島根県東部、JR木次線を走る観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」。車両の老朽化などに伴い、JR西日本は今シーズン限りで運行を終了することを決めている。ラストランへ向け、4月1日から今シーズンの運行が始まった。

「“懸け橋“のような列車」

島根県東部を走るJR木次線。1日の運行本数も少なく、収支も厳しいローカル路線だ。中国山地の急勾配を登るため備えられた「三段式スイッチバック」は国内では貴重で、鉄道ファンの間ではよく知られている。

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この木次線を走る観光トロッコ列車が「奥出雲おろち号」。車両の老朽化などに伴い、JR西日本は、今シーズン限りで運行を終了することを決めている。運行終了は11月。ラストランへ、沿線住民や鉄道ファンなど様々な人の思いを乗せて、2023年も走り始めた。

4月1日、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が、JR出雲市駅に姿を現した。ラストイヤーの運行初日、64ある座席は完売、多くの乗客が乗り込んだ。

広島県からの乗客:
来年からはこれがなくなるかと思うと切ない。しっかり車窓からの景色を目に焼きつけて帰りたい

静岡県からの乗客:
最後の11月も乗れたら乗りたい。今年で終了するのが残念。ローカル線の魅力が楽しみ

「奥出雲おろち号」は観光客だけでなく、沿線地域の住民にとっても大切な列車だ。

沿線に住む男の子:
おろち号の写真を撮りに来ました。雲南の人たちの“懸け橋“のような列車。駅とかでいろんな人が出迎えているから

沿線からも熱い視線が

午前9時前。出雲市駅のホームでは「おろち号」のデビュー当初から列車を見守ってきた駅長の島さんが出発の合図をした。

JR出雲市駅・島充駅長:
感無量。おろち号ができた当初から知っているが、これまでのいろんな思い出も頭をよぎった

多くの思い乗せて走りだした「おろち号」。ラストイヤーの運行初日を盛り上げようと、停車駅のひとつ雲南市の木次駅では、1日駅長・柴犬の「茜」がお出迎えした。駅長コスチュームのあまりのかわいさに車内からパシャリ。「おろち号」に負けない人気だ。

駅長らしく、安全を確認しながら「おろち号」の出発を見守った。

再び走りだした「おろち号」には、沿線からも熱い視線が送られた。

広島から来た鉄道ファン:
めちゃくちゃ寂しいです。自分にとっていい1枚を残したいという気持ちだけです

見頃を迎えた桜と一緒にファインダーに収めようと、多くの鉄道ファンがカメラを構えていた。

JR西日本の管内で最も標高が高い三井野原駅に向かう「おろち号」。木次線のビュースポットにもなっている道の駅からは、熱烈な歓迎を受けた。

広島・尾道からの観光客:
トロッコは廃止になるけど、木次線自体はこれからもずっと走ってもらいたいという気持ちで旗を振った

赤字が続き、廃止も危ぶまれる木次線そのものも応援したいという思いを込めた。

「おろち号」“ラストイヤー特需”も

その一方で…。

道の駅 奥出雲おろちループ・藤原紘子駅長:
朝から並んでオリジナルグッズをご購入いただいて、とてもうれしい

バウムクーヘンやボールペンなどオリジナルの限定グッズを販売。「おろち号」の“ラストイヤー特需”に恵まれていた。「おろち号」関連商品だけで、この日は10万円以上の売り上げ。シーズンを通してこのにぎわいが続くことを願った。

沿線住民に観光客、そして、鉄道ファン。様々な人の思いを乗せて「奥出雲おろち号」、ラストイヤーの旅が始まった。「奥出雲おろち号」の運行は2023年11月まで。JR西日本は、例年よりも本数を増やして運行し、多くの人にラストイヤーを楽しんでもらうことにしている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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