名古屋名物の代表格「きしめん」から作られたお菓子「きしめんチップス」が、2020年から観光地などで販売したところ評判になっています。考案したのは地元の女子高校生です。

名古屋の新名物「きしめんチップス」 地元の人からも人気の商品に

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名古屋城にある土産店。

店をのぞいてみると、名古屋土産の定番、「ゆかり」や「青柳ういろう」などと並んでおかれていた「きしめんチップス」。4種類あり、1袋300円です。

一番人気は「マイルドカレー味」。

名古屋名物のきしめんを、軽い食感のチップスに仕上げています。スパイスはマイルドな味わいで、辛さは控えめ。おやつはもちろん、お酒のおつまみとしても楽しめそうです。

観光で来ていた人たちに食べてもらいました。

観光客の女性A:
なんか、ふわっとしてる感じの食感がいいです

観光客の女性B:
おいしいです。わかりません、麺って

観光客の男性:
なんか記憶のある味がします。どこで食べたかなぁ

観光客の女性C:
家で作るカレーの味がします。懐かしのカレーの味

観光客の女性D:
食感軽くて、カレーも優しい味だから、子供ウケもしそうですね

このきしめんチップスは名古屋城やセントレアなどで販売されていて、観光客はもちろん、地元の人にも人気となり、5万袋以上を売り上げています。

堂々たる「名古屋土産」の人気商品です。

開発したのは女子高校生…きっかけは“きしめん離れ”への危機感

カレー味のパッケージには「愛知商業高校プロデュース」と書かれています。

名古屋市東区の愛知商業高校を訪ねました。

経理科3年のみなさんが、開発をスタートさせた先輩たちから引き継ぎ、お菓子のプロデュースをしているといいます。きしめんを使った理由は“きしめん離れ”でした。

開発した愛知商業高校の高校生A:
きしめんの文化が少しずつ衰退していることを知って、きしめんの未来をつないでいきたい、という思いが芽生えたことがきっかけです

授業で、地元の“きしめん離れ”を知り、伝統の食文化を守りたいとの思いから、きしめん店に協力してもらい共同開発したといいます。

協力を依頼したのは名古屋市北区の「角千(かどせん)本店」。

1918年(大正7年)に創業し、地元素材を使ったきしめんの味を100年以上守り続けてきた老舗です。

生徒たちから相談を受けたのが、4代目の店主、加古僚太郎さんです。

4代目の加古僚太郎さん:
まず学生の皆さんも「きしめん実際どう?食べてます?」って言ったら、やっぱりほとんどの方がきしめんはあんまり食べてなかったと思うっていう。作る上で、きしめんというものをやっぱり知っていないと

生徒たちもきしめんに馴染みがなかったことがわかり、「きしめんを学ぶ」ところから始めようと、加古さんが1年間、愛知商業高校に通い、その歴史や製法の授業を行いました。

そこで、生徒たちから出てきたアイデアというのが「お菓子」でした。

開発した女子高校生A:
子供から大人まで、みんなが食べることができて、みんなに知ってもらえるきっかけがお菓子になるんじゃないかと思って、考えました

加古僚太郎さん:
あぁそれは面白いねと。じゃあ我々が工場で作っている麺の廃棄するような麺の端材ですね、これはじゃあ、食べられないものじゃないんだから、食べられるようにするのにお菓子っていいんじゃないかなって

どの世代にも愛されるよう「お菓子」にすることに決定。店できしめんを作る際に出る麺の切れ端を年間120キロも処分していることから、この捨てられる部分を再利用した「SDGsな商品」を考えました。

試食を何度も重ねてたどり着いた「サク、パリ、ジュワ」の新食感

「角千」でもお菓子の製造は初めてで、加古さんも何度も試作を重ねたといいます。

加古僚太郎さん:
やっぱり麺の加水量が違うんだな、フライヤーの温度が大事なんだなって、何回も試行錯誤したのは覚えています

実験の結果、切れ端を油の中へ入れ145度で3分ほど揚げるとカラッとした食感に仕上がり、食べやすくなることがわかりました。

開発した女子高校生B:
おいしいです。はじめて食べた時は、新食感。でも食べていくと、どんどん病みつきになってやめられなくなるような、新しいお菓子だと思って、どんどん広げていきたいっていう気持ちが大きくなりました

開発した女子高校生C:
サクサクでもあり、食べていくとしっとり感も感じることができる。本当にサク、パリ、ジュワって…

試作を通じて加古さんにも、発見がありました。

加古僚太郎さん:
麺って他にも考え方とか発想力を豊かにすれば、違ったものができるなっていうのを、やっぱり学生はそういう視点が違っていたりするので、年上も年下も関係ないなと

カレースパイスは人気カレー店に依頼 “隠し味”で「みんなに愛される味」に

ベースができあがったところで、次は味つけ。高校生たちが目を付けたのが、角千の人気商品「カレーきしめん」。

今度は角千がスパイスを提供してもらっている、名古屋の人気カレー店で千種区の覚王山に店を構える「えいこく屋」でした。

本格的なインドカレーが人気のお店です。

えいこく屋の米山将太さん:
うち、本格的な現地のコックなので、スパイスから作るカレーなんですけども、ただきしめんチップに使うのはどちらかというと、皆さんに食べていただきやすいような味っていうところで、今回はマイルドカレー味という名前だったので、辛さをおさえて食べやすいっていうところを中心に考えていましたね

生徒とともに味見を重ね、11種類のスパイスを調合。しかし、なかなかみんなが満足するような「マイルド」な味を、作り出すことができなかったといいます。

ところが、ある隠し味を入れたところ、イメージ通りの味になりました。それが、角千の「出汁」。スパイスにアジでとった出汁を加えたところ、生徒たちの求める子供から大人まで「みんなに愛される味」になったそうです。

米山将太さん:
これが実際にできあがったカレーの粉末

開発した女子高校生D:
めっちゃいいにおいします

米山将太さん:
(高校生は)食べ方の提案とかもいろいろ考えてくれていて、そのまま食べるだけじゃなくて、サラダにつぶして振りかけたりとか。作って終わりじゃなくて、それを提案してもらえるとお客さんにいろいろ説明ができるので、本当助かりますね、そういうところも

こうして完成した「きしめんチップス、マイルドカレー味」。

2020年から東海地方の観光地を中心に販売をはじめたところ、大人気となり、これまでに2万袋を売り上げました。

2022年11月には、全国の商業高校が参加する「フードグランプリ」で20校の中から、大賞に選ばれました。

開発した女子高校生B:
きしめんチップスを開発した原点が、きしめんを食べてもらう道になる、ということだったので、きしめんチップスを全国に広めていくのはもちろんですけども、きしめんにもっと皆さんにふれていただけるよう、きしめんチップスときしめんを一緒に全国に届けられたらなって思います

2023年1月30日放送

(東海テレビ)

東海テレビ
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