4月11日に告示された衆・参、5つの補欠選挙。与野党双方が岸田政権の「中間評価」と位置づけ、選挙結果は今後の政権運営にも影響を与えるとみられている。中でも永田町が注目しているのが、2022年7月に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の地元、山口4区だ。

山口4区に5人が立候補

下関市と長門市をエリアとする山口4区では、無所属の新人2人に立憲民主党、自民党、政治家女子のそれぞれ新人合わせて5人が立候補している。

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立憲民主党・有田芳生さん(71):
「統一教会」が自民党の政治家たちに近づいていくのは、日本の政治をゆがめることに目的があった。今度の選挙戦を通じて、皆さんと共に変えていこうではありませんか

自民党・吉田真次さん(38):
この補欠選挙は、志半ばで命を絶たれてしまった安倍晋三先生の無念さを思って、その御遺志を、そして魂を皆で継いで、皆がその気持ちになってこの選挙を戦っていくんだ

政治家女子48党・渡部亜衣さん(37):
気軽にもっと身近に政治を感じてもらえるように、これからもっとどんどん勉強していきます。私のことは嫌いでも政治家女子48党のことは嫌いにならないでください

立憲民主党から立候補しているのが、旧統一教会問題などを追及してきたジャーナリストで元参議院議員の有田芳生氏だ。出陣式には党本部から岡田克也・幹事長が駆け付け「有権者の良識が問われている選挙だ」と支援者らを鼓舞した。

強固な保守の地盤で街頭に立ち続け、有権者に対し地道に支援を訴える有田氏にその手応えを聞くと――。

立憲民主党・有田芳生さん(71):
有権者の皆さんも「新しい選択をしていいのかな」と言う声が広がりつつあるなと実感しています。どう判断されるのかっていうのは、ひとつの注目点かなと思いますけどね

「安倍の地盤を守る」

そして、安倍元首相の「後継」として選挙に臨むのが、元下関市の市議会議員・吉田真次氏。安倍元首相にとって悲願だった憲法改正や地方創生などを訴えている。

自民党・吉田真次さん(38):
安倍晋三先生が私たちに残してくださったもの。それを何とか皆さま方と一緒に意志を継承していきたい。その同じ気持ちを持った皆さまと一緒になって戦う補欠選挙である

市議会議員が、憲政史上最も長く首相の座についた「安倍晋三」という議員の後継者になった理由、そこには元総理の妻・昭恵夫人の存在があった。
選挙戦2日目、下関市で行われた個人演説会。昭恵夫人は、開会の30分以上前に会場に姿を現した。

テレビ西日本・楢崎春奈記者:
下関市内の個人演説会の会場に来ています。昭恵夫人は、会場内の支援者を回りながら声をかけています。時折、笑顔を見せながら支援者と交流しているようです

夫の非業の死を悲しむ間もなく迫られた後継者問題。「安倍家」の地盤を守るため、当初は昭恵夫人が後継者となる案も浮上したが、本人は早々に立候補しない考えを示し、2023年12月には、夫人自身の手で事務所の看板を下ろしていた。

安倍昭恵さん:
私も一生懸命、皆さんにお願いをして回っているところです。1人でも多くの方にお声をかけて頂き、圧倒的な勝利で、どうか国政の場に送っていただければと思います

「安倍の地盤を守る」…昭恵夫人の強い思いの裏には、次の衆院選で安倍元首相の地元である山口4区が消滅することへの危機感がある。次の衆議院選挙は「10増10減」で、山口では定数が1議席減らされるのだ。

元自民党副総裁が語る“対立の時代”

新たな選挙区では、先の衆院選で参議院からくら替えし、岸田首相の側近で次の首相候補との声もある林芳正・外相がいる。

安倍家と林家。対立の歴史は、安倍元首相の父・晋太郎氏と、林大臣の父・義郎氏の時代にまでさかのぼる。下関市を主要地盤とする晋太郎氏と義郎氏は30年近く、同じ選挙区で激しい戦いを繰り広げてきたのだ。
対立の時代を知る山崎拓・元自民党副総裁は――。

元自民党副総裁・山崎拓さん:
安倍家、林家、両家とも名門であり、「両雄並び立たず」で激しい争いをやっていた。両社とも大物だったので、全国でも屈指の重鎮同士が争う選挙区となっていた

結局、選挙制度が変わり、1996年に義郎氏が比例に回ったことで、表向きは「終戦」。しかし、世代が変わっても両家のつばぜり合いが続いていた。
安倍元首相の突然の死は、「保守王国」山口に何をもたらすのか?

――「安倍」の名前がなくなるが

元自民党副総裁・山崎拓さん:
もう、今度の補欠選挙で名前はなくなってるわけですよ。「安倍」という名前はなくなっている。世の習いでしょ、仕方がない。現世にいるものと、この世にいないものとの差が出ますよ、当然、出ますよ

――時代が変わっている?

元自民党副総裁・山崎拓さん:
時代が変わるんじゃなくて、実態が変わっているということ。要するに安倍さんには後継者がいない。「安倍姓」を名乗る後継者がいないというだけのこと

――安倍・林、両家への山崎さんの思いは?

元自民党副総裁・山崎拓さん:
僕は、安倍さんがいた「清和会」でも、林さんが属していた「経世会」でもなかったので、それぞれに関してどうということはない。大きく言えば「長州」。それは林芳正外相が引き継いでいくことになる。良しあしは別にして、林芳正外相が「長州」を引き継ぐということ

「現世にいるものと、この世にいないものとの差」。そして「安倍家」の名は消える――。昭恵夫人は安倍元首相の考えに近い人物を国政に送り出すことで、安倍家の存在を示し続けたいとの思いがあるのでは、と山崎さんは語る。

新たな時代の幕開けとなるのか、再燃した「下関戦争」で、保守王国の内部は大きく揺れている。

(テレビ西日本)

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