長野県高山村に保育士の女性が自宅を改築して開いた保育園がある。周囲の里山も、いわば園庭。園児たちは、のびのびと過ごしている。「自然の中で一人ひとりの個性を育む」、女性が追い求める理想の保育を取材した。
自宅を改装 温かくて優しい保育園

一見、普通の住宅のようだが、実は保育園。高山村の「なないろのにわ のの花ほいくえん」だ。
園長は安西美由紀さん(40)。お隣・須坂市出身で市内の公立保育園で19年、保育士として働き、2022年、高山村に移住。購入した自宅の1階を改築し、2022年9月、この保育園をスタートさせた。

のの花ほいくえん 園長・安西美由紀さん:
自然の中になかなか子どもを連れ出せないという保育現場を見たときに、自然豊かな高山村で、温かくて優しい“愛と調和”の保育園をつくりたいという思いだけでつくった

「のの花ほいくえん」は、国の基準には満たない認可外保育園だ。
現在、高山村、須坂市の1歳から5歳までの11人を受け入れていて、一時預かりもしている。
自然の中で個性、好奇心 表情キラキラ

この日の午前中はお散歩に出かけた。
自然体験が保育の柱。周囲の里山もいわば「園庭」の一部だ。
30分ほど歩いて到着したのは「黒部のエドヒガン桜」。ちょうど満開で、みんなでお花見をした。

満開の桜の下でお花摘みをする子もいれば、駆け回る子も。
スタッフが危険がないか見守りながら、基本的に自由に遊ばせている。

「自然の中で一人ひとりの個性を育む」、安西さんが目指す「理想の保育」だ。
のの花ほいくえん 園長・安西美由紀さん:
好奇心とか意欲とか全部育ちますし、自然が子どもたちに教えてくれるというか。自分で判断する力も育ってきますし、自然の中に行くと子どもの表情がキラキラして、この顔を毎日見ていたい
心強い「相棒」

安西さんには心強い「相棒」がいる。同じ保育園に勤務していた目黒唯さん(31)だ。
以前から少人数の保育に取り組みたいと考えていた2人。コロナ禍でスキンシップや行事が制限される中、自然保育を柱にした「自分たちの園をつくろう」と思い立つ。

物件を探して2022年3月、そろって退職。県から200万円の補助を得て、二人三脚で「開園」にこぎつけた。
のの花ほいくえん 副園長・目黒唯さん:
ちゃんと自分が食べていけるのかというのも不安はあったし、いろいろな葛藤はあったが、尊敬する先輩に「一緒に保育園つくろう」なんて言われることないじゃないですか。やっぱりうれしかったし、自分も新しいことに挑戦してみようという気持ちで踏み切った
手作りのおやつ

お散歩から帰ったらお昼ごはん。
一軒家を改築したとあって家庭にいるような雰囲気だ。畳敷きの和室はお昼寝のスペースに。疲れたのか、みんなすぐに眠っていた。

その間に安西さんたちは、隣のキッチンでおやつ作り。
この日のおやつは、前の日にみんなで摘んだツクシのつくだ煮。

近くの農家からもらったニラとホウレンソウでみそ汁もつくった。ちなみに、みそは安西さんの手づくりだ。
おやつの味はー。
園児:
おいしい!

企業主導型保育施設の増加に加え保育ニーズの多様化で、県内の認可外保育園は2018年の158施設から2022年は232施設に増えている。
保護者「選んでよかった」「家族みたい」

「のの花ほいくえん」を選んだ保護者はー。
保護者:
表情も変わるし、自分の思いも伝えられるようになったし、よかったです。自分自身が公立(保育園)の中でしか生きてきてないから、最初は心配もしたけど選んでよかったと本当に思います

保護者(きょうだいで入園):
(以前の保育園で)年少時代に教わっていて、娘の希望でどうしても、のの花ほいくえんに来たいってことで来たが、娘の心がすごく満たされているのがわかって、美由紀先生の保育を私はすごく尊敬しているので、娘が選んでくれたことがうれしかった
保護者:
唯ちゃんも美由紀ちゃんもみんな“のの花ファミリー”と、みんな家族と言ってくれてて(保護者も)みんなお互いの子どもの成長も喜ぶ感じで、家族みたいな感じになっています。他にはこんな保育園はないと思います

3月の卒園式のあと開かれたサプライズパーティー。保護者たちが2人に感謝を伝えたいと開いた。
のの花ほいくえん 園長・安西美由紀さん:
「唯ちゃん、美由紀ちゃん保育園つくってくれてありがとう」とみんなで手を振って待ってくれていて、唯ちゃんも私も号泣っていうか、なんて恵まれてるんでしょうか、という幸せな時間でした
未来が輝くように

自然豊かな場所で個性を育む。
安西さんは、ここから巣立っていく子どもたちの成長を楽しみにしている。

のの花ほいくえん 園長・安西美由紀さん:
ここで育った子たちが世の中に出ていったときに、たくさんの人にどんな幸せを与えられる人になるのかというのが楽しみです。子どもたちの未来が幸せで輝くような保育園になっていけるように、ここを毎日育んでいきたいなと思っています
(長野放送)