“パパ活”とは、SNSを通じて知り合い、食事や買い物などのデートをする、あるいは性行為をする見返りに相手から金銭を受け取る活動のことだ。隠語が使われた実際のやりとりや、パパ活に潜む犯罪のリスクを取材した。

SNSがきっかけで犯罪被害に

福岡県警少年課から提供された画像。

女子高生系「今から小倉で会える方いますか?」
静か系女子「天神か博多で会える方いますか?」
少し明るい系女子「来月会える方探してます。健全のみ。DMお願いしま~す!」

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SNSにあふれた“会える人”を募集する女性たちの投稿。その投稿に共通して記されていたキーワードが「#P活」。P活とは、いわゆる「パパ活」だ。

警察庁によると、SNSがきっかけで18歳未満の未成年が児童買春などの犯罪の被害に巻き込まれたケースは、2021年に全国で1,812人。10年ほど前と比較すると倍増している。

中3女子 警察に補導され涙

実際に記者もSNSで検索してみた。

日高朋美記者:
すごい!たくさん出てきますね。自分の顔とか、体のラインが分かるような写真などを載せていて、かなり危ないと思います

さらに、パパ活を募集する投稿には、いくつかの専門用語がみられる。

「健全」「大人」「プチ」。これらは一体どういう意味なのか。

まず「健全」とは、性行為に及ばず食事や買い物などをすること。これに対して、性行為のことを「大人」。その類似行為は「プチ」というような言葉で表されるというのだ。

福岡県警は、パパ活をする未成年を補導するため、捜査員が「パパ」を装って接触し、実際に会いに行く方法で対策を講じている。

捜査員:
実際に補導した女の子の書き込みになります。この女の子と接触して、補導をするためにこちらからメッセージを送ってやり取りを始めました

接触したのは「福岡の学生」と名乗る女性。その実際のやり取りは…。

パパ(警察)「できれば平日昼間が良いんですけど、どんな感じですか?」
少女「大丈夫ですよ。いけます!」
パパ(警察)「希望の金額はいくらくらいですか?」
少女「お買い物のですか?」
パパ(警察)「いや、デートの1時間当たりの金額ってことです」
少女「5,000円くらいで考えてます!高いですか?」
パパ(警察)「OKですよ!」

会う前に、パパ活の内容と渡す金額を決めるのがルールだという。

捜査員:
このやり取りの後に、私たちは現場に向かいました

待ち合わせ場所のバス停でパパに扮(ふん)して待っていた男性捜査員。そこに1人でやって来たのは、中学3年生の少女だった。

捜査員:
事前にお互いの服装の確認をしていたので、女の子と目があった時に、「あっ、パパ活の方ですよね」という感じになったので、声をかけました。このとき女の子は、私に対して警戒心は全く感じてなくて、「どこ行きます?」というような軽い感じでした

少女に対し、おとなしい印象を抱いたという捜査員。その後、警察官であることを明かすと、少女は口を閉ざし固まってしまった。

捜査員:
警察署に行くことに素直に応じてくれて、車の中で涙を流していました。警察から補導されたことで、不安や後悔からの涙だったと思います

警察署に迎えに来た少女の母親は「まさかうちの子が」と、驚きを隠せなかったという。

捜査員:
スポーツもすごく頑張っている女の子でした。スポーツの記録が伸びない、友だちとうまくいかないなどの悩みを抱えている子でもありました。小遣いだけでは足りなく、自分の好きな洋服などを買うお金が欲しかったというもので、この子にとってパパ活は、このときが初めてでした

少女は、警察官の話を素直に聞き入れ、「パパ活のようなことは二度しない」と約束したという。

大人の意識も大切

警察はこのようなパパ活に潜む犯罪のリスクを強く訴えている。

福岡県警生活安全部少年課・野村由紀子課長補佐:
安易に会いに行って、犯罪被害に遭うというケースは結構あって、具体的には、そのまま連れさられる。要は誘拐されるとか、そのまま監禁される。その先で強制わいせつとか性被害に遭う。裸の写真を仮に撮られたりしたら「それをバラすぞ」などと言って脅されるというふうに、さまざまな被害があります

何よりも最大の問題があるのは、金銭を渡して未成年とデートや性行為をする大人の側だ。

福岡県警生活安全部少年課・野村由紀子課長補佐:
「子どもが同意してたからいいだろう」とか「手を出してないから犯罪には触れることをしていない。だからいいだろう」という大人も実は結構います。それがそもそも間違いです。性的な行為をするのは、やはり子どもに対する性加害です。そこは人権侵害というところで許されないし、性的な行為を伴わないとしても、大人が安易に判断して子どもに会いに行くのは、子どもの健全な育成に害する行為だから許されません

そして、パパ活をゼロにするために大切なことは、子どもの内面を知ろうとする周りの大人の意識だという。

福岡県警生活安全部少年課・野村由紀子課長補佐:
大人の決めつけだったり、思い込みだったりによって、子どもの本当に触れてほしい悩みや気づいていない気持ちに対して、意識を持って見てほしい。これは見えない部分なので、普段から意識して見ることが大切かなと思います

実際にパパ活をしている女性、少女にペン取材を条件に話を聞くことができた。

話を聞いた19歳の大学生の女性は、人気アイドルグループの熱狂的なファンで、全国各地のツアーを回るためバイト代だけでは足りないというのが発端だった。2022年秋にパパ活を始め、これまでに約20人と会ったという。パパ活で嫌な思いや怖い思いをしたことがあるかと尋ねると、「金銭を渡さない人がよくいる」「無理やり性的行為をされそうになった」など危険な場面があったことも女性は語った。

また別の20代前半の女性は、趣味や娯楽のためであれば性的行為もいとわない、一度始めると普通のバイトはできないということも語っていた。

パパ活のような行動に走ってしまう未成年のために、県内には5つの「少年サポートセンター」が設置されている。少年の問題に関する相談や立ち直り支援を行っていて、警察は「ひとり悩まず勇気を出して相談してほしい」と話している。

(テレビ西日本)

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