ライフスタイルや食生活の変化で、ご飯を炊くのは1合で十分という人もいるだろう。
そんな人のために、まるでポットのような形の1合炊き炊飯器が登場する。
そんな「小型IH炊飯器」を今年6月に発売するのは大阪市にあるエレコム株式会社だ。
エレコムといえばパソコンの周辺機器やIT関連機器メーカーとしてご存じの人も多いだろうが、実は2022年1月から白物家電のジャンルに参入し、LiFERE(リフィーレ)という調理家電シリーズを展開している。
同社によると、従来の炊飯器は購入の際に次のような3つの悩みがあるという。
1,炊飯器が欲しくても、置く場所がない
2,炊き立てを食べたいけど、量は1合でじゅうぶん
3,どうせ買うなら、美味しく炊けるものがほしいけれど、ぴったりなものがない
これらの悩みを解消したのが「小型IH炊飯器」だそう。
まず縦型コンパクトタイプなので、狭いテーブルやデスクの上でも使いやすく、2台目としての利用にも適しているという。サイズは幅169x奥行127x高さ228mmで約1.3kg。
操作部がハンドル形状のため、持ち上げやすいのも特長としている。
また、一般的な3合炊き炊飯器でも1合だけ炊くことは可能だが、水が少なくなることで加熱にムラが出やすくなるという。「小型IH炊飯器」は少量に適したサイズの釜を使い、0.5~1合の炊飯に対応している。
さらに、美味しい1合炊きのためにIHと専用の厚釜を採用。付属のザル釜を使えば糖質を約20%抑制した低糖質炊飯もできるという。
3合炊き炊飯器があっても実際炊くのは1~2合だった
それにしても、なぜポットのようなデザインを採用したのだろうか?取手を横に付けたことでどんなメリットがあるのか?
エレコムで「小型IH炊飯器」を開発した担当者に聞いた。
――この炊飯器は、どんな経緯で開発された?
炊飯器市場はすでに高機能な炊飯器がたくさんあるので、おひとり様を想定した小型のものを考えようと思いました。その中でも調査を進めるにつれ、「美味しいご飯を食べたいのでIH式の炊飯器を持っている」「でもコンパクトなものは3合炊きしかない」「実際炊くのは1合程度」というお声を多数耳にしたのがきっかけです。
実際、開発者である私自身も3合炊き炊飯器を持っていながらも炊くときは1~2合程度で、無意識に感じていた「ちぐはぐさ」にあらためて気づかされた面もあります。
――どんなユーザーを想定している?
設置スペースを取らない食べ切りサイズの為、炊飯器を買わずにいた一人暮らしの方を想定しています。都度炊き立てをお召し上がりいただくイメージですが、ファミリー世帯で炊き分けをする為の2台目として、在宅ワークの傍らでの炊飯など、小回りの利く使い方ができると思います。
また日ごろ使用頻度が低めな方でも、今日はご飯を食べたい気分だな、というときに食器棚から出して使っていただく、というような使い方もしていただけると思います。
――当初からポットのようなデザインだった?
はい。美味しく炊くために必要な釜の形状と、コンパクトさを最大限生かす設計を考えると、自然と現在の筒形のような形に近づき「ポットみたいな形だね」という話になり、フタや取っ手の形状が紐づいてこのデザインが生まれました。
――取手が横にあるメリットは?
ポットや食器のように自然と手を伸ばして持ち上げられること、目線より高い場所に収納しても取り出しやすいことを考えて横にしました。バケツのような取手ですと、デザイン的に横に広がるだけでなく、食事をする空間では取り回しがしにくい形状です。そこでポットのように横につけることで、本体のスリムさが際立つだけでなく、移動しやすく持ちやすいというメリットも生まれました。
――技術的に難しかった部分は?
一番技術的に難しかったのは深型の釜です。
金属板を押し伸ばして作る製法(プレス成型)では厚みのある素材で深い形を作ろうとする(深絞り)と破損するリスクが生じます。 成形のしやすさ、IHでの加熱性能、フッ素塗装による使いやすさ、熱伝導性、釜の厚みからくる蓄熱性など、何度も試作を繰り返しており、見た目以上に苦労しています。
加熱部分については、2022年にエレコムが初めて発売した調理家電「HOT DISH」で得たIHの基盤と冷却ファンの効率的な配置のノウハウが活きました。
高級炊飯器にも負けない気持ちで開発しています!
――「小型IH炊飯器」は従来の炊飯器と比べてどこが便利?
1合炊き専用のIH式なので、少量でもご飯がしっかり美味しく炊けることはもちろん、縦型のコンパクトサイズで置く場所に困らずお使いいただけます。また、1合専用の食べきりサイズで、食べる時に食べる分だけ炊飯できます。
その他にも、家族とは別に玄米を食べたいとき、少しだけ贅沢に炊き込みご飯を食べたいときなど、1合だけの贅沢なレシピに最適です。
――1合なら高級炊飯器にも負けない美味しいご飯が炊ける?
負けない気持ちで開発しています!ぜひ実際に炊いてみて、1合炊きを味わっていただきたいです。ちなみに、おすすめのお米の銘柄は「ゆめぴりか」です!
――エレコムといえば「コンピュータ周辺機器メーカー」のイメージがあるが、調理家電はどんな特徴がある?
「周辺機器メーカー」と表現していただいたように、調理家電も周辺機器だと思っています。
コンピュータの周辺機器といった物理的なものではなく、「食のシーン」の周辺にある機器です。
食のシーンを楽しんでいただくため、色んな場面で使っていただける小回りの良さが弊社の調理家電の特長です。
炊飯器も毎食の食べ切りだけでなく、使い道に困った蟹缶を丸ごと使って1合だけだからチャレンジできる贅沢な炊き込みご飯を作ってみたり、家族の中で白米と雑穀米を炊き分けたりといった様々なシーンに合わせてお使いいただくことができます。
確かに炊飯器がテーブルの上に置ければご飯をよそうのも便利だろう。
大は小を兼ねると、大きめを買う人も多いだろうが、必要最小限の炊飯器というのもニーズがあるかもしれない。