ドイツの大工職人には、腕を磨くために世界を旅する風習が、800年前からある。技と心を鍛える“旅する職人”たちが長崎で学んだものとは。
マイスター目指し来日 20代の“旅職人”
長崎・諫早市にある事務所の建設現場では、珍しい服装を身にまとった2人組がいる。ドイツ人のルーカス・シュトラッサーさん(28)とヨルゲ・プリース(21)さんだ。
![ルーカスさん(左)とヨルゲさん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/9/700mw/img_f9b8ef93af0e5775c3785b049aeeec63488870.jpg)
ヨルゲ・プリースさん:
今は(新築の)屋根部分の作業をしています
ーー日本に来た理由は?
ヨルゲ・プリースさん:
日本の大工がどのような仕事をするのか知りたかったし、日本の文化にも興味があった
ルーカス・シュトラッサーさん:
ドイツの作業も丁寧だが、日本はもっと丁寧。ミリ単位の仕事をきっちりするのがすごい
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2023年3月16日から諫早市内の建設会社で働いている2人は、「ヴァルツ」という「修業」のために来日した。「ヴァルツ」では、3年と1日という決められた期間に世界各地の建設現場で働き、職人としての「腕」と「心」を鍛えて、日本の「親方」にあたる「マイスター」を目指す。
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800年以上前の中世ドイツから続く伝統的な風習で、ユネスコの無形文化遺産にも選ばれている。ヴァルツ中の職人は「旅職人」と呼ばれ、今も世界では600人ほどが活動している。
伝統の衣装で世界巡り修業
2人が身に着けているのは、「クルフト」という旅職人の正装。
![ネクタイとボタンには意味が込められている](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/a/700mw/img_2aa4f5d612469290c57ea2b3d7214a4f469470.jpg)
まっすぐなネクタイは「実直」、ベストにある8つのボタンは「8時間の労働時間」を表していて、旅職人は常にこの服装で過ごす。ほかにも「スマートフォンを持ってはいけない」などの決まりがある。
![各地のスタンプで埋まった手帳](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/8/700mw/img_c8c5e622fc5946d7e0c3331e1af415b5476080.jpg)
旅職人が持つ手帳には、たくさんのメッセージや各地のスタンプなどの思い出が詰まっている。ルーカスさんはこれまで、フランス・パリや、アフリカ・ナミビアなどを旅してきた。
![ルーカスさんがスイスで馬小屋を造った時の写真](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/700mw/img_2d15940795f577c24bd6d03917da46cd864574.jpg)
ルーカス・シュトラッサーさん:
特に思い出に残っているのはスイスで馬小屋を造ったこと。3年間は決して長い時間じゃない。旅職人は人間的にも技術的にも成長できるいい経験
言葉の壁は日本語とドイツ語の翻訳機で問題なし。
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石橋工務店・中村太輔棟りょう:
(取材で)何を聞かれましたか?
ドイツ語に翻訳された棟りょうの言葉を聞いて――。
![言葉の壁もテクノロジーが解決](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/700mw/img_691e31d9df48b499d2415b97dcef8322451624.jpg)
ルーカス・シュトラッサーさん:
あなたは隣にいましたよ?
石橋工務店・中村太輔棟りょう:
Rain!(雨で聞こえなかった!)
![社員たちとの交流も](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/c/700mw/img_3c989c312a30b0c674cc5e4c69400363438555.jpg)
2人が学んでいる諫早市の石橋工務店は、3年前に初めて旅職人を受け入れていて、今回が2度目。旅職人との交流は、社員の刺激にもなっているそうだ。
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石橋工務店・石橋光成代表取締役:
今だったら携帯やタブレット(を持つことが)当たり前だが、(旅職人は)持っていったらダメということで、800年前からの伝統を守っているのが驚き。近い年代の大工やスタッフが、厳しい制度を守って行動する2人を見て、彼らと比べたら甘いのではと、感情が揺さぶられたらいいなと思う
学びと思い出を胸に次の目的地へ
この日の昼食は、棟りょうの母親が作ったおにぎりなどが入ったお弁当。
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ルーカス・シュトラッサーさん:
ドイツではパンが主食だから米はほとんど食べたことがなかった。おいしい
ーー日本食で一番おいしかったものは?
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ヨルゲ・プリースさん:
一番おいしかったのは…あれなんだっけ?ベントゥーラ?(ルーカスさんの助言を聞いて)テンプラ。名前が出てこなかったけどすごくおしかった
石橋工務店・中村太輔棟りょう:
(ルーカスさんが)以前、家に来たときに梅干を食べさせたら「あまり好きじゃない」と言っていたけど、(今日は)おにぎりの中に入っていると言ったら大丈夫だと言っていた
![長崎市内の平和公園を訪れた2人](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/f/700mw/img_1f1cfd88dc87a5becafdaf91b07f60c8490162.jpg)
休日の観光や、各地の文化に触れることも旅職人の醍醐味だ。思い出と、身に付けた技術と共に4月中旬には長崎を離れる。
ヨルゲ・プリースさん:
(日本では)確実に丁寧にやることを学んでいる。あと1、2年修業を続けて、いずれ自分の会社が持てたら
ルーカス・シュトラッサーさん:
今の旅職人としての仕事にすごく満足している。これからも元気なうちは世界を巡る旅職人を続けたい
![マイスターを目指す20代の2人](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/1/700mw/img_1149aaab4349b3bcedeac1b43987617d442600.jpg)
ドイツの伝統を守るため、「マイスター」を目指す2人の旅はこれからも続く。
(テレビ長崎)