新人消防士が集う静岡県消防学校に、28歳でこの世界に飛び込んできた男性がいた。九州大学大学院を卒業し大手金属メーカーに勤務していた、いわゆる“理系男子”だ。異色の経歴を持つこの男性の胸には「誰かの助けになる仕事がしたい」という熱い思いがあった。

新人消防士117人 希望と使命感を胸に

防火服を着てランニング
防火服を着てランニング
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防火服を身につけ、隊列を組んでランニングをする消防士たち。2023年4月、静岡県消防学校に入校した新人消防士だ。

いま厳しい訓練の真っ最中にいる。

静岡県消防学校(静岡市清水区)
静岡県消防学校(静岡市清水区)

静岡市清水区にある静岡県消防学校。入校式で代表の新人消防士が「全力を挙げて勉学に努めることを宣誓します」と決意を述べた。

入校式(2023年4月)
入校式(2023年4月)

2023年4月は、県内の市町の消防本部に採用された18歳から28歳までの消防士男女あわせて117人が入校した。

異色の経歴“脱サラ理系男子”

志田消防本部・荒金遼河さん(28)
志田消防本部・荒金遼河さん(28)

荒金遼河(あらかね りょうが)さん、28歳。 藤枝市と焼津市を管轄する志太消防本部に採用された。

“理系男子”だった荒金さん
“理系男子”だった荒金さん

荒金さんは九州出身、大分の工業高等専門学校から九州大学大学院に進み、金属などの素材研究に打ち込んできた“理系男子”で、卒業後は大手金属メーカーに4年間勤めていた。

異色の経歴はもちろん、2023年の入校生で最年長だ。

着装訓練
着装訓練

消防学校では9月末までの半年間、寮生活をしながら、消防士としての技術と体力を身に着ける。

入校間もないこの時期は、基本を叩き込む訓練が繰り返し行われてる。迅速に火災現場に向かうために防火服を早く着替えられるようにするのもその1つだ。

「誰かの助けに」憧れた消防士の世界へ

発破をかける教官
発破をかける教官

教官:
ここを訓練場所と思うな、災害現場だ、災害現場。要救助者が待っているんだぞ。1秒でも早く現場に着くために、防火衣を早く着ないと現場に行けない、そういった意識で防火衣を着る!

防火服を着る荒金さん
防火服を着る荒金さん

人の命を預かる仕事である消防士。教官はたびたび発破をかけていく。新井さんも、必死にくらいつく。消防士は幼いころからの夢だ。

荒金さん「憧れが常にあった」
荒金さん「憧れが常にあった」

志太消防本部・荒金 遼河 さん:
どこか心の中に消防士になりたいという小さい頃からの夢、憧れが常にありました

消防学校では座学も
消防学校では座学も

大人になってもあきらめきれない消防士への夢。各地で災害が発生するたびに、人の助けになりたいという思いが強くなり、消防士の世界に飛び込んだ。

荒金さん「南海トラフ地震が起きたら何ができるのかと」
荒金さん「南海トラフ地震が起きたら何ができるのかと」

志太消防本部・荒金 遼河 さん:
南海トラフ地震が起きるのではないか、実際に起きた時に自分はいま何ができるのだろうかと考えるようになり、その時に誰かの助けになれるようなことをしたい、そういうことから消防士になろうと決めました

目標に必要だから「苦労」ではない

防火服を着ての訓練
防火服を着ての訓練

この日は防火服を着て臨む初めての体力トレーニング。防火服の重さは、ヘルメットや長ぐつなども含め約8kg。通気性が悪く熱がこもり、体力も奪われていく。

消防士を目指すことを決めてから4年間、筋トレやランニングをしてきた成果が出ていた。荒金さんは「体が動かしにいうえに、すごく暑かった」と率直な感想を述べたうえで、「体力的にはまだ大丈夫」と笑顔を見せていた。

寮でも勉強やトレーニング
寮でも勉強やトレーニング

厳しい訓練も夕方5時に終了し、夜は寮に戻る。入校して1カ月、荒金さんはここでの生活に「リラックスしていないが、後悔や苦労はない」と語る。

荒金さん「リラックスはしないが苦労ではない」
荒金さん「リラックスはしないが苦労ではない」

志太消防本部・荒金 遼河 さん:
今は自分の本当にやりたいことの中で苦労しているので、自分が目標とする姿に向かうために必要なことであると、そういう思いから苦労は苦労ではないと考えられています

火災の未然防止ができる消防士に

火災の未然防止をめざす荒金さん
火災の未然防止をめざす荒金さん

荒金さんの目標は、火災を未然に防ぐことのできる消防士だ。

志太消防本部・荒金 遼河 さん:
火災の原因調査という仕事がありますが、なぜその火災が起きたのかを明確にして、その原因が分かれば対策が立てられると思う。事前にできることをやっておいて、大きな災害を防ぎたいという思いがあります

訓練中の荒金さん
訓練中の荒金さん

強い思いをもって取り組む荒金さん。県消防学校の吉瀬大介教官も、「年長者らしく、落ち着いた態度と思慮深いという印象があります」とひたむきさを評価していた。

荒金さん「まずは目の前のことに注力」
荒金さん「まずは目の前のことに注力」

志太消防本部・荒金 遼河 さん:
まずは目の前にある覚えなくてはいけないこと、基礎的な知識というところはまじめに向き合って、自分の力にしていきたい。目の前のことに注力するところからやっていこうと思います

目標に向かい
目標に向かい

市民の命を守り、人の助けとなる消防士。荒金さんの消防士への夢はまだ始まったばかりだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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