ウクライナへの電撃訪問を果たした岸田首相が、次は衆議院の「電撃解散」を仕掛けてくるのではないかという観測が永田町を駆け巡っている。

2023年度予算を成立させ、3月末に少子化対策のたたき台をとりまとめた後に衆議院を解散し、「最速」で4月23日に総選挙を行うのではないかとの見方だ。

統一地方選が始まったばかりのタイミングで、なぜこんな話が出ているのか。

与党議員や関係者の間では、いくつかの理由があがっている。

理由① “慌ただしい”首相の動き

岸田首相は、16日の日韓首脳会談で「戦後最悪」と言われた韓国との関係を前進させることで合意した。

日韓首脳会談(16日・首相官邸)
日韓首脳会談(16日・首相官邸)
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翌17日には少子化対策で記者会見。

異次元の少子化対策について記者会見を行った岸田首相(17日)
異次元の少子化対策について記者会見を行った岸田首相(17日)

さらにその後、インドを訪問したのち、ウクライナを21日に電撃訪問した。

ウクライナを“電撃訪問”、ゼレンスキー大統領と会談(21日)
ウクライナを“電撃訪問”、ゼレンスキー大統領と会談(21日)

この目まぐるしい動きに、与党議員の間では「何かに向けて急いでいるのではないか」「この勢いで解散をするのでは…」などと警戒する声が出ている。

理由② 支持率「回復」で勢い?

また、3月に入り、報道各社の内閣支持率は軒並み上昇。

FNNの世論調査でも一時30%台にまで落ち込んだ内閣支持率は45.9%まで回復した。上昇は3カ月連続となる。

FNN世論調査(3月18・19日実施)より
FNN世論調査(3月18・19日実施)より

自民党関係者は、「ウクライナ電撃訪問も追い風となる」としながらも、「この先このまま支持率が上がり続ける保証はどこにもない。上昇している時に解散してしまった方がよい」と話す。

また「大勝はしないけども、いま解散すれば野党に敗北するということはない」(自民・若手議員)との声もある。

理由③ 「候補者」を着々と決定

次期衆院選では、いわゆる「1票の格差」を是正するために、都道府県の小選挙区の数を「10増10減」し、区割りを変更して行われる。

これに伴い、自民党は候補者の調整を進めていて、22日までに対象134選挙区のうち111人の支部長(公認予定者)が決定した。

今年1月末には、森山選対委員長が「首相が解散を打とうと思っても、支部長が決まっていないとなかなか難しいことになる。そうならないようにやるということが大事だ」と語っている。

それ以来、支部長の決定を急ピッチで進めており、難航している選挙区も含め、支部長が決まっていない選挙区は残り23となった。

森山氏は岸田首相からの信頼も厚く、自民党議員の1人は、急ピッチでの支部長決定に「ここから先はいつ解散してもおかしくないというサインだ」と警戒する。

理由④ 補選の行方にピリピリ

憶測を呼んでいる「4月23日総選挙」という日程は、衆参5つの選挙区で行われる補欠選挙の投開票日と重なることとなる。

補選での勝敗ラインについて、岸田首相は17日の会見で「自民党の議席をしっかり守り抜き、さらに拡大していく」と述べている。

自民が議席を得ていたのは3つで、残りの2つは野党系の議席のため、「3勝2敗」であっても合格点といえる。

しかし、もともと自民党の議席だった3議席のうち千葉5区は「政治とカネ」の問題で自民党の現職議員が辞職した選挙区で、「油断をしていると2勝3敗もあり得る」と危機感を募らせる党関係者もいる。

仮に「2勝3敗」となった場合、党関係者からは「万が一負け越すとダメージが大きい。それであれば総選挙に打って出た方がダメージは少ないのではないか」との声も出ている。

サミット準備もある中の「電撃解散」は難しい

実際、この「4月電撃解散論」については、「できなくはないが、難しいだろう」(自民党中堅議員)という見方が大勢を占めている。

というのも、5月19日には日本が議長国を務めるG7(主要7カ国)広島サミットが始まるため、4月はこのための準備に追われることとなるからだ。

5月19日には日本が議長国を務めるG7(主要7カ国)広島サミットが始まる
5月19日には日本が議長国を務めるG7(主要7カ国)広島サミットが始まる

さらに、統一地方選の真っ最中であることから、国政選挙との重複には反対論も根強く、公明党の山口代表も「統一地方選に集中すべきだ」と解散には否定的だ。

ただ、選挙事情をよく知る自民党関係者は「電撃解散は、そう簡単ではない」としながらも「今の岸田さんなら何をしてもおかしくない」と語る。

また、広島サミット閉幕後の解散を野党が警戒するなど、早期解散をにらんでの神経戦が行われそうだ。

(フジテレビ政治部)

政治部
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日本の将来を占う政治の動向。内政問題、外交問題などを幅広く、かつ分かりやすく伝えることをモットーとしております。
総理大臣、官房長官の動向をフォローする官邸クラブ。平河クラブは自民党、公明党を、野党クラブは、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会など野党勢を取材。内閣府担当は、少子化問題から、宇宙、化学問題まで、多岐に渡る分野を、細かくフォローする。外務省クラブは、日々刻々と変化する、外交問題を取材、人事院も取材対象となっている。政界から財界、官界まで、政治部の取材分野は広いと言えます。