国内でも有名なアユ釣りスポット「興津川」。静岡市清水を流れる川だ。5月20日に解禁となったが、釣果は少ないという。原因は8カ月前の台風とみられ、今後の影響が心配されている。
アユ釣り解禁も…肩を落とす釣り人

静岡市清水区を流れる「興津川」。国内でも有名なアユ釣りスポットで、5月20日に2023年のアユ釣りが解禁となった。
しかし取材をした5月22日、釣りに来ていた人たちは「魚が見えない」「こんなに悪い事はいままでない」などと肩を落としていた。

例年であれば1日に100匹釣りあげる人もいるというが、2023年は多い人でも1日20匹程度に。事前調査では平均体長が過去5年間で2番目に小さく、平均体重は最も軽いという結果が出ていた。
護岸崩落 復旧工事で濁る川

原因とみられるのが2022年9月に静岡県内を襲った台風9号の影響だ。静岡県のまとめによると、興津川の本流では計12カ所で護岸の崩落などの被害が発生したという。

いま興津川では復旧工事が進められている。土のうの設置など応急対策はすでに行われているが、復旧工事が完了したところはなく、全ての工事が終わるのは2024年5月頃だという。

透明度が高いはずの興津川は、川の底を見通すことができなくなっていた。崩れた土砂が大量に流れ込んだうえ、工事の影響もあり川の水は濁ったままだ。
天然アユが育つ「きれいな水に」

興津川非出資漁業協同組合・前澤 元次 組合長:
アユは石に生えるコケを食べますが、濁っている水には小さい石が混じっていて、コケを削り取ってしまうんです。エサになるコケが少なくて、アユの成長に影響が出てしまう。また、産卵する場所が泥で埋まると産卵できない。こういったことも大きな影響になっている

アユは、サケのように生まれた川に戻る習性はない。濁りが続けば、興津川から天然のアユがいなくなってしまうおそれもある。
興津川非出資漁業協同組合・前澤 元次 組合長:
川が汚れていると遡上してくるアユも嫌がるというか、きれいな河川の方へ行きますので、早くきれいな水が戻ってきてほしい

組合は今後 天候に恵まれ濁りがなくなることを期待しているが、元通りの興津川に戻るには数年はかかるという。
釣り人の“楽しみが減る”だけではない

アユの減少の影響は、釣り人の楽しみが減るだけではない。
興津川では1日1500円、年間では7000円の「遊漁料」を漁協に支払うことでアユ釣りを楽しめる。遊漁料は稚魚の放流など「アユを守る活動」に役立てられるが、遊漁料が減ればこうした保護活動にも影響が出る。

また興津川では、おとりのアユに針をつけて別のアユを釣る「友釣り」のみ許されている。しかし、釣り人が減少すればおとりアユの販売で生計を立てている周辺の店舗にも影響がでる。
組合は例年よりも大きいサイズの稚魚を放流しているが、厳しい状況はしばらく続きそうだ。
(テレビ静岡)