石川県金沢市に伝わる郷土料理にゴリ料理というものがある。地元の人なら耳にしたことはあるのだが、実際食べたことのある人はどのくらいいるだろうか。子供から素朴な質問が届いたので、石川テレビの取材班が調査した。
「ごり押し」の由来 知られざる生態と変わった道具を用いるゴリ漁
石川県内に住む女の子あやのちゃん(6)からこんな疑問が寄せられた。
あやのちゃん:
ゴリのお料理ってどんなものですか?

おばあちゃんから「今は見かけなくなった魚で、見た目は怖いけどおいしいお魚だったんだよ」と言われ気になっているそうだ。
そもそもゴリとはどんな魚なのか。向かったのは金沢市の山間部。浅野川につながる上流の川にゴリがいると聞き、ゴリ漁に詳しい金沢漁業協同組合の八田伸一組合長に案内してもらった。

金沢漁業協同組合 八田伸一組合長:
金沢ではカジカのことをゴリと呼びます。ゴリと呼ばれる魚は地方によって種類が違うようで金沢では体長10センチ前後の淡水魚カジカを指す。

ちなみにゴリは漢字で書くと魚へんに休むと書いて「鮴」。

八田組合長:
石と石の間や石の裏の方にいるんですけど、そんなにしょっちゅう動いていないでずっと止まっている。
ゴリは泳ぎがあまり得意ではなく石と石の間でじっとしていることが多いのだそう。それで魚へんに休むと書いてゴリだそう。よく使われるあの言葉もゴリが関係しているようだ。

八田組合長:
自分の主義主張を通すことをごり押しと言うが、これはゴリ漁から出た言葉です。
八田組合長が持っている道具に秘密がある。

八田組合長:
この道具で石を動かすと、ゴリがびっくりしてかごの中に入る。無理やりゴリを追い出す漁法から“ごり押し”という言葉が生まれたんですね。

環境の変化で生息数は減少 身近だったゴリも今では高級魚
身近な存在だったゴリも最近はあまり見かけなくなり、漁を行う人も減ったそうだ。
八田組合長:
濁り水が出て石の間が埋まってしまうとゴリはどうしても生存できなくなる。
川の工事などの影響でゴリの生息エリアが減少し、徐々に数が減っていったと言われている。今となってはゴリは貴重な高級魚なのだ。

八田組合長:
今は禁漁期間なんですよ。だから3月~5月まではゴリは獲ってはいけません。
残念ながら、今回は金沢の川で休むゴリの姿を見ることはできなかった。

そこでゴリ料理を提供する店を訪ねた。金沢駅前にある「寿司割烹 髙﨑屋」だ。

髙﨑屋の大将 髙﨑修さん:
これがゴリです。

石川県内で出回るゴリは数が少なく髙﨑屋ではこの時期、新潟県から仕入れているそうだ。あやのちゃんのおばあちゃんが言っていた通り見た目はちょっと怖いかもしれない。

金沢の地に根付く名物ゴリ料理 強い甘みと香ばしさが魅力
髙﨑さん:
昔からゴリは金沢名物の一つに必ず入っています。小さくても甘みも強くて、香ばしさと味は格別です。
それではお待ちかね。髙﨑さんにゴリ料理を披露してもらう。

髙﨑さん:
川魚は生きているのを料理するのが基本なんです。まずはお刺身、身は2切れしかとれません。

ゴリの価格は1匹500円ほどだそう。2切れの刺身でこの値段…確かに高級魚だ。2品目は最もダイレクトにゴリならではの味わいが出るという唐揚げ。低温からじっくりと揚げていく。

出来上がったのはプリプリのきれいな刺身と、ゴリをまるごと使った唐揚げ。

髙﨑さん:
地元でも食べたことがある人は少なくなってきている。一度食べたらまた食べたくなると思うので、是非一度食べてみてほしいと思います。
なお、金沢の人にとっては、ゴリと言えば「佃煮」かもしれない。しかし、今回紹介したゴリとは種類が違うそうだ。佃煮に使われるゴリはハゼ科のウキゴリなどを使っていて、金沢の郷土料理ではこの複数の種類を総じてゴリと呼んでいるとのこと。
(石川テレビ)