福岡・北九州市のスナックでウイスキーなど酒6本を盗んだとして従業員の男が逮捕された。取材を続けると、このスナックでは、何と総額1,300万円以上、1,300本以上の酒が行方不明になっていることがわかったのだ。
店の「山崎」や「響」を質屋に…
この記事の画像(18枚)店のカウンターに立ち、客と談笑する眼鏡の男。窃盗などの疑いが持たれているスナック従業員、花井篤容疑者(38)だ。
被害に遭ったスナックの店長と犯行の瞬間を捉えた防犯カメラの映像を確認すると…。
記者:
この男ですか?
被害に遭ったスナックの店長:
間違いないです
犯行の瞬間を捉えた防犯カメラ映像。3月17日の午前、北九州市小倉北区の雑居ビルにある勤務先のスナックに花井容疑者が現れた。花井容疑者は、カウンターで紙袋を広げ、何かを入れ始める。また別の角度のカメラを見てみると、袋の中に入れているのは酒瓶だったことがわかる。
そして、約3分後。花井容疑者は焦るそぶりも見せず、袋をぶら下げ、外へと出て行った。
花井容疑者が盗んで行ったのは人気のジャパニーズウイスキー「山崎」や「響」などの酒6本。被害額は7万505円だった。
店で盗んだジャパニーズウイスキーなどを質店で金に換えていたという花井容疑者。酒を盗まれたスナックの店長は「ちょっとショックでしたね、堂々と持っているんで。もう作業ですね。怒りを通り越して、もうあきれています」と話す。
行動怪しく…店長が防犯カメラ設置
犯行後、何事もなかったかのようにスナックに出勤してきた花井容疑者。防犯カメラには、客のいない店内でのんびりとタバコを吸ったり、スマートフォンを操作したりする様子が捉えられている。
ふと、防犯カメラの存在に気づいた花井容疑者。するとカウンターに登ってレンズの向きを上に変えてしまった。
実はこの防犯カメラ、花井容疑者の行動を監視するために店長が20万円かけて2台設置したものだったのだ。
被害に遭ったスナックの店長:
(ある日)花井容疑者が質店から出てきたんで、「あれっ?」と思って、質店の店内を見ると、お酒がカウンターの後ろに並べてあった。「あれは全部うちで預かってるお酒だな」と思って。それで、ビルの出入りを確認する監視カメラを見て、どうも彼が酒を持ち出しているというのがわかったので、店内に監視カメラをつけたんです
マージャン店勤務を経て、2年半前からスナックで働き出した花井容疑者。スナックの店長は、現場のビルにほかにも飲食店を2つ経営していて、花井容疑者は3店舗分の酒の在庫を管理する立場だったという。
被害に遭ったスナックの店長:
彼に任せて、発注からやらせてたんで、ほかのスタッフは誰も酒を扱わなかったんですよ
国産ウイスキーを中心に1300本も
実は、花井容疑者が酒の在庫を管理していた3つの店では「異常なこと」が起きていた。
花井容疑者が働き出してから2年半の間で、3つの店の酒の在庫から合計1,382本、総額1,300万円以上もの酒が知らぬ間に消えていたのだ。消えた酒の中には時価百数十万円はする超高級ジャパニーズウイスキー「山崎25年」も含まれていた。
なぜ誰も気付かなかったのか?
桜井福大記者:
例えばこちら「山崎」の25年モノのウイスキー。100万円はくだらないと言われているものなんですが、中を開けてみますと「竹鶴」というウイスキーに中身がすり替えられていました
3月18日、店長は警察に被害届を提出。そして22日、何食わぬ顔で開店準備をしていた花井容疑者を5人の捜査員が取り囲み、逮捕した。
被害に遭ったスナックの店長:
泥棒を雇ってたみたいなもんですけど。ここまで来たら恥もクソもないんですよ!自分たちの恥をさらすようやけど、泣き寝入りしたくないというのが一番で、金額の高さもあるけど、やっぱり許せないですね
「山崎」や「響」など酒6本を盗んだ疑いで逮捕された花井容疑者。店長が店から消えた酒を確認したところ「国産の高級ウイスキー」の被害が目立っていたという。
一連の事件の背景には、世界的なジャパニーズウイスキー人気による価格高騰があるのではと考えられている。
世界的人気で生産間に合わない国産ウイスキー
酒類の買い取り販売を手掛ける店のスタッフは…。
ゴザルジャパン株式会社・栗田裕紀本部長:
2010年頃に世界の権威あるコンテストで「山崎」「響」など、日本のウイスキーが表彰されて、そこから人気が高まっている。需要に対する供給が間に合っていないのが現状。「山崎12年」は、当時7~8000円だったが、いま買い取りになると3万円。「響」も7~8000円だった価格帯のものが、いま3万円や4万円で買い取りとなる。投機対象のひとつとして持たれている方も増えている
花井容疑者が店から盗んだ可能性が指摘されている「山崎25年」は、特にジャパニーズウイスキーの中でも別格とされている。
ゴザルジャパン株式会社・栗田裕紀本部長:
「山崎25年」は、入手したくてもなかなか入手できない商品のひとつ。年間販売数は、世界で1,200本前後と言われている。メーカーの卸価格は16万円。しかし現在の買い取り価格は100万円から110万円。こういった高額な商品に関しては、別の倉庫で厳重に保管している
コロナ禍や原油高騰のあおりを受け、価格が上昇する国産ウイスキーを狙い撃ちした卑劣な犯行。花井容疑者は「何も言いたくありません」と黙秘していて、警察はスナックから消えたウイスキーとの関連を詳しく調べている。
(2023年3月28日放送・テレビ西日本)