京都市で、全国初となる「空き家税」が導入されることになった。どのような狙いがあるのか。

京都市で深刻な問題…「空き家」増で住宅不足 若い人が住めない

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記者リポート:
こちら、京都市にある“空き家”ですが、劣化が進んでいて、管理が行き届いていない状況です

全国で深刻化する“空き家問題”。京都市も例外ではなく、空き家が10万戸以上ある。

こうした状況もあり、京都市では住宅が不足していて、若年層や子育て世代の市外への流出が増えている。

その対策として打ち出されたのが、「空き家税」の導入。

空き家の所有者に独自の税金を課すことで、空き家を放置しにくい状況をつくり、住宅の供給を増やすのが狙いだ。

課税の対象は約1万5000戸あり、空き家のほか日常的に居住者がいない家なども含まれる。

24日、総務大臣がこの「空き家税」の創設に同意し、京都市で運用されることが決まった。

京都市 行財政局 税務部税制課・川戸哲郎課長:
市内の中心部にも、まだ使えるにもかかわらず、将来何かに使うかなということで置いている、そういう形で空き家を持ってる方も一定数いる。そういう空き家をどんどん活用していただこうというのがこの税の狙いということになります。(空き家の)利活用が進めば、若い方に住んでいただく家の選択肢が増えるのでは

空き家への課税は、建物の価値や立地に応じて決まり、京都市は年間で約9億5000万円の税収を見込んでいる。

導入されれば、全国の自治体では初となる取り組み。京都市民はどう受けとめているのか。

京都市民:
京都は今、収入も減ってますし、そういう考え方をするのも分かります

京都市民:
京都市内、住めるところは少ないなと思います。家探すのが便利になって家賃が減るなら、京都市内学生も多いと思いますし、便利にはなるかな

京都市内の現状について、空き家を取り扱う業者は…

空き家バンク京都 鈴木一輝代表:
こちらがいま上京区にある“空き家”になっています。京都では古民家、京町屋がたくさんある中で、こういった物件の空き家がいまたくさん増えてきています

築80年、雨漏りもする古民家。この古民家も今回の空き家税の対象だ。税の新設については…

空き家バンク京都 鈴木一輝代表:
(空き家が)活用されるきっかけにはなると思うんですけれども、市場に賃貸として、または丁寧な形で売却に出れば、ありがたいなと思っています

ただし、懸念も…

空き家バンク京都 鈴木一輝代表:
ホテルや旅館として売るとなると、外資系の企業が入ってきて買うことがあるので、必ずしもいいなとは思ってませんね

「空き家税」導入の背景には、市外に住む富裕層がマンションなどを別荘として所有していたり、近年では外国人の購入も増えていることがある

京都市 行財政局 税務部税制課・川戸哲郎課長:
誰も住んでいない住宅に対してかかるということですので、いわゆる“空き家”だけではなくて、外国人の持ってらっしゃる別荘ですとか、セカンドハウスにも課税していく

京都市 行財政局 税務部税制課・川戸哲郎課長:
(誰も住んでいない判断や基準は?)住民票と固定資産税のデータを使って、住民票がない住宅を抽出する。そのうえで住宅の所有者に対して、調査票を送ったり、現地を見に行ったり。そういう形で把握していこう。現地調査でいうとポストに郵便物がいっぱいたまっているとか、いくつか項目を設けて、住んでいらっしゃるかどうか判断していこうと考えています

京都市では若年層の住人が少なくなる

京都市では市内の高さ規制により住宅が少なく、“京都ブランド”で価格も高くなっていることから、若年層の住人が少なくなっている。

そこで「空き家税」を導入することで、住んでいない家を手放してもらい、京都市に住める人を増やしたいという狙いだ。

関西テレビ・神崎博解説デスク:
京都市は財政難なので別荘・空き家税で税収が上がります。ただ、これは本当の目的ではありません。住宅が少なくて供給量が少ないので、家賃や分譲マンションが高くなります。値段を下げるためにも供給量を増やしたいと市は考えています。そのために空き家を売ってもらって、若い子育て世代に住んでもらうことで、経済も回り、住民税も払ってもらえるので、大きく京都市の税収を上げていこうというのが狙いなんです

(Q:富裕層の方は税が導入されても、手放さない可能性もありますよね?)
ジャーナリスト・鈴木哲夫さん:
その可能性もありますね。言葉が悪いですが、「税金をかけるからな」と言って、売ってもらおうとする、半ば強硬手段です。本来は、街づくりの中で「こういう目的で(空き家を)使いたい」とか、無償提供などの方法もあります。そもそも法律の問題で、例えば被災地などで街を再整備したい時に土地を動かせないなど、日本の法律では土地を動かしにくい部分があります。法律も一緒に変えていくことが大切だと思います

この空き家税で、住民は増えるのかといった懸念の声も出ている。空き家バンク京都の鈴木さんは、

・空いた部屋は結局外国人に売却されるのではないか
・取り壊しになった場合も跡地には住宅ではなくホテルなどの観光施設が建つのではないか

といった点で、税の導入が狙い通りになるのか、疑問を呈している。

関西テレビ・神崎博解説デスク:
人口が減っているのが財政難の1つの理由であるため、市は人口を増やしたいといった狙いがあります。ただそのための住む家がないので、なんとか人口を増やしていくのがスタート地点と考えているようです

京都市は「別荘・空き家税」について、2026年度からの導入を目指していますが、空き家や別荘を減らし、住みやすい街づくりができるのか。

(2023年3月24日 関西テレビ「報道ランナー」放送)

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