10代から20代の若い世代を中心に、多くの人が利用している「脱毛サービス」。利用者が増える一方で、脱毛サロンを巡るトラブルが続出している。その実態はどうなっているのか、福岡の店舗と東京の本社を直撃取材した。

解約を決めたが…連絡も返金もなし

福岡市に住むりえさん(仮名・20代)。5年前に、全国に店舗展開している大手エステサロンで「全身脱毛無制限プラン」を契約し、26万4,000円を支払った。

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りえさん(仮名・20代):
CMとかもしてたし、全国に展開しているサロンだったので、しばらくはつぶれることはないだろうと思って…「一生涯、通い放題です」って言われて「元をとるぐらいは通えるかな」と思っていたので、こんな状況になってびっくりです

妊娠、出産で2年ほど通えず、2022年10月に久しぶりに予約を入れようとした。

りえさん(仮名・20代):
予約できるのが“半年後”とかになっていて「え?なんで?」と…。私は出産の後なんですけど、結婚式を4月に控えていたので、次回に行けるのが3月とかになると、しっかり脱毛ができず、きれいになれないので…

結婚式までに「2、3回は通いたかった」と思っていたが、式直前の1回しか予約できないことがわかり、サービスを解約することに決めたのだが…。

りえさん(仮名・20代):
コールセンターがつながらない状況になっていて、契約の解除通知をまずメールで送ってみました。ただ音沙汰がなくて、書面で郵便局に行って、内容証明で契約解除の通知書を送ることにしました

しかし、書面を送ったのちも、会社側からの対応は何もなかった。りえさんには、これまで通った11回分のサービス料と解約手数料を差し引いた16万円ほどが返金されるはずだが、半年たった現在(2023年4月)も会社側から連絡はなく、お金も戻ってきていないという。

りえさん(仮名・20代):
会社がつぶれてしまったら「お金が戻ってこないんじゃないか」という不安もありますし「早く返してほしいな」って思います

突然告げられたサービス終了

「脱毛サービス」は、10代から20代の若い世代を中心に、多くの人が利用している。

20代女性:
通っています。全身脱毛です。夏に向けて、ですね。費用は30万円くらい

10代女性:
友だちが行っていたので自分も行こうかなと。人気サロンなので予約が取りづらい

20代男性:
男性でも周りに結構いるんですよね。足とか下半身の脱毛する人。自分も結構、顔回りの毛が濃いので、やりたいなと思っている

“脱毛エステ”の相談件数は増加している
“脱毛エステ”の相談件数は増加している

利用者が増える一方で続出しているのが脱毛サロンをめぐるトラブルだ。実際、りえさんが通っていたサロンでは、全国の店舗で問題が起きていた。SNSには悲痛な声が多数書き込まれている。

SNSでも怒りの声
SNSでも怒りの声

◆SNS
「あり得ない。勝手に店閉店されて予約キャンセルされた。こっちは3ヶ月前にやっと予約できたからわざわざ休み希望までだしてたのに!!!まったく空いてないし、金の無駄じゃんか。ふざけんな。」

「最悪すぎ。通い放題にしたのに親会社変わったからプラン引き継がれませんって何?なら返金してって言ったら、施術分は終わってるから返金されません、受けたいなら別料金払えとかおかしいやろ いやいや。通い放題にした分、お金払ってますけど?」

「本当に酷すぎる。解約したけど返金は半年たっても来ないし、連絡も何もない。コールセンターは全て自動音声対応だったし、何も質問できない。1年くらい前に店舗で解約の相談したら、返戻金がいくらになるかは案内してくれたけど、返金がいつになるかはわからないと。」

一体、このサロンに何があったのか。取材班は、2週間ほど前にりえさんと同じ店舗でサービスを受けたというかおりさん(仮名・20代)に話を聞いた。彼女も「無制限の全身脱毛プラン」を契約し、これが6回目のサービスだったというが…。

かおりさん(仮名・20代):
施術中にも関わらず、突然「これでサービスを終了します」と言われたんですよね

無制限プランにも関わらず施術中に、突然告げられたサービスの終了。かおりさんは店のスタッフに詳しい説明を求めた。そのときのやりとりの音声が残されている。

◆店スタッフやりとり(録音音声)

スタッフ:
もともとは、○○(A社)という会社が脱毛サロンを運営していまして。ただ経営難に陥ってしまいましたので、いまはその時に金銭面で援助してくれていました○○(B社)が、全28店舗運営している

かおりさん:
店舗数を縮小したんですね?

スタッフ:
さようでございます

店のスタッフによるとA社は全国で60店ほど運営していたが経営難に陥り、2022年10月から別会社のB社に事業の一部を譲渡。人手不足などから店舗数を半分に縮小し、現在、B社が28店舗を運営しているという。

またA社と結んでいた契約は2023年3月で一方的に期限切れとなり、サービスを継続する場合はB社と新たな契約を結ぶ必要があると話した。

店のスタッフ(録音音声):
「特別プラン」というのがこちらでございます。数多く通っていただいている方は、無制限のプランでしたら、本来44万かかるんですが、1回当たりの施術単価を通常なら2万4,000円ほどかかるが、1万2,000円ほど下げて28万円ほどとお安くなっています

かおりさん(仮名・20代):
「メニュー表」みたいな優遇プランの紙を出されて「これは今月中まで決めてください」と突然、言われたんですよね。「いや、何言ってるんですか?」って。こちら側としては、もう腑(ふ)に落ちなかったですね

◆店スタッフやりとり(録音音声)

かおりさん:
前の会社と結んだ契約を解除すれば、お金は返ってくる?

