社会人の中には「副業」に興味がある人もいることだろう。最近は「副業」を認める企業も増えつつあるが、今年中に始めたいと思っている人が7割近くに上るという調査結果が公表された。

最も副業しているのは40代

これは、就職・転職・キャリアに関する調査機関の「Job総研」が「2023年 副業・兼業の実態調査」として3月6日に発表したもの。

調査対象は全国20~50代の社会人の男女336人で、このうち現在副業をしているのは22.6%。

年齢別で見ると、副業している割合が最も高いのは40代(31.7%)で、次いで50代(22.4%)、30代(20.7%)が続き、最も低かったのは20代(14.6%)だった。

(出典:Job総研)
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そして、現在副業をしている人に2018年〜22年で副業をしていた年を聞くと、毎年増加している傾向にあることが判明。18年と22年を比較すると実施率は2倍以上に増えている。

(出典:Job総研)
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副業の年収は平均20万円

では、副業でどれだけ収入を得ているのか?

まず本業の年収を聞くと、平均が600万円、中央値(データを大きい順に並べた中央)が631万円、最頻値(最も多く出現している値)が550万円だった。そして副業の年収は、平均20万円、中央値128.6万円、最頻値50万円という結果となった。

(出典:Job総研)
(出典:Job総研)

「Job総研」は副業の平均年収が20万円だったことについて、「月収換算すると1.6万円になっていることから、副業で収入を大きくアップさせるというより、プラスアルファとして小遣い程度の収入として捉えている」ことがわかるとしている。

「副業したい」も40代がトップ

副業について全員に、今後はどうするつもりなのか聞いたところ、「したいと思う(55.1%)」と「どちらかといえばしたいと思う(30.4%)」を合わせた、85.5%が、“したい派”だと分かった。

世代別に見ると、ここでも40代が最も積極的で、87.5%が“したい派”。続いて30代(86.2%)、50代(83.6%)が続き、20代(83.4%)が最低だった。

(出典:Job総研)
(出典:Job総研)

また、今年中に副業を始めようと思っているかを聞くと「始めようと思う(35.4%)」と「どちらかといえば始めようと思う(30.4%)」の合計”始めようと思う派”が65.8%だった。逆に今年中に“始めようと思わない派”は合わせて34.2%だった。

(出典:Job総研)
(出典:Job総研)

副業しない理由は「会社が禁止」

なお、現在「副業をしていない」と回答した260人にその理由を聞くと、最も多い答えは「会社から禁止されている(33.8%)」。続いて「本業が忙しくて時間がない(30.8%)」、「同時進行する自信がない(28.8%)」という答えが多かった。

今後「副業をしたい」と答えた287人にその理由を聞くと、トップは「収入を上げるため(70.4%)」で、次いで「小遣い稼ぎ(48.4%)」、「自身のスキル向上のため(42.5%)」が続いた。

(出典:Job総研)
(出典:Job総研)

副業に40代が積極的な理由

人によってはまだ副業できない様々な事情があるものの、「Job総研」は今後の副業を取り巻く環境について次のように予測している。

近年のコロナ禍によって働く場所を選ばないテレワークや移住ワークなど働き方の多様性が進み、副業を始めやすくなったことから、副業する人が増加しており、今後においてもさらに増加していることが予測できる調査結果になりました。

現在、副業をしている人も、今後したいと考えている人も40代が最多という結果だが、これにはなにか理由があるのだろうか?これからも増えるという「副業」にはメリットだけでなく、デメリットもあるのではないか?

Job総研室長であり、キャリアや転職に特化した匿名相談サービスを運営する株式会社ライボの広報グループ長でもある堀雅一さんに聞いた。


――なぜ40代は副業に積極的なの?

これには物価高騰による生活費の圧迫が大きく影響していることも考えられます。既婚者で家族を持つことによって、生活費は大きくなりますし、子供への教育費などもかかります。賃金が上がらない背景からも副業への興味が高くなって、現実的に始めていくといった流れになっていると考えられます。

また、40代はキャリアを重ねて特定のスキルを身につけた方が多い年代ともいえます。先に述べた経済的理由から副業を検討し、実際に現職以外で仕事にできるようなスキルを持っているということが、副業をすることを現実的に考えられやすい年代といったことも考えられます。


――副業の平均年収が「20万円」ということをどう思う?

これには物価高騰を背景に1世帯あたりの生活費が圧迫されていることが影響していると考えます。副業で月に数十万の収入を得るといった考えから、物価高騰での補填分として月に数万円程度の収入を見込める副業が主流になってきているように思います。

重ねてきたキャリアと高度なスキルを必要とする職種ではなく、低収入でも初心者が始めやすく、高度なスキルを必要としない副業から始めていく傾向が見られます。

副業が増加すると労働時間も増加する?

――副業が増加すると予測しているが、「副業をしない理由」は解消される?

徐々に解消されていくと予測しています。まずは「本業が忙しくて時間がない」という点です。働き方改革が進む中で、いわゆるブラック企業やパワハラ行為などが減少傾向にあることや、一企業で1人が抱える業務量を適切にしていく動きなども後押ししていくと思います。

次に「会社からの副業禁止」ですが、従業員が副業することを前向きに捉える企業は増加しています。企業が率先して従業員に副業をしてもらう「複業留学」といった制度をとっている企業も存在しています。これは個人のスキル向上が自社の財産と捉えることや、人材流出の防止の観点から広まってきています。

またコロナ禍で働き方が変わり、働くことへの価値観そのものが変化している昨今で、テレワークを導入した企業では副業を認める動きが特に早いようです。今後は会社からの副業禁止も減り副業を始めやすい環境になっていくことが予測できることから副業人口の増加につながると思います。


――副業が一般的になってくると、労働時間はどう変わる?

副業人口が増加することで、労働時間が増加することは明らかですが、副業人口が増加すると同時に副業案件の種類も増加していくので、単発案件や隙間時間を活用できるものが多くなってくると思います。副業をはじめることで労働時間は増加しますが、副業の種類も多様化していくことから極端に労働時間が増加しないと考えています。


――副業のメリット、デメリットとは?

副業を始めることで、本業とは別で収入を得ることになるので、経済面でのメリットは言うまでもありませんが、キャリアを築く上で、自身のスキル向上や経験を習得し、思わぬ形で社会に貢献できるといった発見があることもメリットの1つと言えます。また定年後のセカンドキャリアを考えやすくなる側面もあり、収入面以外でもメリットは多数あると思います。

一方デメリットとしては、一定以上の収入を得ることで確定申告が必要になる手間のことや、ワークライフバランスの維持が難しくなること、また本業へ支障が出る可能性や、心身の疲労管理にも目を向ける必要があります。さらに現状は副業を禁止している企業も多いことからトラブルの可能性などが挙げられます。

また最近では副業求人を装った詐欺も横行しているので、正しい情報取集をすることは大事になってきます。

(画像はイメージ)
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現在、副業していない人は77.4%だったが、今年中にはじめたい人が7割近くいることから、もしかしたら、来年は多くの人が副業をする社会になっているかもしれない。デメリットにも気をつけながら、興味がある人は自分にあった副業を見つけてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。