ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃訪問が注目されたG7広島サミット。その様子を、県内に住むウクライナ人はどのように見つめたのか?また、ウクライナ政府関係者も広島を訪れ、復興に向けて動き出している。

国旗を掲げ、ウクライナ避難民ら集結

G7広島サミット開催中の5月20日午後、ゼレンスキー大統領を乗せたフランスの政府専用機が広島空港に着陸。機内から降り立ったその姿に、世界中が注目した。

この記事の画像(22枚)

ゼレンスキー大統領が対面参加を強く希望し、実現した広島訪問。ゼレンスキー大統領は最終日のセッションに対面で参加したほか、岸田首相やアメリカのバイデン大統領などとも会談を実施した。

祖国の大統領の広島入りを受けて、県内に住むウクライナ人や避難民などが広島市中区の「おりづるタワー」に集結。眼下に平和公園や原爆ドームを望むことができる屋上の展望台で、ウクライナの国歌を歌い、原爆資料館を訪れるゼレンスキー大統領を待った。

5月21日、「おりづるタワー」屋上の展望台で国歌を歌うウクライナ人
5月21日、「おりづるタワー」屋上の展望台で国歌を歌うウクライナ人

オリガさん:
広島に世界のリーダーたちが来て、ゼレンスキー大統領も広島まで来てくれて、世界中の心は近くなった。すごく大事なサミットになった

集まった人々は戦争の早期終結とウクライナの平和を強く願い、国旗を掲げて平和公園を見つめていた。

オリガさん:
ドキドキです。ゼレンスキー大統領とハグしたいですね

広島県在住のウクライナ人・オリガさん
広島県在住のウクライナ人・オリガさん

会見に涙…「大統領を誇りに思う」

ゼレンスキー大統領が原爆資料館を訪れていたそのころ。

広島市の原爆資料館を訪れたゼレンスキー大統領
広島市の原爆資料館を訪れたゼレンスキー大統領

ウクライナのオデーサから福山市に避難しているダリアさんは、母・ナタリアさんと自宅のテレビでその様子を見つめていた。

左から、母・ナタリアさん、ダリアさん、友人のオレナさん
左から、母・ナタリアさん、ダリアさん、友人のオレナさん

ゼレンスキー大統領が会見を開くと聞き、ダリアさん親子の友人で福山市で働くオレナさんも駆けつけた。オレナさんの胸にはウクライナ国旗のバッジが…。「ウクライナが心配。ウクライナを近くに感じていたい」と話す。オレナさんの妹のアナスタシアさんは一時、福山市に避難していたが、2022年11月に帰国。今も元気で過ごしているという。

21日午後7時半ごろ、ゼレンスキー大統領の会見が始まった。

5月21日、会見に臨むウクライナのゼレンスキー大統領
5月21日、会見に臨むウクライナのゼレンスキー大統領

ゼレンスキー大統領:
私が広島にいるのは、ウクライナから全世界に団結を呼びかけるためだ。私が原爆資料館で見た原爆投下後の広島の街の写真と、ロシアによって破壊されたウクライナの街は、とても似ている。見学できたことはとても光栄に思う。復興を遂げた広島の街のように、荒廃したウクライナのすべての街の再建を夢見ている

ゼレンスキー大統領の会見を聞いて、3人はどう感じたのだろうか?

福山市へ避難 ダリア・ベスぺチャリニフさん:
真っ先に感じたのは、ゼレンスキー大統領を誇りに思う。ウクライナの代表として来た人だから

ダリアさんの母・ナタリアさん:
ゼレンスキー大統領は国民を守りたいと言った。国民のことを考えているし、心配している。その言葉がとても気に入った。ゼレンスキー大統領は初めて原爆資料館を見て、自分の国がそうならないようにと思ったのではないか

福山市在住 オレナ・クラブチュクさん:
会見を聞いて、私は国に帰りたいと思い、つい涙が出た。ゼレンスキー大統領はよく頑張っている。本当にありがたい。私たちの心は1つです

被爆証言を聞く顔「本当に悲しそう」

ウクライナ国民に愛される大統領と直接面会したのが、被爆者の小倉桂子さん(85)だった。サミット閉幕後の22日、TSSの報道番組にゲスト出演し、原爆資料館で被爆証言を聞くゼレンスキー大統領の様子を次のように語っている。

ゼレンスキー大統領に被爆証言を行った小倉桂子さん(85)
ゼレンスキー大統領に被爆証言を行った小倉桂子さん(85)

小倉桂子さん:
原爆資料館の中にはパノラマがあります。その中に私の自宅もありまして、ここで被爆しましたとお伝えしました。光、轟音、そして爆風の広がり…そういうのを全部感じていただいて、「この七つの川が死体でいっぱいになり…」と私の体験を話したとき、ゼレンスキー大統領はとても厳しい顔をされていました。本当に、悲しそうにしていらっしゃるなというふうにお見受けして。今はきっとウクライナの経験とウクライナの人たちを思い起こしていらっしゃるんだなと思いました。私は自分が泣くのを我慢するのが大変でした。そして、ゼレンスキー大統領の訪問を実現させた政府筋の外務省の方も、泣くの我慢している様子で感動的でした

原爆資料館を見学後、平和公園の慰霊碑と向き合うゼレンスキー大統領の表情は重く、悲しみに満ちていた。

ウクライナ政府関係者が広島の復興学ぶ

戦火が続くウクライナ。出口の見えない中でも“戦後の復興”を見据えて動き出している。ゼレンスキー大統領の「広島のように、ウクライナの街が再建することを夢見ている」というメッセージ。それを具現化するように、ウクライナの政府関係者が戦後復興や災害復興を学ぶため広島市を訪れた。

5月24日、広島市の松井一実市長を訪ねたウクライナの政府関係者
5月24日、広島市の松井一実市長を訪ねたウクライナの政府関係者

ウクライナでインフラ行政を担い、戦後の都市計画の策定を目指す政府や自治体の関係者だ。一行は25日、広島市のごみ処理など環境政策を学び、ゼレンスキー大統領と同じように広島市中区の原爆資料館を視察。原爆投下前後の広島を視覚的に伝える「ホワイトパノラマ」を見て、豆谷利宏副館長の説明を聞きながら被爆の実相に触れた。

5月25日、原爆資料館でホワイトパノラマなどを見学
5月25日、原爆資料館でホワイトパノラマなどを見学

そのあと原爆死没者慰霊碑に花を手向けて祈りを捧げ、犠牲者を慰めた。

ウクライナ インフラ発展省・コルホヴィー 調整官
ウクライナ インフラ発展省・コルホヴィー 調整官

ウクライナ インフラ発展省・コルホヴィー 調整官:
国際社会は核兵器廃絶を行わなければならない。核の威嚇・使用は絶対許すべきものではありません

最後に訪れたのは、広島の戦後復興のシンボル、原爆ドームだった。

被爆当時の姿を留める原爆ドームを静かに見上げるウクライナ政府関係者。その表情は、今も戦火の中にある母国と、いつ来るともしれない復興への道のりに思いを馳せているようだった。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。