ダウン症の人のパラリンピックとも呼ばれる「世界ダウン症水泳選手権」。その世界大会で、平泳ぎの3種目で優勝した女性アスリートが福井にいる。世界一に輝きながらも、すでに次の世界一に向けて1日2時間の練習に励んでいる。
その強さの秘訣を聞くと、「人が好きだから」という答えが返ってきた。

「世界ダウン症水泳選手権」で3冠達成! 

福井・勝山市の小林倫子さん(21)は、水泳歴19年。週5日、福井市の県営水泳場で練習している。

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小林さんは2022年10月、4年に一度度開かれる世界ダウン症水泳選手権に出場し、得意の平泳ぎで50メートル、100メートル、200メートルの3種目で初めて優勝を果たした。

小林倫子さん:
本当に優勝できるのかと思っていたが、金メダルをとれてよかった

小林さんは、足に重りをはさみ、手だけを使ってプールを何往復もする練習を取り入れている。重りを取った後もタイム計測のため、さらに全力で泳ぎ続ける。休憩は水分補給の5分間程度だ。

鴨田忍コーチ:
レースが続いてくると集中力を高めるのが知的障害者の子は難しいが、そこを全部コントロールしてレースに臨むのが彼女の強み

練習時間は2時間、4kmの距離を泳ぐ。ハードな練習をこなし体力もなくなってくるが、小林さんは水から上がっても笑顔を絶やさない。周囲を明るく和ませるムードメーカーだ。

小林さんが初めてプールに入ったのは2歳の時。体力をつけてもらおうと、両親がスイミングスクールに通わせたことがきっかけだった。

すると水泳を楽しむようになり、上達も早かった。17歳の時、大会出場の目安となる標準記録を突破、2018年の「世界ダウン症水泳選手権」に初出場した。しかし、結果はすべて予選敗退。悔しい初挑戦となった。

その後は全国障害者スポーツ大会などの代表選手らが所属する、県内の水泳チーム「ブレイブ・ドルフィンズ」に入り、本格的に競泳の練習を始めた。仲間と練習を重ね、リベンジの舞台となる2022年の大会で見事、3冠という快挙を成し遂げた。

父・達治さん:
大変なのによく頑張っていると思う。毎日、嫌とも言わず

この日は練習が終わり、疲れているかと思いきや…。

小林倫子さん:
めっちゃ楽しかったです! みんながいると楽しくしてくれるので、頑張るぞというイメージで頑張って泳いでいます

ほぼ毎日、片道40分かけて水泳場に通う。水泳中心の生活だが勉強も怠らない。この日は、週末に控えていた漢字検定の勉強をしていた。

小林倫子さん:
間違えたところを何回もやって合格できるように頑張っています

ーー合格できそう?

小林倫子さん:
自信満々!

母・聡美さん:
家にいるときは限りなくリラックスして好きなことをしている。

ーー水泳をしている時とは違う?

母・聡美さん:
違いますね

「人を好きになる」のが得意

両親からはのんびりしていると言われるが、家でもしっかり体を動かしている。特技だというフラフープも披露してくれた。しかも音楽に合わせてダンスを踊りながら、フラフープを回すことができる。

体幹を鍛えるために小学生のころに始めたそうで、映像を見ながら回しているうちに振り付けを覚え、回しながら踊れるようになった。

このダンスは学校行事でも披露している。「周りの人を楽しませることが好き」と、小林さんは笑顔で答える。

母・聡美さん:
人が好きなんだと思う。友達もそうだし、教えてくださる先生もそうだし、人を好きになるの得意だよね

「人が好き」。だからこそ周りの人と一緒に楽しみながら練習を続けている。そんな小林さんの今後の目標は…。

小林倫子さん:
目標はジャパンパラ競技大会に出ること。そこで世界一になりたいと思っていて、次のステップへ行きたいと思っています

世界一を目指し挑戦を続ける女性スイマー、小林倫子さん。現状に満足することなく、1秒でも早く泳ぐため、1日2時間の練習に毎日励んでいる。

【福井テレビ】

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