コロナ禍で廃業の危機に陥った老舗酒蔵。町おこしの有志が事業を引き継ぎ、店舗やバーを備えた地域の憩いの場を目指してリニューアルする。

廃業寸前…老舗酒蔵が生まれ変わる

文本酒造・杜氏 石川博之さん:
こちらがバー「お酒やさん」

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矢野愛優記者:
すごい、きれい!

高知市から車で約50分、清流・四万十川の中流に位置する四万十町。窪川地区の商店街の一角にあるのが、2023年に創業120周年を迎える老舗酒蔵・文本酒造だ。文本酒造は5月1日、「fumimoto brewery」としてリニューアルオープンする。

矢野愛優記者:
紺色でそろえたバーは、落ち着いたおしゃれな雰囲気。天井の梁(はり)は創業当時のものがそのまま残されていて、レトロ感も楽しめます。お酒を飲むのが楽しみです

文本酒造は、看板商品の「桃太郎」をはじめ、数多くの日本酒を送り出してきた。しかし、コロナ禍で商品が売れなくなり、2020年3月に酒造りを停止。スタッフのほとんどが蔵を去り、廃業寸前だったところ、四万十町の町おこしに関わっていた高知市の阿部達也さん(52)が、事業の買い取りを申し込んだ。

文本酒造・阿部達也専務:
ただでさえ、にぎわいがなくなってきている中で、最後の老舗の蔵がなくなれば、ますます人通りもなくなって寂しい町になってしまうので、なんとか残せないかなと

再建の切り札として、茨城県で長年、杜氏をしていた石川博之さんをスカウトした。

文本酒造・杜氏 石川博之さん:
一から再スタートを切る、新規立ち上げにほぼ近いような形なので。そんな機会めったにないので、杜氏としてそこに携われるというのはすごく魅力的

「酒蔵というのはその町の文化」

2022年7月から10人体制の大規模な再建が始まった。木が生い茂っていた中庭をきれいに整備し、酒タンクや精米機などほぼ全ての機材を新たに導入した。

倉庫はスタッフ総出で張り替えや塗装を行い、県産品が購入できる「土産物コーナー」になった。

また、外壁をイメージカラーの濃紺に塗り替え、酒や軽食・スイーツなどが楽しめるバーを新設する。ほかにもWi-Fiやプリンターが自由に使えるフリースペースを整備し、地域の「憩いの場」を目指す。

3月21日には、3年ぶりに酒造りを再開し、販売に向け急ピッチで準備を開始。地元のブランド米「にこまる」を使った新日本酒ブランド“SHIMANTO”を立ち上げる。現在、純米大吟醸のみで、販売価格は未定となっている。

文本酒造・杜氏 石川博之さん:
酒蔵というのはその町の文化、歴史みたいなものだと思うんですよね。それをなくしてしまうのは本当にもったいない。おらが町の酒蔵、うちの町には文本酒造、「SHIMANTO」っていうお酒があるよって町外に言えるような、そんなお酒をつくりたい。頑張っていかないとと思います、次の世代に残すというか

四万十町の「fumimoto brewery」の店舗とバーは、5月1日にグランドオープン。店舗とバーは水曜から日曜・祝日の営業で、ゴールデンウィーク中は毎日オープンしている。
純米大吟醸「SHIMANTO」は、5月1日から予約の受付を開始するほか、店頭でも購入ができる。

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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