自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家が注目したのは、こんなお話。
「一瞬前まで普通に歩いていたのに、突然“猛ダッシュ”!思わず『危なーい!』と叫んでしまうことも…」
お散歩やお買い物の時、普通に歩いていたはずがなぜか突然“ダッシュ”してどこかに行ってしまいそうになる子どもたち。
「目の前に公園があった」「好きなお菓子を見つけた」など、納得できる理由があるときもあれば、「何もないのに急に走り出した!」とヒヤッとしてしまうこともある。しっかり目を配っていても、突然走り出されると制止が間に合わなくなりそうで、怖い思いをしているパパママも多いのでは。
「子ども用ハーネス」もたびたび話題になるけれど、子どもたちが“突然ダッシュ”しちゃうのってどうして?パパママはどんな風に注意すれば阻止できる?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
大人が認識していない“何か”に刺激されている
――子どもたちが“突然ダッシュ”するのはどうして?
視覚的になにかを見つけたときに突進するというのがパターンとしては多いように思います。その“なにか”と言うのは、大人から見ても納得できることもあれば、それほど魅力的に見えないことも。たとえば、可愛い子犬が向こうから来たのであれば、ダッシュして触ってみたいという気持ちはわかりますよね。
一方で、縁石のように一段高くなっているところなどは、なぜか子どもたちを引きつけますが、大人にとっては「なぜ?」となりがちです。横で見ていると突然走り出したような気がするかもしれませんが、大人が感知しないような“なにか”が子どもたちを刺激していることが多いのだと思います。
あとは衝動的に走ったり、ジャンプしたりと気の赴くままに行動することもありますし、大好きな公園など、行きたい場所が近づいてくると、まだ目に見えてはいなくても走り出す子もいます。基本的には「ここで走るのは危ないから今はやめておこう」というような理性的な判断は背後に行き、もっと直感的に動いている状態と言えるでしょう。
――急に走るのをやめさせたい!どんな工夫をすればいい?
日ごろから、急に走り出した際の危険(車や自転車など)についてはしっかり教えておくべきですし、それをしていないご家庭はないと思います。それにもかかわらず多くの方が悩むのは、その場になるとその教えはどこかに行ってしまっていることが多いからです。言うのは大切ですが、言ったからOKと言葉を信じすぎないことは大事ですね。
一番いいのは、手をつなぐことです。小さい子であれば、バギーに乗ると言うことも考えられるでしょう。突然走り出すというのは、2歳過ぎから見られますが、この時期は自立心が高まる時期ということもあり「1人で歩きたい」という思いから、手をつなぎたがらないことも多いものです。完全に安全な場所であればよくても、車が行き来する道では1人歩きは危険です。「痛い思いをして学ぶ」というのは車では通用しませんから、そこはメリハリをつけて、手をつないで危険を回避してほしいと思います。
――「〇〇ちゃん!」「止まって!」など、とっさに子どもを呼び止めるには、どういう言葉を使うのがいい?
とっさのときに子どもを呼び止めるには、大きな声で名前を呼んだり、すべき行動(「止まって!」など)を叫ぶのが基本的には効果的ですが、これも繰り返されると効果がなくなってきます。これまでママが大声を出して呼び戻すほどの“ヒヤッ”がなくて、ある日急に走り出したら向こうから車が来たという状況なら、日ごろ聞いたことがないママの大声にびっくりして振り返る可能性は高いですが、しょっちゅうママが声を張り上げている場合、もはや効果はなくなっています。いざというときに効果を発揮させるためにも、車道ではとにかく離れないで済む手立てを取ってほしいと思います。
日ごろの育児相談を見ても、子どものやりたい気持ちにノーを言うことに対し、抵抗を感じる方はとても多いと感じています。でも、何でもOKとするのがいい子育てではありません。「ときにはやりたい気持ちを抑えなくちゃいけないんだ」ということを教えてあげることこそいい子育てなので、命がかかわっている車道のような場所では、仮にぐずったとしても、確実に子どもを守れる方法を優先してほしいと思います。
――ちなみに「子ども用ハーネス」についてはどう思う?
子ども用のハーネスは賛否両論ありますね。子どもを確実に守る手立てとしては有用であっても、子ども自身の学びは少ないように思います。たとえば「ここでは走ってはいけない」とパパやママから言われていたとしても、その約束を守っているのではなく、物理的に走れないだけという状態です。「今走ったら危ないな」という判断力や、走りたい思いをコントロールする力が習得できているわけではないので、ハーネスをしたから対策はOKと過信せずに、パパ・ママとの約束はしっかり伝えていく必要があります。
子どもたちが思いがけない“突然ダッシュ”をしてしまうのは、子どもたちにしかわからない“何か”をとらえて、そこに向かっていきたい!という衝動からかも。
近くを犬が歩いていた、花壇にちょうちょが飛んでいた…など、わかりやすい視覚的な刺激ではないもの以外にも子どもたちは刺激されてしまうので、大人からすると「何もないところで突然走り出した!」と思ってしまうのだろう。
そのため、子どもたちの“突然ダッシュ”は予測が難しい!パパママはまず子どもたちとしっかり手をつなぐこと。
子ども用ハーネスを活用することもひとつの手段だが、普段から子どもたちに“突然ダッシュ”の危険性を伝えて、子どもたち自身が「走りたい!」という気持ちをコントロールしていけるよう見守ってほしい。
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※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)