まるで“別れ際”…連立20年以上の自公に亀裂

「(自民党の)茂木幹事長から『持ち帰って検討させてほしい』という話があったが、私からは『持ち帰って新たな案が出されたとしても、公明党との方針は変わりません』と再三申し上げた。それでもお話をしたいということですので、そこまでお断りすることもないかなと思って来週火曜日にお会いする」

公明党・石井幹事長(26日)
公明党・石井幹事長(26日)
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公明党の石井幹事長が26日の会見で語ったのは、まるでカップルの別れ際のような言葉だった。

別れたいと告げ、もうヨリを戻す気がない相手から「最後に一度だけ会いたい」と言われ仕方ないから会う…20年以上、連立政権を組んできた自民党に対し、そんな言いぶりだ。

石井氏が言うように、30日には茂木氏との幹事長会談がセットされているが、自民党がどう「返答」するかに注目が集まっている。

公明党の「東京では自民党の候補者に推薦を出さない」という強硬姿勢を受け、自民党内からは「だったら他の県で公明党の支援をやめて報復すべきだ」といった声があがっており、“全面戦争”の空気も漂っている。

自公の幹事長会談が30日に予定されているが…
自公の幹事長会談が30日に予定されているが…

しかし、仮に自民党が“報復”に出た場合、「連立解消」の引き金になりかねない。

公明党も「東京に限った問題」であることを繰り返し強調し、与党にとどまるために「連立に影響させたくない」のが本音だ。

公明との交渉を自民党幹部に任せている形の岸田首相も25日、「強固な自民・公明両党の連立の基盤に立って、先送りできない重要な課題にひとつひとつ対応していきたい」と述べている。

自民党は、連立解消という最悪の事態を回避するため、公明党が候補者を立てるとしている埼玉、愛知などの選挙区で公明党を支援する方向で最終調整している。

ある自民党幹部は「子どものケンカじゃないんだから、東京以外に問題を波及させてコトを大きくしても良いことはない」と話す。

「東京だけで収まるのか…」自民に激震

連立解消回避に向けた動きの背景にあるのが、全国の自民党議員が頼る公明票だ。

2021年の衆院選では、自民党が小選挙区に擁立した候補者の9割以上が公明党の推薦を得て選挙に臨んでいる。

自公の”亀裂”、各地に波及は…。
自公の”亀裂”、各地に波及は…。

そのため、自民党幹部は「東京以外の議員からしきりに『自分の県にも波及するのか?』といった質問を受けている」と漏らす。

仮に連立を解消し「都市部では1選挙区あたり2万票」とされる公明票を失えば、落選の危機に陥る議員が多数存在する。

地方でも「1万票はある」とされる公明票を頼る議員は多い。

ベテラン議員からは「いつまでも公明に頼らず自分で勝ち抜くべきだ」との声もあがるが、「そんな簡単な話じゃない」(若手議員)との意見が大勢を占める。

連立解消なら「党内政局」に

こうした中、党内では「岸田首相や執行部は何を考えているのか。公明票の重みをわかっていない」との不満がくすぶり始めている。

岸田首相の選挙区は広島、茂木幹事長の選挙区は栃木で、ともに衆院選で圧勝している。

自公の協議の行方は、岸田首相の解散戦略に影響も・・・。
自公の協議の行方は、岸田首相の解散戦略に影響も・・・。

この2人を念頭に、「地方出身の選挙が強い人には公明票の重さがわからない」といった批判まで都市部の議員から出ている。

全国で公明党の支持が得られないとなれば、「落選の危機がある議員らが束になり、岸田降ろしが起きるかもしれない」(自民党中堅議員)と党内政局に発展するとの見方もある。

そのため自民党執行部は公明党との“亀裂”を最小限に抑えたい考えだが、「感情的にしこりが残る」(自民党ベテラン議員)可能性は否めない。

一時のすれ違いを乗り越え“円満カップル”に戻ることができるのか、それとも、長年の関係が“破局”を迎えてしまうのか――

自公の協議の行方は、岸田首相の解散戦略、そして日本の政界の構図にも影響する。

政治部
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日本の将来を占う政治の動向。内政問題、外交問題などを幅広く、かつ分かりやすく伝えることをモットーとしております。
総理大臣、官房長官の動向をフォローする官邸クラブ。平河クラブは自民党、公明党を、野党クラブは、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会など野党勢を取材。内閣府担当は、少子化問題から、宇宙、化学問題まで、多岐に渡る分野を、細かくフォローする。外務省クラブは、日々刻々と変化する、外交問題を取材、人事院も取材対象となっている。政界から財界、官界まで、政治部の取材分野は広いと言えます。