スタッフ:
A社が倒産していないために100%返ってこないとは言いきれない状態ですが、やはり「もう1年半以上返ってきていない」というふうにツイートされているお客さまが大半でして「返ってきた」というツイートをされている方が、最近、全く見当たらないので、正直なところ、A社は営業も行っていないので、返ってこない可能性の方が高いのではないかなと思います

さらに…。

店のスタッフ(録音音声):
おそらく法的には、倒産していた場合に(返金しなくても)何も問題がないようなかたちになるので、そこは私どももしっかり詳しいわけではないので、もしあれでしたら、お近くの弁護士さんとかにご相談いただくのが、やはり一番確実ではあるんですけれども

かおりさん(仮名・20代):
「40万」って高い買い物じゃないですか。そんな自分への投資で買ったのに、やっぱり裏切られて「何してくれているの?」という気持ちですね

取材班は、事実を確認するため店舗に電話をかけたが…。

「おかけになった番号は現在サービスしておりません」

自動音声が流れるだけで店の電話はつながらない。

福岡市の店舗の実態は

取材班は、福岡市中央区の店舗を直接、訪ねることにした。

楢崎春奈記者レポ:
こちらの雑居ビルに店がありました

入り口の看板には、記者がかけてもつながらなかった、あの電話番号が記されていた。果たして営業はしているのか?

記者:
突然のお伺い、すみません

スタッフ:
はい

記者:
新しい事業体になってからの契約等の関係で、話を伺わせていただければ

スタッフ:
今、上のものが福岡にいないんですよね。出張で他の県に行っていて

記者:
看板にも出ている番号にかけたんですが…

スタッフ:
会社が変わって、前の会社の方の電話番号は通じなくて…、多分、まだ看板が変わっていなくて…

記者:
きょう営業はしている?

スタッフ:
はい

記者:
施術中に「きょうまでですよ」と言われて、新しい契約の説明があった、皆さん同じように案内している?

スタッフ:
そうです

記者:
新しい会社から、そういう施術中に案内しろというマニュアルみたいなのが来ている?

スタッフ:
そうですね。上のものに確認しても大丈夫ですか

記者:
もちろんです

改めて店長に取材を申し込み、連絡先を伝えたが、返事が来ることはなかった。

専門家が語る問題点

取材班は、消費者問題に詳しい専門家にBさんがA社と交わした契約書を見てもらった。解約した人たちの元にお金は返ってくるのか。

福岡県弁護士会消費者委員会・吉野泉弁護士:
精算して、残りのお金があれば、それは返さなければいけないという法律になっています。ただ、実際問題、業者さんがお金を現実に用意して個々の消費者の方に返金をするという作業が必要になってくるわけです。なので何かしら言い逃れをして先延ばしにするということがあるとなかなか消費者としては中途解約したものの、現実に返金が受けられないというトラブルはあるかと思います

さらに、吉野弁護士は施術中に契約の話を持ち出す行為にも問題があると話す。

福岡県弁護士会消費者委員会・吉野泉弁護士:
特定商取引に関する法律の中で、「いまある契約の解約を妨げるため、あるいは、その新しい契約を関与するために消費者を困惑させてはならない」というルールがあります。施術を受けている最中にそういう関与をされると非常に断りづらいと思うんですね。やはり施術者の機嫌を損ねるとどんな施術をされるか分からないというところもありますし、裸、まではなくても肌をさらしているような状態にあるので、やはりどうしても何か言われたことを断りにくいという心理状態にあると思います。そこからいうと行政の指導の対象であったりとか、場合によっては刑事罰の対象になり得る行為かなというふうにも思います

運営会社の移転先は

取材班は、A社に返金の意志についても確認しようと電話やメールで取材を依頼したが、返答は得られなかった。

そこで、A社のホームページに記載している住所を訪れた。東京・渋谷区の繁華街にもほど近いエリアに住所は記載されていた。ビルの中に入ってみると…。

楢崎春奈記者:
運営会社は入っていませんでした

ホームページに記載した住所に会社がない。その後の関係者などへの取材から、A社が2023年3月に移転していたことが分かり、その新たな本社を目指すことにした。

楢崎春奈記者:
こちらがその住所なんですが…レンタルオフィスになっていますね

A社が移転した先の住所、それはなんとレンタルオフィスだったのだ。

記者:
こちらに○○(A社)入ってる?

受付:
いらっしゃいます。バーチャルオフィス、いわゆる住所が利用できるプラン

記者:
本日は?

受付:
いらっしゃってない

A社が入居していることは確認できたが、平日の日中にもかかわらず誰も出社してはおらず、結局、会社の関係者とは接触できなかった。

脱毛サロンを巡るトラブルの数々。実態はどうなっているのか。返金に応じるつもりは本当にあるのか。自己責任という声もあるとはいえ、泣き寝入りしなければならない利用者を少しでも救済できる制度が整えられるべきではないか。A社には一刻も早い誠意ある対応が求められている。

(テレビ西日本)

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