石川県金沢市の初夏の風物詩「金沢百万石まつり」。メインイベントは前田利家が金沢城に入る様子を再現した、百万石行列だ。例年、俳優が前田利家と、その妻、お松を演じ、大勢の観光客が訪れる。その百万石行列の前日に、地元の子供たちが提灯を手に市内を練り歩く提灯行列。これについて調べてほしいという依頼が来た。
百万石行列の前日に子供たちが行う「提灯行列」とは?

依頼したのは小学5年生の浦蓮冬(うら れんとう)くん。今回の蓮冬くんの質問は、蓮冬くんが身につけている法被や提灯に関するものだと言う。

浦蓮冬くん:
どうして提灯行列は、大人じゃなくて子供がやるんですか?
記者:
どうして気になったんですか?
浦蓮冬くん:
今年から自分が提灯行列に参加するからです。

提灯行列とは、百万石行列の前日に金沢市内の小学5、6年生、約1万人が、金沢市の「しいのき迎賓館」に集まり提灯を持って自分たちの町に戻る恒例行事だ。

蓮冬くんが知りたいのは、その提灯行列をどうして子供が行っているかというもの。

蓮冬くんのお父さんも昔、提灯行列に参加したそうだが?
父親の和範さん:
なんでですかね…?

わからないようだ。
4年ぶりに通常開催となる2023年の「金沢百万石まつり」。これに合わせて子供たちの提灯行列も4年ぶりに通常開催となる。

ちなみに、百万石行列は金沢市と金沢商工会議所が中心となって開かれているが、提灯行列は金沢市の子供会が運営していると言う。

そこで蓮冬くんの疑問を子供会に聞いてみると…
金沢市子ども会連合会 荒牧秀樹事務局長:
記録を見てみると昭和27年に太鼓行列が参加したというものがありまして。それが私たちが知っている始まりかなと思います

なんと!最初は提灯行列じゃなかったというのだ。

はじめは“太鼓行列”のちに“提灯行列”に
荒牧秀樹事務局長:
提灯ではなくて、子ども会が持っている太鼓を曳いて鳴らしながらお祭りに参加したということで、そのあたりが(現在と)違うと思います。
実は提灯行列の正式名称は「子ども提灯太鼓行列」現在も太鼓を叩きながら参加する子供会もあるそうだ。

そして蓮冬くんの質問については?
記者:
なんで子どもだったんですか?
荒牧秀樹事務局長:
なんでですかね…そのあたりについては、私もわからなくて子ども会の顧問が詳しいので、そちらに聞いてもらえればありがたいです。

と、いうことで取材班が向かったのは、香村幸作(こうむら こうさく)さん81歳の自宅。

石川県立図書館の館長や石川近代文学館の理事長を務め金沢の歴史について詳しい方だ。

記者:
なんで提灯行列は子どもなんですか?
香村幸作さん:
今は百万石まつりですけど、昔の尾山まつりと呼ばれた時代から尾山神社の周辺の子ども会の人たちが太鼓を引っ張って、尾山神社の前でお祓いを受けたというのが大きいんですよ。

百万石まつりの前身“尾山まつり”で子供たちが太鼓を引っ張っていた
香村さんによると、百万石まつりの前身は尾山神社が中心となって戦後の1946年から1951年まで開いていた「尾山まつり」

そのまつりで尾山神社がある、松ヶ枝(まつがえ)地区の子どもたちが太鼓を引っ張って練り歩いたのが始まりなんだとか。

香村幸作さん:
(祭りは)市民総参加と言われているもので、大人が参加するのは踊りとか色々あるけど子どもがするそう言う風に(祭りを)企画してきたんですよね。

子供も楽しめるお祭りに…そんな思いで太鼓行列は生まれた。そんな太鼓行列が提灯行列に変わったのは1964年の第13回百万石まつりから。

香村幸作さん:
太鼓よりも提灯の方が光があって明るいから良いということで、「提灯を持たせてもいいんじゃないの」っていう意見があって提灯行列になった。子供たちにとっては、やっぱり提灯の方が1人1人持てますので太鼓を曳くだけよりいいという感じですね。

この時、提灯の光がより映えるように行列の時間も日中から夕方に移ったそうだ。

香村幸作さん:
大きくなったときに、「そういえば百万石まつりに参加したよね」という思い出が1番大事なんじゃないかって思うんですよね。大人になっても、金沢から出て行っても金沢を想う気持ちっていうのにつながって行くんじゃないかなと思います。

と、言うわけで蓮冬くんの質問の答えは…「百万石まつりの前身、尾山まつりの時に子供たちも楽しめる祭にしようと太鼓行列が始まった。それが途中で提灯行列に変わった」と言うことだった。

ちなみに香村さんによると、はじめは松ヶ枝地区だけだった子供たちの参加は、徐々に広がっていったそうだ。そのため、スタート地点から遠い地域の子供会も参加するようになり小学校5年生以上が参加することになったと言う。

2023年の金沢百万石まつりは6月2日に開幕し、3日に百万石行列が行われ、利家公役には市川右團次さん、お松の方は紺野まひるさんが務める事になっている。

(石川テレビ)