13年前に、神戸市で高校生が殺害された事件の初公判が7日に開かれた。被告の男は、殺意を否認した。男は現在30歳だが、事件当時は17歳だったため、少年として裁かれる。

事件から11年後に逮捕 7日に初めて遺族の前へ

スーツ姿で、証言台に立つ男。7日、始まったのは、13年前に男子高校生が殺害された事件の裁判員裁判。「複数回刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった」。裁判の冒頭、男は殺意を否認した。

男は現在30歳。しかし、事件当時17歳であったため少年法が適用され、名前は明らかにならない。さらに、有罪となった場合の量刑も最長で懲役15年となる。

遺族は、裁判前の取材で、被告の男に少年法が適用されることについて、次のように話した。

堤将太さんの父・堤敏さん(64):
僕らにしたら犯罪を犯して逃げている1日1日が犯罪だから。今から更生を目的として教育して社会に戻す。そういうふうな処分しましょうかっていうことが「それでいいの?」と思うよ

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2010年、神戸市北区で高校2年だった堤将太さんが自宅近くの路上で、ナイフで刺されて殺害された。

事件は長い間解決に至らなかったが、2021年になって警察に情報がよせられ、犯行当時17歳の男が殺人の疑いで逮捕された。

事件から13年。7日の初公判で、男は初めて遺族の前に姿を見せた。

検察側は、被告が、高校時代に憎しみを募らせた不良のような男に将太さんが見えたため犯行に及んだと指摘し、責任能力はあったと主張。

一方、弁護側は、被告の男は当時幻聴が聞こえるなど心神耗弱状態だったと主張した。

そして、7日の裁判で山場となったのが、被告の父親への証人尋問。将太さんの父親・敏さんは、被害者参加制度を利用して、裁判に参加し、直接問いかけた。

堤将太さんの父・堤敏さん(64):
被害者や遺族に謝罪は考えなかったのですか?

被告の父:
常に考えていました

堤将太さんの父・堤敏さん:
なぜ謝罪しなかったのですか?

被告の父:
わが身ならば、憎悪が増幅して顔を見るのも謝罪も受けるのも苦しいと思う。法廷で事実を知ったうえで謝罪することが肝要だと思いました

堤将太さんの父・堤敏さん:
息子が犯人だということをどう思っていますか

被告の父:
常に悲しく、生涯通じて償わないといけないと思っています

父親同士のやりとりの間も、被告の男が遺族と目を合わせることはなかった。

6月23日に判決が言い渡される。

堤将太さんのご遺族を取材してきた藤田裕介記者が裁判の様子を報告した。

Q.元少年の男はどんな様子で裁判に臨んでいたのでしょうか?

藤田裕介記者:
法廷で元少年の男を見ていて一番印象的だったのは、ほぼ表情を変えず、うつむき加減で、遺族のほうにまったく目を向けなかったことです。男は、スーツ姿で、出廷し、マスクを着けていました。証人として父親が法廷に姿を現した時だけ、涙をぬぐうように目元を触りました。堤将太さんの父親・敏さんは、検察官の後ろに座っていて、男のほうに目を向けたり、時には目をしかめて弁護人や証人をみていたのが印象的です。犯行時の話を警察が行った時は顔を覆うようなしぐさもありました

Q.裁判では、堤さんの父・敏さんが証人尋問で、元少年の男の父親に質問を投げかける機会もありましたが、その時、敏さんはどんな様子でしたか?

藤田裕介記者:
敏さんは裁判前、取材に対して、「将太の言いたいことを代弁してあげないといけない。それを元少年の男に伝えたい。悔しかったこと、つらかったことを言ってやろう」と話していました。きょうは男の父親に対する証人尋問でしたが、男とその家族の中で、この法廷で初めて謝罪の言葉を口にした父親に対し、なぜこれまで謝罪しなかったのかと強い口調で訴えかけました。男の父親が「自分に置き換えて謝罪が逆に憎しみを増すと思っていた」と話しましたが、その後も謝罪の意志があったかどうか、繰り返し問いただしていました

30歳の“元少年” 法の裁きは「少年法」に基づく

今回の裁判の大きなポイントは、被告人は30歳の男だが、当時は17歳の「少年」だったこと。そのため、少年法が適用されるので被告人の名前は、裁判の中で明らかにされない。

また成人が殺人罪で裁かれる場合、最高刑は死刑だが、今回は13年前の事件ということで、改正前の少年法が適用され、有罪となった場合の量刑は最長で懲役15年となる。

Q.堤さんの父親・敏さんは、この少年法の適用について、どのように話しているんですか?

藤田裕介記者:
男は事件発生から11年犯行を名乗り出ることなくいわば逃げていて、その間に成人となりました。敏さんは「その成人となった男に少年法を適用してどうするのか?」「少年法がうたう、保護や立ち直りを重視する形で裁くことがいいのか」と非常に憤っています。一方で、敏さんは事件直後から、犯行は少年によるものかもしれないと、少年事件の裁判を傍聴するなど、少年法について、自身で勉強もされてきました。本当に長い間、この裁判に向けて準備をしてこられました。法律の壁がある中でも、「できる限り良い判決が欲しい」と話していて、司法が、どこまで遺族にとって納得いく答えを出せるのかが注目されます

(2023年6月7日 関西テレビ「newsランナー」放送)

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