ること」への苦手意識はないものの…(イメージ)
40・50代は「叱ること」への苦手意識はないものの…(イメージ)

――40・50代は「部下を指導しづらい」とは感じていない半面、「叱責を後悔した経験」は多い。これはどういうこと?

40代や50代は自分が叱責されながら育てられてきたというケースも多いのではないかと思っていますので、そのような指導に対する苦手意識のようなものがやや少ないのかなと思います。

一方で、自分がされてきたことと同じように叱責した際に、若い世代が仕事を辞めることにつながって後悔するなど、パワハラを心配せずにした行動が後悔につながっているといった可能性があるのではないかと考えられます。


――「叱られる経験」が少ないことは、「叱る=パワハラ」と感じること・感じられてしまうことに関係があるということ?

関係はあるだろうと感じています。叱るということがパワハラだととらえられることをリスクと感じて、指導すべきことでも叱責しづらいという風潮が多少なりともあるのではないでしょうか。

部下は「叱られる=パワハラと決めつけない」ことも大事

30代が「パワハラと思われないか心配」と思っている理由には、40〜50代のように「叱られて育った」経験が自身に少ないこと、またその部下も「叱られて育ってきた」世代ではないものの、実務経験の浅さなどから「上司が叱らざるを得ない」環境にいることが背景にあると分析するアスマーク。

実際に、別の調査の中では「上司に叱られた経験がない・あまりない」という20代の一般社員が、男女ともに半数以上という結果が出ている。

一方で、自身が「叱られて育った」40〜50代には、叱ることへの苦手意識はないものの、実際に「叱られ慣れていない」部下を叱ったのちに「あれはパワハラだったのではないだろうか…」と心配する、という問題も見えた。

では、そんな悩める上司・部下ともに、過剰にパワハラを心配せずに済む方法はどんなものがあるのだろうか。最後に、気を付けたい叱り方と、その受け止め方について聞いた。


――「叱る=パワハラ」となってしまわないために、上司・部下それぞれが気を付けるべきこととは?

上司側が叱責をするときに気を付けるべきことは、相手の成長のためであることを伝えるためにも「相手が理解・納得できる理由を明確に示すこと。人格を否定しないこと」が最も重要だと思います。また、理解してもらうため、かつ「パワハラだと言われないため」に、荒っぽい口調はやめる、感情的にならない、といった「態度」に関わる部分も重要なポイントだと感じます。

部下側としては、叱られる=パワハラと決めつけずに、叱られる理由や上司の思いにも目を向けることが、自分の成長のための叱責として受け止めることにつながると思います。

 

パワハラをなくすことは重要な課題だが、上司・部下ともに叱り方の「伝え方」「受け止め方」を考え直すことで、必ずしも「=パワハラ」とはならない、健全なコミュニケーションがとれるようになるようだ。

調査データ引用:上司に聞いた”叱責”に関する実態調査~「パワハラと思われそうで指導しづらい」と感じる30代男性は5割以上
パワハラ防止法対策パッケージ・CHeck

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。