地域の治安を守る警察官が最初の一歩を踏み出す警察学校。日々どのような訓練に励んでいるのか。愛媛の「教場」で、警察官人生を歩み始めた若き新人警察官たちを追った。

新人警察官100人が入学

4月6日、入校生の張り詰めた宣誓が響くのは愛媛県警察学校。入校式には、この春、新たに採用された新人警察官100人が臨んだ。

入校生代表・中野貴之巡査:
不偏不党かつ公平中正に、警察職務の遂行にあたることを固く誓います

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全員が初任科生として寮で共同生活を行いながら、大卒は半年間、高卒は10カ月間、警察官として必要な知識や実務などを学ぶ。

愛媛県警察学校に入校した岩谷達弥巡査:
小さいころから続けてきた武道を生かして、人を助ける仕事がしたいと思い警察官を志しました

愛媛県警察学校に入校した大川将弥巡査:
父親が警察官であり、その姿を見て自分も同じ道を歩みたいと思いました

スタートした警察学校の生活。「301教場」では…。

初任科生:
お願いします!休め

警察学校では毎日、朝8時半から朝礼、そして1コマ80分の授業を5時限まで行う。さらに授業以外の時間も体力トレーニングや自習など、スケジュールはびっしり。授業では警察官に必要な法律や警察実務などを学ぶほか、柔道、剣道、逮捕術などの訓練を通して心と体を鍛える。

教官:
進め!

体育館で行われた授業は「点検教練」。教官のカウントに合わせ、警察手帳や警棒など身に付ける装備が正しく管理できているか全員で一斉に確認するとともに、定められた動きを仲間とそろえることで団結力を身につける。

教官:
手帳! 大川!

手帳を遅れて出してしまった初任科生、すぐさま注意される。何度も繰り返して反復することで、動きとタイミングを体に刻み込む。

教官:
一斉に吹け!

一斉に笛を鳴らす訓練。機敏な動作が求められる。

教官:
努力は絶対に裏切りません。絶対に裏切らないのでこの6カ月間は努力してください。そうしたら本当に変わっていく

授業が終わってもグラウンドで課外訓練が続く。

初任科生:
レッツゴーレッツゴー

集団で走る初任科生。「号令調整」と呼ばれる訓練だ。途切れなくかけ声を叫びながら、隊列を乱すことなくひたすら走る。肺にかかる負担を大きくすることで「体力」を、さらに隊列をそろえることで警察組織の一因としての「協調性」を養う。この日は30分間走り続けた。

初任科第184期生副担任・篠﨑正浩教官:
ちょっとぐらい休んでも大丈夫だと思ってるやつ絶対おるやろ。そこがお前らの弱点やないか

教官から厳しく指摘される。

“約30km”の歩行訓練

入校式から2週間後の4月20日。初任科生たちは愛媛・今治市にいた。始まるのはしまなみ海道を歩いて渡る歩行訓練。その距離、約30kmだ。

初任科生・大川将弥巡査:
お互いに声をかけ合って、乗り越えていけたらなと思っています

初任科生たちにとっては、初めて学校の外に出て行う訓練だ。

初任科第184期生担任・今泉七哉教官:
外でも自分が警察官だなっていうのを自覚しながら活動してもらう。成長してもらわないと困るので、そのあたりをしっかり期待しています

午前8時に来島海峡大橋を出発。ゴールの大三島を目指す。橋の上では…。

初任科生たち:
はいチーズ、オッケー! あざす!

久々に学校から出たことで、気持ちは少しウキウキしているよう。しかしそこは「警察官の卵」。

初任科生:
歩行者、来ます

ほかの歩行者や自転車の邪魔にならないよう、気を配りながら歩く。

途中、立ち寄った伯方島で待ちに待った昼食タイム。弁当をかき込む。30kmの距離を歩ききるため、腹ごしらえは欠かせない。中には今治名物のB級グルメ「焼き豚たまご飯」を追加で注文する初任科生も。

初任科生:
おなかすくんですよね

また、学校の食堂では出されない甘いスイーツにも長い行列ができていた。

初任科生・大川将弥巡査:
(午前中は)結構足に来る感じ。これから歩けるか不安です

疲れが見える中…ゴールまであと少し

伯方島を出たあとは50分ほどで大三島に到着。ゴール地点の多々羅しまなみ公園まで、あと4kmだ。

初任科生:
がんばっていこー! おー!

強い日差しの下での訓練で疲れが見える人も。全員で声を出し合いラストスパートだ。

初任科生:
疲れは大丈夫ですね

後ろの列の方からは元気な「ゴール見えたよー!」の声が。笑い声も聞こえてくる。

午後3時10分、ついに大三島の多々羅しまなみ公園にゴール。予定時間より20分も早く全行程を歩ききった。

体力的には問題ない元気な184期生たち。しかし訓練中に私語が多かったり、時折、隊列も乱れるなど教官の目には、「規律を重んじる警察官としての心構えが甘い」とうつったようだ。

愛媛県警察学校 初任科第184 期生担任・今泉七哉教官:
まだまだ全然だめですね。これからしっかりと切り替えができるような警察官になってもらいたいと思っていますし、われわれもそういった警察官を育てられるよう努力していきたい

初任科生・大川将弥巡査:
あと何年かかるかわからないんですけど、この6カ月の警察学校期間をしっかり過ごして、少しでも(父に)近づけるようにがんばりたい

県民の安全安心を守る一人前の警察官になるために。新人たちの奮闘は始まったばかりだ。

(テレビ愛媛)

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