石川県金沢市にある金沢大学附属病院。第1波からコロナ重症患者を受け入れ、多くの命を救ってきた。現場で“未知の病”と向き合った蒲田敏文病院長が石川テレビの取材に応じ、コロナ禍の3年余りを振り返った。

「やっとここまで来た」コロナ病棟を抱える病院長の胸中

金沢大学附属病院 蒲田敏文病院長:
やっとここまで来たかなという感じですね。実際にはまだ感染者がそれなりにいるんですけど、最初の頃を思うとちょっと一安心しているような気持ちはありますね。

この記事の画像(12枚)

新型コロナの重症患者が金沢大学附属病院に初めて運ばれてきたのは2020年4月15日。当時は有効な治療法も分からずワクチンもない、手探りの状態だった。

金沢大学附属病院 岡島正樹医師:
人類が初めて遭遇する病気で、果たして治療ができるのか。自分がやるんだと思った。

当時、病院では救急科にいた岡島正樹医師をリーダーとする新型コロナ専門医療チームCOVSAT(コブサット)を結成した。以来、石川の地域医療における最後の砦として数多くの重症患者を救ってきた。

COVSATスタッフによる患者への声掛け:
大丈夫やぞ〇〇さん、大学病院ですからね。いいがに(しっかり)治療するんでね、ゆっくり呼吸しましょう。

落ち着きを取り戻しつつあるコロナ病棟の今

改めて金大病院のコロナ専用病棟を訪ねた。

稲垣真一アナウンサー:
何がビックリしたって、全く何の仕切りもなくなっているんですね。
蒲田病院長:
今後は部屋ごとに感染管理区域を作ってそこで患者さんを診るので、廊下は自由に行き来できます。

今の病室の様子を見せてもらった。

金沢大学附属病院 中村洋子看護師長:
この部屋からレッドゾーンになるので、部屋に入る前に防護具を着用します。

スタッフは患者のケアをした後、出口付近のイエローゾーンで防護具を脱ぎ手指の消毒をして退室する。

中村看護師長:
きちんとした防護具の着用と手指の消毒、そしてゾーニングをきちんとすることで感染対策が行えると考えています。

多くの家族が待ち望んだ入院患者との面会を再開

さらに金大病院は入院患者の面会について一部制限はあるものの再開すると発表した。2020年12月以来およそ2年半ぶりの再開だ。

蒲田病院長:
長期間入院している患者さんは、家族と接していないとものすごくストレスになる。それが影響して病気の治癒率も下がります。大学病院が面会を再開しないと、県内の病院は中々できないかなと思って、あえて我々が一番最初にやるよと思っていたんです。

治療の最前線である金大病院にも日常が戻りつつある。

“受診控え”に“検診控え”コロナ禍がもたらした影響は続く

しかし長いコロナ禍によってもたらされた懸念がある。

蒲田病院長:
コロナ禍の前なら簡単に受診するような患者さんが受診を控える。うちの病院だけではなくて県内全ての病院で実は今も続いているんです。

金大病院の入院患者はコロナ禍の前と比べて1割減った。感染に対する不安に加え家族と面会できなくなるのは嫌だといった理由で、本来は入院が必要なのに通院治療を希望する患者が増えているそうだ。

加えて蒲田院長が懸念するのが“検診控え”だ。

蒲田病院長:
早期だったがんもいつまでも早期ではないですよね。2年、3年すれば進行がんに変わって、あるいはそれが転移している状況もあり得るわけで、今後そういう患者さんがどんどん増えてくるのを危惧しているところはあります。安心して検診や人間ドックを受けていただきたいと思います。

最後に蒲田病院長はこう提言する。

蒲田病院長:
必ずまた同じような感染症が起こると考えて、今回の新型コロナ感染症に対して立ち向かったいろんな記録とか経験は、やっぱり今後に生かすようにきちんと残していくべきだと。それは我々だけじゃなくて、国全体がそうするべきだと僕は思う。マスコミの方にもぜひそれをお願いしたいなと思いますね。

5類になっても新型コロナが消えてなくなったわけではない。この3年余りで得た教訓を日々の暮らしの中で生かし続ける必要がある。

(石川テレビ)

石川テレビ
石川テレビ

石川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。