顧客や取引先からの暴言や悪質なクレームなどの著しい迷惑行為、いわゆる「カスハラ(=カスタマーハラスメント)」が問題となっている。
厚生労働省が実施した「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、企業に対する調査では、過去3年間に顧客などからの著しい迷惑行為の相談があった企業の割合は19.5%。労働者に対する調査では、過去3年間に勤務先で顧客などからの著しい迷惑行為を「一度以上経験した」と回答した割合は15%だった。
この調査は、カスハラに悩む企業や労働者が少なくないことを示している。
調査結果を受け、厚労省は「不当・悪質なクレームは、従業員に過度に精神的ストレスを感じさせるとともに、通常の業務に支障が出るケースも見られるなど、企業や組織に金銭、時間、精神的な苦痛等、多大な損失を招くことが予想される。企業はいわゆるカスタマーハラスメントに対して従業員を守る対応が求められる」としている。
こうした中、任天堂は10月12日、修理サービスの規定(弊社製品の修理サービス規程/保証規程)を10月19日に更新し、新たな項目「カスタマーハラスメントについて」を追加すると発表した。
【更新内容】
・再修理対応に関する規定の変更
・交換または修理をお断りする場合の規定を追加
・「カスタマーハラスメントについて」の項目を追加
・製品の修理受付が保証期間中に終了した場合の対応に関する規定を追加
・その他全体的な表現の見直し
新たに追加される「カスタマーハラスメントについて」に関して、任天堂は「修理品に関する問い合わせをいただく際に、お客様のご要望を実現するための手段として、社会通念上相当な範囲を超える行為を行うことはご遠慮ください」としている。
「社会通念上相当な範囲を超える行為」に該当する行為としては、以下の7つを示した。
・威迫、脅迫、威嚇行為
・侮辱、人格を否定する発言
・プライバシー侵害行為
・保証の範囲を超えた無償修理の要求など、社会通念上過剰なサービス提供の要求
・合理的理由のない当社への謝罪要求や当社関係者への処罰の要求
・同じ要望やクレームの過剰な繰り返し等による長時間の拘束行為
・SNSやインターネット上での誹謗中傷
そして、「これらの行為があったと当社が判断した場合、交換または修理をお断りさせていただく場合がございます。更に、当社が悪質と判断した場合には、警察・弁護士等に連絡のうえ、適切な対処をさせていただきます」としている。
任天堂が修理サービス規定に“カスハラ対策”を追加したことについて、Twitter上はおおむね好評価。「任天堂が毅然とした態度を表明してくれてうれしい」などの声があがっている。
「従業員も笑顔でいるためのルール作りが必要と考えた」
SNSでも評価されている任天堂の“カスハラ対策”にはどのような狙いがあるのか? 任天堂の担当者に話を聞いた。
――新たに「カスハラ」に関する項目を追加した狙いは?
当社は、お客さまはもちろん、開発者を含む従業員など、当社にかかわる全ての人を笑顔にすることを目指しています。
お問い合わせ対応の現場においても、お客さまに笑顔になっていただくために、働く従業員も笑顔でいるためのルール作りが必要と考えました。
――修理に関する問い合わせで、これまでに、カスハラに該当するような行為や発言があった?
お問い合わせの内容や、お寄せいただいたご意見については、お伝えすることはできません。
カスハラが問題となる中、任天堂が示した対策がTwitter上で評価されているのは、多くの企業や従業員がカスハラに悩まされているということなのかもしれない。