長野市松代町の長野県警察学校。警察学校では、教室のことを「教場」と呼び、新人警察官が一人前を目指し、知識を身につけ心身を鍛えている。仲間と支え合い、成長する日々。「教場」の一日に密着した。
朝食前に体操、ランニング
長野市松代町にある県警察学校。寮から一斉に学生たちが駆け出してきた。まだ、朝の6時だ。
人員や健康状態を確認する朝の点呼。
集まったのは初任科生と、配属後に改めて学ぶ初任補修科生、合わせて150人余り。
点呼が終わると、体操とランニング。ここまでが朝食前の日課だ。
「教場」の一日に密着した。

規律や協調性を重んじる
2022年10月に採用された初任科生11人。
この日の1時限目は、「点検・礼式・教練」。
警察手帳や手錠などの装備品の点検と、基本動作の確認。

犯罪と向き合い犯人と対峙(たいじ)する警察官。自身や仲間を危険にさらさないよう、規律や協調性を重んじる姿勢を教え込まれる。
県警察学校・志村圭一教官:
警笛ひとつとっても自信がないやつは、音色が全然だめだよ、伝わってこないよ。声じゃなくて警笛を使って職務執行するんだから、警笛を吹くだけでも自信を持って堂々とやる、いいな
学生たち:
はい!

警察官の採用は春と秋の年2回で初任科の期間は6カ月から10カ月。
学ぶ分野は「法学」「警察実務」「術科」の3つだ。
初任科生11人は7月末から、いよいよ交番などの現場へ。教官の指導も自然と熱が入る。
志村圭一教官:
お前たちが精いっぱいやることで、それが教職員にも伝わるし、現場に出た時にはその気持ちが一般の市民にも伝わるはずなので、相手に伝わる気持ちのいい敬礼を心掛けてください
初任科(10月採用)・赤羽美雪巡査(20):
警棒や手錠の取り出しは、犯人と対峙した時にすぐに取り出せないといけないので、そういった点で練度を深めたいと思っています

初任科(10月採用)・野澤将吾巡査(20):
(行進で)歩調を合わせることに重点をおいてやってたのですが、そればかりに気を取られてしまい、他のことに目を向けることができなかったなと思っています。もう少し、しっかり訓練をしていきます

「車上狙い」の被害を想定
2時限目-。
「出動服」に着替えた初任科生。続いては「鑑識」の授業。
「車上狙い」の被害を想定、指紋を採取する。

初任科(10月採用)・赤羽美雪巡査(20):
難しいですね。どこについているのかを考えながら作業しているので、自分で証拠を消さないようにとかそういうことを考えながら作業しています
唯一“笑顔”が見られた場所

午前11時50分―。
食堂に続々と集まる学生たち。昼食の時間だ。
この日はカレーライス。当番がよそってくれるが、それでは足りず自分で「大盛り」に―。

大盛りで食べる学生:
おいしいです。食べないと動けないので食べてます
食堂はこの日唯一、笑顔が見られた場所。苦楽を共にする同期たちの連帯感も垣間見えた。
厳しい訓練が自信に

3時限目、防具を着けて行う「逮捕術」の授業。(初任補修科生)
現場へ配属されてから3カ月後、再び警察学校でより実践的なことを学ぶ。
志村圭一教官:
ぶつからないように後ろの気配を感じながら、なおかつ犯人に対して技を出していく。目の前の犯人だけではなく周りの状況も視野に入れながらやる
最小限の力で犯人を制圧する逮捕術。殴ることができるのは顎と胴のみ。
模擬警棒で制圧する訓練も。

対戦した茅野警察署・西山ここみ巡査(19):
危険な現場とか行ったときに、こういう訓練をやっておけば自信を持って対応できるので、すごく役立ちます。警察学校で身につけた訓練を生かして、どんな人にも強気で仕事できるように頑張りたい
厳しい訓練が自信となって、警察官を支える。

入校して1カ月余り 現在の心境は
4時限目・武道―。
この4月に採用された初任科生たち。入校すると男子も女子も、剣道か柔道を選択して心身を鍛える。

入校して1カ月余り。現在の心境は―。
初任科(4月採用)・内岩仁宣巡査(26):
やっと生活に慣れてきたなというところで、これから一つ一つ学ぶべきことを学んで、一人前になれたらなと思っています
初任科(4月採用)・河﨑まみか巡査(23):
徐々に慣れてきましたが、やはり大変なところは大変です。優しさも持ち合わせて頼られる警察官になりたいなと思います

警察官は誰のために働くのか

10月入校の初任科生、5時限目は座学「警察改革」の授業。
伊藤しのぶ校長補佐:
警察が生まれ変わったんだよ。そういう姿を見せるには、あなたたちが、現場で県民のために働く姿を見てもらうしかないと思います
「警察改革」は、告訴を受理しなかったために起こった「ストーカー殺人事件」、「覚醒剤使用のもみ消し」など、1999年ごろに相次いだ警察の不祥事を受けて行われた信頼回復の取り組みだ。
警察はどうあるべきか、警察官は誰のために働くかを、もうすぐ現場に出る初任科生に伝える。

伊藤しのぶ校長補佐:
組織を変えていくのは、偉い人たちではありません。県民の一番近くで働く皆さんです。県民はあなたたちが安全、安心のために働いてくれることを期待して、信じて、待ってくれています。卒業のその日まで精いっぱい努力を怠らず成長を遂げてください
同期の支えでここまで
卒業まであと2カ月―。
初任科(10月採用)野澤将吾巡査(20):
(卒業まで)わずかなので、現場を想定して、しっかりと今まで学んできたことを復習して、県民の方々にしっかりと安心感を与えられるような優しくて、たくましい警察官になりたいと考えています
初任科(10月採用)・赤羽美雪巡査(20):
すごくつらかったんですけど、同期が支えてくれて、そのおかげでここまで頑張ってこられたかなと思います。現場へ出ても困らないように、授業などしっかり受けて、一線署(交番や警察署)で活躍できる警察官になりたいです

規律や協調性を学び心身を鍛え、知識を身につける―。
「教場」での日々が警察官の自信や支えとなっている。
(長野放送)