重い病気と闘う子どもとその家族を支える「ファミリーハウス」。子どもの病気の治療で、不安でいっぱいの親を陰ながら支えたいと、経済的に、心理的に親をサポートする場所を取材した。
病院まで30秒…心の支えに
福岡市東区アイランドシティの福岡市立こども病院。その隣にあるのは、子どもが入院したときに、その家族が近くで安心して泊まれる施設だ。

この施設は、重い病気の子どもを抱え、知らない土地で長期間看病する親の負担を軽くしようと日本マクドナルドが支援する財団が建てた「ふくおかハウス」。1泊1,000円で提供している。

「ふくおかハウス」で過ごす荒井さんご夫婦も、長男で生後3カ月の心仁ちゃんの治療のために熊本からやってきた。

心仁ちゃんの病気は、左心低形成症候群。左側の心臓が十分に発達せず、全身に血液を送り出せなくなる難病だ。

生まれたその日から集中治療室に入り、これまでに受けた手術はすでに4回。父親の伽仁さんと母親の華子さんが、手術のたびにハウスで過ごし心仁ちゃんの看病にあたっている。

心仁ちゃんの父親・伽仁さん:
今回した手術が一番大きかったんですけど、難易度も高いと言われていて、致死率も何%とかあると言われて。「自分の子どもは大丈夫だ」と思わないと精神的に持たないので「大丈夫、大丈夫」って、言い聞かせるしかない

いつ緊急の呼び出しがあるか分からない、不安な日々を過ごす中、経済的な負担も軽いハウスの存在は心の支えとなっている。

心仁ちゃんの父親・伽仁さん:
走れば30秒とかで病院に行ける距離なので、すごく親としては助かっていますし、子どもの側にいてやれるのは安心感もあります
心仁ちゃんを看病している荒井さん夫婦は、施設の充実さに感謝しながらも不安に襲われる日もあると話す。

心仁ちゃんの母親・華子さん:
手術前に子どもが搬入されるっていうときに、自分がちょっと不安になってて、でも子どもが「いまから頑張ってくるけんね」って、自分に言いよるっていうのがすごく伝わってきたので…。「私たちが頑張らないと」っていうのは、一番ありましたかね
引きこもりがちにならないように…
重い病気と闘う子どもに寄り添う家族を支えるこのハウス。施設長の舛元啓二さんに案内してもらった。

橋本真衣アナウンサー:
ドナルドがいますね。こどもが喜びそうですね
舛元啓二施設長:
でも、怖がる子もいます。泣く子もいます
ハウスの1階は広々としていて、中庭からは日差しが入り、心がホッと安らぐ工夫がされている。2階にあがると広い食堂があってキッチンは5つ、宿泊している家族が、それぞれ調理ができる。

舛元啓二施設長:
何でも揃ってます。鍋から何から
橋本真衣アナウンサー:
材料さえあれば何でも作れますね
舛元啓二施設長:
自由に食べたいものが作れて、そして栄養を考えたものが作れて、搾乳しているお母さんもいらっしゃいますので、健康面という部分でもここがあることによってお母さん方がそういう生活をできる

キッチンにある冷蔵庫には、いつでも温めて自由に食べられる「冷凍ご飯」が。
舛元啓二施設長:
手術の時間が12~13時間とかかってしまう、朝8時に出て行かれて、帰って来られるのが夜8時とか。下手したら、日付を越えて帰って来られるなかで、ちょっとでも何か食べたいとか

子どもの看病でないがしろになりがちな食事にも気を配ってくれている。そしてベッドルームは全部で21部屋、全て個室だ。ただ、この部屋にはホテルとは違って、テレビがない。
舛元啓二施設長:
お母さんたちが部屋にこもりっきりにならないように。共有スペースにちょっと出てきたり、食事をしたり、準備をしたりというときにほかのお母さんと会話ができる。子どもが同じ病気のお母さんがいっぱいいらっしゃるので。周りのお母さんたちもそうやって応援してくれる部分もあって―。そういう部分ではホテルと違う大きな違いがあるかな

各部屋に置かれているノート。長い看病生活の中での辛い気持ちや喜びなどお母さんやお父さんの思いがつづられている。

舛元啓二施設長:
ハウスとして一番大きい役割は精神的支援と言われていて、お母さんの気持ちが落ち着いたり、安心したりすることによって、入院している子どもにも伝わると言われていて、病気の治癒率にも繋がると言われています
ハウスを支えるボランティアたち
知らない土地で常に不安と闘う家族。そんな家族にとってもうひとつの心の支えがボランティアの存在だ。清掃作業から、お母さん、お父さんの話し相手まで、家族にそっと寄り添い、長い看病生活を支えている。
橋本真衣アナウンサー:
ベッドメイキング中ですが、実はボランティアが行っています。この施設の運営のほとんどはボランティアを中心に行われています
ーー鉄原さんはいつから?

ボランティアスタッフ・鉄原めぐみさん:
福岡に引っ越してきて5年目になるんですけど、福岡に引っ越してきたタイミングで、このマクドナルドハウスでボランティアを始めました
鉄原さんご自身も4人のお子さんを持つ母親だ。子どもが成長し、少し手が離れたことをきっかけに難病を持つ子どもの家族に寄り添いたいと温かい支援を届けている。
ボランティアスタッフ・鉄原めぐみさん:
いろんな方との出会いがあって、利用者さんもですけど、ボランティアさんとの出会い、私自身の刺激にもなっています

いまやボランティアの存在は「ふくおかハウス」にとって欠かせないものになっているが、ボランティア不足に陥っているのが実情だと舛元施設長は話す。
舛元啓二施設長:
2022年までの登録では110人。少ないんですよ。コロナ前は200人近い登録者がいらっしゃったので、コロナによってやはり大きく減りました

感染症をハウスに持ち込むと患者の家族はもちろん、難病と闘う子どもの命にも関わることから、泣く泣くボランティアを辞退する人が増えたという。
ハウスを知ってもらい協力を
「ふくおかハウス」の運営は全て企業や個人からの寄付とボランティアで成り立っている。今後も難病の子どもやその家族を支えていくためには、ハウスの認知度を上げて、さらなる協力を得る必要があるという。

舛元啓二施設長:
ハウスの役割をちゃんとご存じの企業とかは、うまく話ができるんですけど、全然、知らない企業は、なかなか応えていただけない部分も大きいんですね。そのことからも認知が上がる、知っていただく方が増えることがどれだけ重要かって言うことがあります
ボランティアの登録には、毎月第2金曜日と土曜日の午後3時から「ふくおかハウス」で開かれている説明会への参加が必要となる。高校生以上は1人から、中学生以下は保護者と一緒であれば誰でも参加可能だ。
(テレビ西日本)