新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが連休明けの2023年5月8日に5類に引き下げられ、新型コロナ対策もマスクの着用と同じように個人の選択と判断に委ねられる。新型コロナ対策の中枢で、かつてない事態に立ち向かってきた人たちがこの3年を振り返った。

5類に移行することで何が変わる

2023年5月8日以降、マスクの着用など基本的な感染対策は、個人の自主的な取り組みがベースとなる。

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一方、医療提供体制では、受け入れ病床の確保や感染対策を目的とした施設整備支援は続けるが、対策本部による患者の入院調整は廃止となり、これからは医療機関同士で調整を行う。

これまで公費負担だった検査や入院にかかる医療費は自己負担となるほか、無料のPCR検査は終了するが、ワクチン接種に関する公費負担は2024年3月末まで継続する。

これまで全て把握していた新規感染者は、他の感染症と同じように県が定めた54の医療機関における定点把握に移行し、感染が拡大すれば注意報や警報を出して注意喚起する。

5類となるのに伴い廃止されるのが、入院待機ステーションだ。 
新型コロナの感染拡大で病床がひっ迫し、入院が必要な患者がすぐに入院できない状況を前に設置された。

医師や看護師などが常駐して緊急性の高い患者を見過ごさず、医療機関の負担を軽減し、救急体制を支えてきた。

「納体袋を用意しているか?」目の前に直面している危機を思い知る

入院待機ステーションの立ち上げに尽力したのが、県の対策本部の漢那歩(かんな あゆみ)さんだ。重症化しやすいデルタ株が流行した第5波の時期だった。

県保健医療部 感染症医療確保課 医療体制確保班 漢那歩班長:
入院待機ステーションの方は、やはり24時間稼働している救急医療的なところがあったので、緊迫感を持っていました

漢那さんはDMAT(ディーマット)と呼ばれる災害派遣医療チームの医師と共に対応にあたる中、目の前に直面している危機を改めて思い知らされた。

県保健医療部 感染症医療確保課 医療体制確保班 漢那歩班長:
(医師に)納体袋を用意しているかって言われて。納体袋って亡くなった方のご遺体を入れる袋なんです。医療が逼迫して、本当に医療にかかれなかったときには、ここに運び込まれるということもありますと。自分も腹をくくらないといけないんだっていうところがすごくショックというか、気を引き締めないといけないところでした

5月7日をもって、入院待機ステーションは廃止されるが、いまも自宅での療養が難しい患者を受け入れている。 
これまでに施設で一時待機し、命を繋いだ患者は2033人に上る。 

沖縄県の医療の底力 整備された医療体制はレガシーとして活かす

県の対策本部で医師らと共に患者の入院調整を担ってきた久髙斉(くだか ひとし)さん。

県保健医療部 感染症医療確保課 患者管理班 久髙斉主幹:
デルタの頃の波が辛かったのを覚えています。波が高くなると患者さんは入院できなくて苦しむし、僕らも入院先が案内できなくて無力感に苛まれました

県は独自に開発した感染者の入院状況をリアルタイムで確認できるシステム"OCAS"で、医療機関との連携を進めてきた。

システム上で受け入れ病床がゼロを示す中、症状の重い人の命を救うため医療機関の踏ん張りを肌で感じた。

県保健医療部 感染症医療確保課 患者管理班 久髙斉主幹:
沖縄県の医療の底力みたいなものもありまして。何とかこじ開けて受け入れてくださる病院もあったりして、本当に医療機関の皆様の理解と努力があって何とか乗り越えてきたのかなと思っています

2023年5月8日以降、多くの人の命を繋いだこの入院調整の機能は役目を終え、今後、感染が拡大した場合は医療機関同士で調整を行う。

このような新型コロナによって整備された医療体制は、レガシーとして、今後の災害などの対策に活かしていくことが求められる。

県保健医療部 感染症医療確保課 患者管理班 久髙斉主幹:
次の災害や別のパンデミックが起きたときには、当然この経験を生かしていかなければいけません。どうにかして形を残して、次に繋げないといけないと思っています

制度が変わることで混乱が生じることを踏まえ、漢那さんの班では、患者の受け入れなどについて、クリニックへの説明会などを開いている。

県保健医療部 感染症医療確保課 医療体制確保班 漢那歩班長:
制度が変わるときには、混乱まではいかなくても、今まではこれができていたのになんで、というのも皆さん絶対あると思います。その辺は、トライアンドエラーをしながら修正していかないといけないのかなと思っています

新型コロナを乗り越えるために作り上げてきた仕組みは一旦手放すことになるが、新型コロナは決してなくなったわけではないと肝に銘じる必要がある。

(沖縄テレビ)