東京・狛江市の住宅で強盗に入られた高齢の女性が暴行され死亡した事件。この事件で逮捕された4人の犯行グループの内、1人は石川県白山市出身の19歳の大学生(当時)だった。特定少年として強盗致死の罪で起訴された少年。生い立ちをたどると、裕福な家庭に生まれ育った環境だったが、徐々に歯車が狂っていく様子も見えてきた。

裕福な家庭環境だった19歳の少年…事件を起こすまでに何が

石川から東京に移送される少年
石川から東京に移送される少年
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2023年1月19日。東京都狛江市の住宅に宅配業者を装った男4人が侵入。この家に住む大塩衣与さん(90)が両手を結束バンドで縛られ、殴る蹴るなどの暴行を受けた。約60万円相当の高級腕時計が奪われ、大塩さんは死亡した状態で発見された。

事件があった現場
事件があった現場

この事件をきっかけに、全国で相次いでいた強盗事件は、交流サイトで闇バイトに応募した人間たちによる一連の犯行だったことが発覚した。狛江市の強盗殺人事件では実行役として4人、実行の手助けをする幇助役として1人が逮捕された。

事件現場
事件現場

実行役4人のうち2人は、石川県に関係する人物。1人は金沢市末町に住む土木作業員の男(21)。そしてもう1人は白山市出身の19歳の男子大学生だった。

19歳の少年は、事件への関与が発覚する前の2023年1月31日、石川県運転免許センターで偽造した運転免許証の住所を変更しようとしたとして偽造有印公文書行使の疑いで逮捕されていた。

その後、狛江市の事件に関与している可能性が浮上し強盗殺人容疑で逮捕。東京家庭裁判所に送られ、家庭裁判所は刑事処分が相当として検察に逆送。そして2023年4月、少年は強盗致死の罪で起訴された。

移送の際、駅は大混乱となった
移送の際、駅は大混乱となった

少年はいかなる人物だったのか。少年の地元、石川県白山市を取材した。しかし、住民は口を揃えて「知らない」と言う。ある住民は…

住民:
警察の人にも言われたよ、ここの部落の人、あの子について何も知らんのやねって

不気味に思うほど、有力な情報は得られなかった。

小学校までは明るい性格だった少年だが…もめたことも

小学校時代の少年
小学校時代の少年

こうした中、少年の幼稚園・小学校時代の同級生に話を聞くことができた。この同級生は、事件を知ってまず驚いたというが、少年の人柄については?

小学校時代までの同級生:
明るい性格ではしゃいだり、しょっちゅうしていた。クラスでは基本誰とでも仲良くできる子で、でも特に親しい子を作ったりでもなく、みんなと仲良くしていたって感じ。

小学校時代の卒業アルバム 右端が19歳の少年
小学校時代の卒業アルバム 右端が19歳の少年

明るくまじめで、なんでもできたという少年。しかし一方で…

小学校時代までの同級生:
周りより裕福でそこでちょっと一時もめたというか…もめたことが多少あった
記者:
どんな風に?
小学校時代までの同級生:
ゲーム関係で自分が持っているのをすごいやろと自慢することがあって、周りがあいつめんどくさいなとなった感じ。
記者:
裕福なことを誇らしげに思っていた?
小学校時代までの同級生:
そうですね、”周りとは違うぞ”と、”差があるんかな”とは思っていた。

少年の父親は自営業者。裕福な家庭で育ったがゆえ生まれた「金」への執着が少年を犯罪へと引き込んだのだろうか。同級生はさらにこう続けた。

小学校時代までの同級生:
普段から明るい性格だったけど、外とか行ったりしたらカエルをよく解剖していたイメージがある
記者:
理科の実験みたいな?
小学校時代までの同級生:
研究ではなく、ただ単に楽しいしやっていたというイメージ。

少年は地元の中学校に進まず…金沢の中高一貫進学校へ

中高一貫校へ進学した少年
中高一貫校へ進学した少年

少年は小学校を卒業後、地元の中学には進まず、金沢市内の中高一貫校へ進学。地元の同級生との交流はなくなったという。

少年は「6年間の思い出」と題した小学校の卒業文集でこう綴っている。

小学校の卒業文集
小学校の卒業文集

少年の卒業文集:
4つ目は塾に行って○○中等高等学校を受験するために、小学校ではやらないところをたくさんがんばったことです。(中略)また、○○中等高等学校の受験をするときに前日、暗記していたところがたくさん出てきて、分からないところもあったけどほとんどの問題を解けたからです。

「周りとは違う」、「差がある」学校に進学することを誇らしく思っていたのだろうか。こうして入学した中学校。少年の中学校・高校時代の様子を別の同級生は次のように語った。

中学校の卒業アルバム
中学校の卒業アルバム

中学・高校時代の同級生:
同じクラスになったことはなくてあんまり知らないけど、高校一年生の時から徐々に登校頻度が減っていって…

高校に入ってから登校頻度が減り、生徒指導室や保健室へ登校するようになったという少年。
さらに…

中学・高校時代の同級生:
万引きしたりとかタバコ吸ったりとか、素行は良くない感じはちらほら聞く感じで、素行の悪さとかは同じクラスになったことない僕でもわかるくらい。

中学校の卒業アルバム
中学校の卒業アルバム

小学校の卒業文集で二度も名前を出すほど思い入れが強かった学校。万引きにタバコ、素行の悪さが目立つようになった少年は高校の途中で退学したという。

少年の卒業文集:
将来の自分に一言

少年:
今、何をしていますか。

文集の最後、未来の自分にそう投げかけた当時小学6年生の少年。きっと輝かしい未来を想像していたに違いない。罪の無い人に手をかけ、逮捕される19歳の自分を想像できたろうか…。

高校中退後、大学に進学しているが、どのようないきさつだったかはまだ明らかになっていない。2022年4月に改正された少年法によって、実名で起訴された19歳の少年。起訴された際、少年の名字は変わっていた。裕福な家庭に何があったのか…。少年は公開の法廷で1人の大人と同様に裁かれる事になる。

(石川テレビ)

石川テレビ
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