注目される異次元の少子化対策の行方。岸田首相はその一環として、男性の育児休業の取得率を現在の14%から2025年度に50%、2030年度に85%を目指すと表明した。

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「子どもは『国の宝』です。次元の異なる少子化対策を岸田政権の最重要課題として実現して参ります」と語った岸田首相。男性の育休を推進するために必要なこととは…。

初めての育休「給料が減ると大変」

福岡県内に住む江﨑さん一家。1カ月前に第3子が誕生し、夫の有磨さん(28)は現在、育児休業中だ。

育休中の江﨑有磨さん:
3人目で初めて育休を取ったので、初めて24時間赤ちゃんと一緒。育児の大変さは実感していますね

6歳と4歳のきょうだいの世話や料理、掃除、犬の散歩などの家事全般を江﨑さんが担当している。

妻・友梨子さん:
朝昼晩、全部。赤ちゃんが生まれてから夫が料理を作ってくれています。1回も作っていないです、わたし

長男・琉偉君:
(パパのご飯は)卵に味つけてない(笑)

育休中の江﨑有磨さん:
わたしが育休を取って、きょうだいの送り迎えをするというのが一番の目的。あとは、家事とか育児とか。2人目までは、あまり携わってなかったので、これを機にやってみようと

江崎さんは県の職員。2人目までは育休を取ることを考えたことはなかったという。育休は最大3年間、取ることが可能で、その間は国から「育児休業給付金」として半年まで給与の67%、それ以降、1年間までは50%が支給される。

妻・友梨子さん:
給料が減っちゃうと、ちょっと大変かな(笑)

育休中の江﨑有磨さん:
1年続けるとなると、収入面で厳しいと思う

そのため、江崎さんが選択した育休の期間は「1カ月」だ。岸田首相は、育児休業給付金について「産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を手取り100%に引き上げる」と述べた。

育休中の江﨑有磨さん:
もし、給付金を満額もらえるようになるなら、全然1年でも取りたいという気持ちはある。国が、育休中の手取り100%を実現できたら、より育休を取る人も多くなると思うし、男性も育休取った方が家事、育児の大変さを実感できる1つの機会になるので、そういった面では取るべきだと思う

育休取得率の高い会社では…

福岡市中央区のIT企業「ヌーラボ」。国が男性の育休取得率を2025年度に50%を目指す中、すでに2022年度の取得率は60%を超えている。

ヌーラボ・橋本正徳代表:
取りやすい雰囲気を作っているところはあります

2022年度、対象となる男性8人のうち、5人が育休を取得。さらに平均取得期間は7カ月となっている。

ヌーラボ・橋本正徳代表:
むしろ育児経験者からは、あまり短い育休期間だと「それでは足りないからもう少し考えた方がいいんじゃない」というアドバイスが出るくらい

大事なのは“周囲の理解”

ヌーラボで働く高木勝秀さんと内田優一さんは、いずれも第1子の誕生をきっかけに育休を取得した。

育休を取得した高木勝秀さん:
わたしは同僚が取っているということがあって、取ろうかなと考えるきっかけになりました

育休を取得した内田優一さん:
育休をもし取ってなかったら、奥さんがこんなに大変ということはわからなかっただろうし、育児に対してオーナーシップを持つ気持ちになれなかったと思う

育休を取りやすくするために何が必要なのか。

育休を取得した内田さん:
周りの理解がやっぱり必要だと思う

育休を取得した高木さん:
やっぱり育休を取るってなると、一緒に働いているメンバーの助けがないと絶対無理だなと言うのは感じている。制度としてあったとしても、ほかの人からイヤという対応をされると取りづらい

男性の育休については、育休を取得した人の同僚に現金を支給するなど、育休に対するインセンティブを出し、推進する企業もあるが、この会社ではそういったインセンティブは一切ない。

ヌーラボ・橋本正徳代表:
インセンティブを渡して「努力でなんとかしろ」という考え方では、何もうまくいかなくて、「ちゃんと仕組みを作りなさい」というのがいいので、根性でどうにかするというインセンティブの渡し方よりは、効率的だと思う

ヌーラボではテレワークを導入していて、採用条件に勤務地はなく、全国どこにいても働くことができる。こういったIT企業としてのメリットが男性の育休取得を後押しした。橋本代表は、IT化など最新技術の活用が育休取得を進める鍵だと考えている。

ヌーラボ・橋本正徳代表:
僕もどちらかというと育児よりは仕事を取ってきた。いまなら育児休暇を取っていた可能性が高い。当時といまが全然違うのは、テクノロジーの差がある。働く人の自己決定を尊重するのがすごく大事。それを嫌がるようなムードを作らないというのが大事

2030年度には、80%を超えたいとしている男性の育休取得。異次元の少子化対策。言葉だけに終わることのないよう目標を達成するには、思い切った発想の転換が必要になりそうだ。

(テレビ西日本)

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