2023年3月、新型コロナウイルス禍で中止していた国際クルーズ船の受け入れが、約3年ぶりに全国的に再開された。長崎にもその姿が戻り始めて1カ月。クルーズ船受け入れ再開に観光地・長崎の期待も高まる一方で、専門家は「オーバーツーリズム」への注意も呼び掛けている。

約3年ぶり クルーズ船が再開

2023年4月18日、澄んだ青空に映える真っ白な船体が長崎港に姿を現した。

テレビ長崎・本田舞アナウンサー:
長崎港にきょう入っているのは「ノーチカ」です。この船、受け入れ再開初日に佐世保にやってきた船です

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国際クルーズ船の姿が長崎に戻り始めてはや1カ月。この日までに長崎港には、合わせて19隻、およそ1万8,000人の乗客が長崎を訪れた。

船が入港する日の午前6時半過ぎ、海の玄関口・長崎港松が枝国際ターミナル。船が入港する日、土産物を扱う業者は朝から大忙しだ。

鹿児島経由で4月17日長崎に入港したのはドイツに拠点を置く船会社が運航する「マイン・シフ5」。乗客は約2,000人で、ほとんどがドイツ人だ。

ドイツからの乗客:
サムライキャッスル(島原城)に行く

ドイツからの乗客:
日本に来た主な目的は、第二次世界大戦から今日まで何が起きて、どう変化したのか見たかったから

寄港地での過ごし方は人それぞれで、バスツアーは日本の歴史や文化に触れたいクルーズ客に人気だ。乗客は約20台のバスに分かれ原爆資料館や唐寺、島原城などへ向かった。船から下りてきたのは乗客だけではない。自転車とともに降りてきた乗客の目的は…。

ドイツからの乗客:
美術館はもちろん、橋を渡ったり、4~5時間かけて長崎を走る。33km走る

船でレンタルした電動アシスト自転車で、長崎の坂道も心配なし!ドイツ人はスポーツ好きが多いそうで、景色を楽しむサイクリングツアーにも多くの人が参加していた。

乗客:
路面電車で行ける?

ボランティアスタッフ:
はい。何系統かありまして

乗客:
グリーンに乗ればいい?

ボランティアスタッフ:
はい。5番に乗る

長崎市中心部を走る路面電車の1日乗車券を購入して市内観光を楽しむ人も多く、案内所には客が次々と訪れる。対応しているのはボランティアスタッフ。英語とドイツ語の地図を準備し、乗り換える場所などを案内したり、おすすめのスポットを紹介したりしていた。

ボランティア・山口謙一郎さん:
うれしい。このために英語を勉強した。でも、コロナで全然チャンスがなかった。(ボランティアは)きょうで5回目

国際クルーズ船の再開に経済効果期待

2020年2月、ダイヤモンド・プリンセスで新型コロナウイルスの大規模なクラスターが発生し、世界中でクルーズツアーが取りやめとなった。

感染拡大前の長崎には、中国からの船を中心に年間260隻以上が寄港し、経済効果は1隻あたり6,000万円とも言われていたが、この3年間ぱたりと途絶え、観光地は大きな痛手を負った。現在、長崎県は感染症対策が十分と確認できた船のみ受け入れている。

徐々にクルーズ客が戻り、土産物店の人たちは経済回復につながることを期待している。

出店業者:
べっ甲のかんざしが売れた

ドイツからの乗客:
お土産を買った。猫の柄がついた箸。食事のたびに長崎の旅を思い出す

長崎港から近い長崎市の商店街も、3年ぶりのクルーズ船の“来崎”に期待を寄せている。

Jewelry OKATIMACHI・井川圭太店長:
3年間ずっとなかった。店もコロナ以降、さほど回復していない。(クルーズ船を)心待ちにしていた。うれしかった

長崎市万屋町にある「Jewelry OKATIMACHI」の井川圭太店長(62)。船の入港日にはターミナルに出店し、真珠のネックレスやピアスなどを販売している。

Jewelry OKATIMACHI・井川圭太店長:
ピンクが入るとチェリーブロッサム!サクラ!と言って買っていく。西洋の船がたくさん入ってきてもっとにぎわえば、もうちょっと売れるかなと思って期待している

「オーバーツーリズム」に注意

今後のクルーズ需要の拡大を見据えた動きも進んでいる。長崎県は5年後の2028年度までに、16万トンを超える大型船が松が枝埠頭(ふとう)に2隻同時に接岸できるように整備する方針だ。

埋め立てや岸壁などの整備にかかる総事業費は、172億円で、用地の確保などを進めている。長崎県は2隻同時に入港できるようになれば、1日あたり最大約1万1,200人の“来崎”を試算している。

長崎大学経済学部の山口純哉准教授は経済効果に期待する一方、“オーバーツーリズム”に注意を払うように促す。

長崎大学経済学部・山口純哉准教授:
多くの客が入ってきても、長崎市内や長崎県内で客にちゃんとサービスができないと、経済効果は地域に浸透しない。できるだけ質を上げて、客単価を上げていく工夫をしていくことが市民生活との両立という意味では必要なのではないか。

2023年5月以降も、豪華客船クイーン・エリザベスなどが長崎へのツアーを計画している。再び海外との交流でにぎわうまちへ。長崎も、アフターコロナの新たなステージに進み始めている。

(テレビ長崎)

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