福岡県内で起きたセクハラ事件の被害女性が、収まらない憤りと苦しい胸の内を明かした。加害者の同僚は、その後、逮捕されたが、勤め先の対応が女性をさらに追い込んでいる。
社内で飛び交う容疑者を心配する声
被害女性:
自分が我慢するしかないのかなって。どうして被害者なのに、わたしだけがこんな思いしないといけないんですか
収まらない怒りに声を震わせながら、理不尽さを訴える20代の女性。2023年2月4日、福岡・筑後市で起きたセクハラ事件の被害者だ。加害者の同僚の男は、暴行容疑で逮捕されたが、事件後の勤め先の対応で苦しい立場に追い込まれていると話す。
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事件は、加害者の同僚も参加していた会社の新年会の席で起きた。
被害女性:
いきなりズボンを下ろされたっていう感じですね。もちろん、その中は何も履いてなかったので、ショーツが16人もの前であらわになった
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女性は、にぎわう居酒屋の店内で突然、背後にいた同僚の男からズボンを引き下ろされ、多くの人の面前で下着姿をさらされた。あろうことか、ほかの同僚や上司の男性たちは笑っているばかりで、男の行為をとがめることは一切無かったという。
被害女性:
何回も「謝って」って言っても、ヘラヘラしてるような感じで。何とも思ってないんだろうなって
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女性を辱めたのは、同僚で八女市に住む山口憂馬容疑者(36)。女性からの相談を受けた警察が、悪質だと判断し、2月20日に暴行容疑で逮捕した。しかし、警察の調べに対し山口容疑者は、「酔っていて覚えていない」と話した。
被害女性:
びっくりしました。え?覚えていない?覚えていないで通用できるのって
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謝罪もなく、反省した様子さえ伺えない加害者。さらに、事件後の勤め先の会社の対応も被害者にとっては極めて不誠実なものだった。女性が会社の上司にセクハラ被害を打ち明けた際のLINEのやりとりが残されている。
LINEやりとり画像:
「昨日の山口さんは激しく酔っぱらってましたね」
「酒の失敗、誰しもあることです」
「俺も気をつけなきゃ」
![女性が会社の上司にセクハラ被害を打ち明けた際のLINEのやりとり](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/700mw/img_195bf80f5ee1c6374a049efb13c0a508120141.jpg)
職場の新年会で起きたセクハラ被害だったため、その後も会社に解決を求めたが、会社は「プライベートで起きたトラブルについては個人での対応になる」として、何の対応もしなかったという。それどころか、社内ではその後、警察に相談した女性を責め、加害者の男を気遣う声まで上がったという。
被害女性:
容疑者の人生を心配する声が会社で飛び交っていると聞いたので…。そっちの人生よりわたしの人生はどうなるの?
セクハラ相談件数増加も泣き寝入り
事件後、女性は出社するだけで吐き気や震えが止まらない状態になり、現在は休職している。別の部署への異動も提示されたものの、意に沿う条件ではなかった。そんな女性に、会社は3月初旬までに復職しなければ、自己都合退職になると通告している。
テレビ西日本の取材に対し会社は、「事件を重く受け止める」と回答し、「就業時間外に起きた事件ではあるが、同様の事案が今後、起きないよう指導を徹底する」としている。一方で、被害者の異動に関しては、「事件とは関係の無いことであるためコメントは控える」としている。
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今回の事件をめぐる職場の対応について、セクハラ問題や女性が被害者になる事件に詳しい上谷さくら弁護士は、「かなりひどい対応だなと思います。加害者を擁護するような声。被害をとても軽視してる」と話した。
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厚生労働省のまとめでは、2021年度に寄せられたセクハラの相談件数は、全国で約7,070件。コロナ禍で職場や飲み会で対面する機会が減った2019年から一時、減少していたものの、再び増加傾向にある。
![2021年度のセクハラの相談件数(厚労省まとめ)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/6/700mw/img_96c2c34e15bf644c394585dff59b0ca2162182.jpg)
上谷弁護士によると、職場で起きたセクハラは、人間関係や雰囲気の悪化をおそれて、被害者が泣き寝入りするケースが多いという。
上谷さくら弁護士:
本当であれば、加害者を、被害者と顔を合わせなくていい部署に異動させる措置が必要だが、小さい会社だとなかなかそうはいかない。見て見ぬふりをする。黙っているというのは、加害者を応援しているのと変わらない。加害者を擁護してどうする。被害者に2次被害を与えるなということを言える職場にしていかないといけない
ささいな出来事も我慢せずに相談を
今も思い出すだけで震えが止まらないというセクハラ被害者の女性。それでも声を上げたのには強い思いがあった。
被害女性:
自分と同じように、泣き寝入りしなくちゃいけないのかなって、もみ消されるのかなって、自分の人生を犠牲にして諦めるよりも、(自分が)声を張った方が少しでも勇気を持てるように(なって欲しい)という思いがあって。少しでも多くの女性に自分は泣き寝入りしないでいいんだよって、わたしも言いたくて
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上谷弁護士は、セクハラ行為に及ぶ人は、日常的にそうした行動をとるため、録音や録画の準備、LINEなどSNSのやり取り画面も証拠として保存しておくことが重要だと話す。そして、ささいな出来事でも我慢せず、弁護士や警察に相談をしてほしいと呼びかけている。
「酒の席だから…」「あの人だから仕方がない」などと軽く見られがちなセクハラ問題だが、被害者の深い苦悩を正しく理解し、職場や社会全体で撲滅する必要がある。
(テレビ西日本)