警察庁の調べによると、特殊詐欺の被害額は2022年の1年間で361億円にのぼる。毎日の報道で詐欺の被害が伝えられ、対処法も紹介される中で、前年より79億円増えている。
特殊詐欺の被害に遭わないための「だまされない10のポイント」を、立正大学 心理学部 対人・社会心理学科の西田公昭教授に聞いた。
自信過剰は危険!だまされない「10の方法」~心構え編~

まずは「心構え編」。
1、「自分に電話なんてかかって来ない」という非現実的楽観主義は危険
2、「だまされるわけはない」という自信過剰は危険
3、手口は「不安をあおってパニックを引き起こす…そして救済するふり」
4、詐欺師は常に考え「アップデート」
5、注意点は「詐欺師は良い人に見える」

ー1楽観主義、2自信過剰について
立正大学 西田公昭教授:危険性を低めに認知するのは人間の一般的傾向です。楽観的に生きていきたいという気持ちが誰にもあります。「詐欺に引っかかるのは、問題を抱えている人ではないか」「私のようなしっかりした人間はだまされない」という根拠のない自信を人は持ちがちです。それが被害に遭うきっかけになります。

ー3パニックと救済
立正大学 西田公昭教授:手口は「不安をあおってパニックを引き起こす…そして救済するふりをする」というものです。動揺しているときには、親切にされると、相手を信頼してしまいます。そこに危険があります。
ー4犯罪者はアップデートする
立正大学 西田公昭教授:詐欺師には失敗して捕まって刑務所に入ったとしても、罪を反省するのではなく、失敗の原因などを考えて、作戦会議のように刑務所での時間を使ってしまい、さらにパワーアップして出てきてしまう人がいます。ずっと人をだますことを考えている詐欺のプロです。こんな人を相手に「気を付けていれば大丈夫」と気楽に思っていることがだめなんです。
ー5「良い人に見える」について
立正大学 西田公昭教授:詐欺師というと、サングラスをかけて不敵な笑みを浮かべているようなイメージがあります。挿絵などにはよくありますが、そんな人はいないんです。詐欺師は「良い人」に見えますので、注意してください。
自信過剰は危険!だまされない「10の方法」~実践編~

そして「実践編」だ。
6、“お金の話”が出たら意識「全集中」を
7、動揺や不安…感情の揺さぶりに要注意
8、防災訓練のように「だまされない訓練」を
9、頼れるテクノロジーはフル活用
10、「気を付けて」は意味がない
ー6意識全集中、7揺さぶり注意
立正大学 西田公昭教授:「お金を支払わないといけない」とか、「還付金で返って来る」とか、お金の話が出たら、気持ちを切り替えないといけないんです。人間は楽しく生きたいものですから、普段ぼーっとするのも仕方がないことです。しかしお金の話が出たら、頭をフル回転させることを習慣づける必要があります。
「お金」は頭を切り替えるキーワードです。相手が警察だろうと銀行の人だろうと身内だろうと、頭のフル回転が必要です。そして、相手は感情を揺さぶってきます。自分がドキドキする、動揺しているということを感じたら、自制をかけてほしいと思います。その時は冷静になってください。

ー8「だまされない訓練」
立正大学 西田公昭教授:家族が犯人役になって電話をして、「あなたは誰ですか」「録音します」などとはっきり話す訓練をするのは効果があります。
ー9テクノロジーも活用
立正大学 西田公昭教授:また、詐欺防止のためのテクノロジーもあります。スマホのテレビ電話機能を利用するとか、AIが会話内容を解析して詐欺を探知し家族などに知らせるNTTの新しい無料サービスなどがあります。こういうものは大事です。テレビ電話は、日常的に使うようにする「国策」が必要だとも考えます。テレビ電話の普及は、やろうと思えばできます。

ー10「気を付けて」だけでは意味がない
立正大学 西田公昭教授:特殊詐欺に対しては、国民全体が、政治家も巻き込んで、抜本的包括的な対策をとる以外にないと思います。これを今までやってきませんでした。

立正大学 西田公昭教授:「気を付けて」と言うだけで、大した対策をせずに20年過ぎました。「気を付けて」と言うだけでは意味がありません。具体的な対策や実行が必要です
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月2日放送)