「今すぐ解散だ!」
広島サミットが成功して内閣支持率が10ポイントも上がったので、自民党内には「今すぐ解散だ!」と騒いでいる人たちが多い。
サミットで最も印象的だった「映像」は、原爆資料館を見た後、沈痛な表情で出てきたG7首脳やウクライナのゼレンスキー大統領らが慰霊碑に献花するシーンだった。
この記事の画像(6枚)また被爆者の小倉桂子さんが資料館でのゼレンスキー氏の様子について「必死で泣くのをこらえているように見えた」と語った「言葉」も印象に残った。
この「映像」と「言葉」が広島サミットのすべてだと思う。ロシアのプーチン大統領がウクライナへの核攻撃を示唆し、中国や北朝鮮などが核の増強をやめない中で、核保有国だけでなく世界中に向けて強烈なメッセージを出せたのではないか。
サミットの成功はホストである岸田首相の功績であり、支持率アップは当然のこと。だから勢いに乗って国会会期末に解散し、7/23投開票というのも大いにありうる話だろう。当たり前だが選挙は勝てる時にやった方がいい。
公明党とはもうお別れか
ただサミット明けに気になるニュースがいくつか出た。1つは24年間連立を組んできた公明党との亀裂が決定的になったことだ。
東京だけ選挙協力をやめるので連立は続くということだが、実は岸田政権になってから両党の仲はかなり険悪になっており、このままでは連立解消も視野に入る。ただ自民は参院で過半数を持っていないので、国民民主党の連立入りなど政界再編になる可能性もある。
もう1つは首相の息子、岸田翔太郎秘書官のスキャンダルだ。年末に首相公邸で親族と忘年会を開き、賓客を招く公的な場所で写真撮影に興じたことを週刊文春が報道した。
翔太郎氏はパパに「厳しく注意された」(松野官房長官会見)が、パパが一所懸命頑張って広島サミットをやっと成功させたのに、息子がこういうことをしてぶち壊してはいけない。
さらにサミット最終日の21日に行われた足立区議会選挙では、17人で最大会派の自民党の現職が5人落選して12人となり、第2会派になってしまった。LGBT法案で保守派が離れたという分析もある。
一つずつマジメにやるのが岸田流
解散総選挙を今やって自民は大勝ちできるのか。24日付の夕刊フジに載った選挙プランナー、松田馨氏の議席予測によると自民党は「4議席減」だった。政権を奪われることはないが、ある程度の議席は減るかもしれない、という選挙に無理して突っ込むかどうか微妙な数字だ。
そもそも解散を急ぐ必要はあるのか。コロナ収束、防衛力強化、サミット成功など、良い材料がそろっているから、自民党内で岸田おろしの声は上がらない。来秋の自民党総裁選は楽に勝てるのではないか。選挙も日本維新の会は怖いものの、政権交代の心配はない。公明も最終的には妥協せざるを得ないと思う。だからあまり慌てて事を進める必要はない。
それより防衛費の財源や少子化対策、生成AIの規制、また外交では中国との向き合いをどうするか、やるべき事は山積している。懸案を一つずつマジメに解決していくのが岸田流だ。解散をしている場合ではないと思う。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】