犯罪と向き合い、市民生活を守る警察官。警察学校の教室「教場」では、新人警察官が一人前を目指し、日々、鍛錬を積んでいる。若者たちの道しるべとなっているのが先輩でもある教官だ。何を求め、託そうとしているのか、「教場」の一日に密着した。
新人警察官を鍛え励ます教官
寮生活をしながら心身を鍛え、知識を身につける新人警察官たち。ここを卒業しないと現場には配属されない。

県警察学校・志村圭一術科係教官:
目線がきょろきょろしていると、それだけでおどおどしている警察官に見える。信頼されないんだよ、もう少しビシッと信頼されるような敬礼をする
犯罪と向き合い、市民生活を守る警察官。礼儀の他、団体行動に不可欠な規律や協調性を学ぶ必要がある。
それを如実に表しているのが「点検・礼式・教練」の授業だ。

県警察学校・志村圭一術科係教官:
手錠!曲げすぎ、少し手を伸ばす
装備品の点検、基本的な動作を細かく確認する。
県警察学校・志村圭一術科係教官:
警笛ひとつとっても自信がないやつは、音色が全然だめだよ、伝わってこないよ。警笛をふくだけでも自信を持って堂々とやる
学生たち:
はい!

指導するのは教官歴2年目の志村圭一教官。
県警察学校・志村圭一術科係教官:
敬礼ひとつとっても、その姿が警察官の象徴として一般市民に見られるところでありますので、卒業すると訓練する機会が減りますが、警察官としては必要な訓練になりますので、卒業してからでも必要になってくる

「術科」のエキスパートが指導
警察学校の教官は「警部補以上」の警察官の中から選ばれる。つまり経験を積んだ警察官ということ。
志村教官は長く機動隊に所属。警備や災害出動にあたってきた。そして、武道や逮捕術など「術科」のエキスパートだ。

県警察学校・志村圭一術科係教官:
腰を入れて、ただ打つな
犯人を制圧する「逮捕術」の授業では実践的な指導も。

県警察学校・志村圭一術科係教官:
狭いよね、ぶつかる可能性も多分ある、ただ一線に出て現場は選べない。必ずしも広いわけじゃないし、足元がいいわけでもない。与えられた環境の中で職務執行しなくてはいけない。ぶつからないように後ろの気配を感じながら、なおかつ犯人に対して技を出してく。目の前の犯人だけではなく、周りの状況も視野に入れながらやる
「強さ、優しさ」兼ね備えた警察官に
続いては「剣道」の授業。
志村教官、実は剣道の達人で「教士(きょうし)七段」の有段者。全国警察剣道大会に出場し、県警初の入賞を果たしている。今は大会に出る剣道特別訓練員の監督でもある。
県警察学校・志村圭一術科係教官:
振りかぶりと振りおろし、同じ速度じゃだめ。振りかぶった倍速くらいで振りおろす

強く、優しく。警察官に必要なものは武道から学び取ることができる。
県警察学校 学生・河﨑まみか巡査:
武道は基礎が大切になるので、地道にコツコツとやっていくことが大切だなと思いました
県警察学校 学生・内岩仁宣巡査:
初めてなのでいろいろ大変なんですけど、丁寧に教えてくださるのでありがたいです

県警察学校・志村圭一術科係教官:
特に私が担当している授業というのは、体を使ったり、きつい訓練が多いんですけど、なるべくやることが分かりやすく本人たちに伝わるように説明をして、人の痛みが分かる優しい警察官、強さと優しさを両方兼ねた警察官になってもらいたいと思って指導しています

「警察官は誰のために」
「警察改革」の授業―。
警察が告訴を受理しなかったために起きた「ストーカー殺人事件」など1999年ごろに相次いだ警察不祥事と信頼回復の取り組みを学ぶ。

県警察学校・伊藤しのぶ校長補佐:
警察が生まれ変わったんだよ。そういう姿を見せるには、あなたたちみんなが、現場で県民の皆さんのために働く姿を見てもらうしかないと思います
指導するのは、伊藤しのぶ校長補佐。学校勤務は5年目だ。
県警察学校・伊藤しのぶ校長補佐:
強い心、体、そして多くの知識を身につけられるような学生を育てることを心掛けています
伊藤校長補佐は、以前、警察署の「生活安全課」に所属。子どもや女性が巻き込まれる犯罪の発生対応や防犯活動にあたってきた。

ストーカー事件や不審者事案では、被害者のその後の生活に支障がないよう支援してきた。
警察はどうあるべきか、警察官は誰のために働くのか。これから現場に出る若者たちに伝えている。

県警察学校・伊藤しのぶ校長補佐:
組織を変えていくのは偉い人たちではありません。県民の一番近くで働く皆さんです。県民の皆さんは、あなたたちが安全、安心のために働いてくれることを期待して、信じて、待ってくれています。卒業のその日まで、精いっぱい努力を怠らず成長を遂げてください
教官は若い警察官の「道しるべ」
授業を受けて―。
県警察学校 学生・野澤将吾巡査:
警察職員としての誇りや使命感などは、他の警察官に比べてまだ薄いと思うのですが、自分自身でこの組織を変えていきたいなという決意が湧きました

県警察学校・伊藤しのぶ校長補佐:
悪と戦える強さ、それと困っている県民の方、犯罪被害にあった方、そういう方のために警察として何ができるかを考え、それを実行できるやさしさ、その2つを持った警察官になってもらいたいと思っています

厳しい教場での日々は、やがて警察官の自信や支えに―。
そして先輩でもある教官は、若い警察官の道しるべになっている。

県警察学校・原安志学校長:
脈々と先輩方が築きあげてきた歴史がありますので、恥ずかしくない良い学生を育てられればなと。いろいろ厳しいこともやりますので「なぜこれをやるか」をしっかり理解してもらった上で、地域の皆さんに親しまれ、しっかり地域の人を守ってもらえる警察官になってもらいたいと思っています
(長野放送)