石川の伝統工芸・ヒノキ細工は約400年前、旧尾口村深瀬を訪れた僧侶が笠の作り方を村人に教えたのが始まりと言われている。その深瀬(旧尾口村)に生まれ育ち、ヒノキ細工の伝統を守り伝える伝統工芸士・香月久代さんを取材した。

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深瀬では子供が競って編んだヒノキ細工

竹内章アナウンサー:
ヒノキ細工はいつ頃から?
伝統工芸士 香月久代さん:
深瀬(旧尾口村)という村に産まれた女の子は、小学校に入る前からヒノキ細工を手伝って作っているんです。子供はヒノキ笠の1番最初の部分を作る。

香月さんが生まれたのは、白山麓にある旧尾口村の深瀬。今は、手取川ダムの建設で水没してしまった。

香月さん:
笠が二重になる、編み始めの部分を子供が作るんです。
竹内アナ:
伝統なんですね。一年中作るんですか?
香月さん:
冬にほとんど作っていました。

香月さん:
冬になると子供たちが宿に集まって編む競争をするんです。
竹内アナ:
ちょっと遊び感覚で?
香月さん:
そうそう~「10枚編んだ」とか「20枚編んだ」とかって感じで。

竹内アナ:
ヒノキ笠の特徴は軽いってことですよね。
香月さん:
昔の人はよく考えていて、晴れていると木が収縮して隙間が出来て通気性が良くなる。雨が降ると木が水を含んで膨らんで水を通さなくなる。そういう利点があってこの笠にしている。

竹内アナ:
すごいですね!これなら農作業していても気になりませんもんね。

香月さん:
帽子と違って蒸れないから涼しくていいですよ。
竹内アナ:
夏場なんて本当に熱中症対策に良いですよ。

竹内アナ:
ヒノキ笠って見直されているんですか?
香月さん:
そうみたいですね。お客さんが求めてくるから…。

竹内アナ:
他のヒノキ細工商品も人気なんですよね?
香月さん:
そうですね。今だとマスクケースが人気。ずっと売れているかな。

ヒンナを湿らせて編むヒノキ細工…見直されているからこそ絶やさずに

竹内アナ:
このペラペラのがヒノキ?
香月さん:
そうです、ヒノキの板をカンナで引いて作り出します。この材料を作るのが大変なんです。

カンナで引いて作る材料はヒンナと呼ばれている。

昔は女性が笠を編み、男性が材料を作っていたそうだ。今は香月さんの兄と同級生の男性がヒンナを作っていると言う。

竹内アナ:
ヒンナを何個か飛ばしに編んでいる?
香月さん:
あじろ編みはだいたい2個飛ばし。でも、模様の切り替えの所で3個飛ばしとか違うことで模様ができる。

竹内アナ:
模様を付けようと思ったら複雑になっていくんですね。ヒンナが折れたりはしないんですか?

香月さん:
濡れていないと折れますよ。これは普通の水です。湿らせておいて編むんです。乾燥してると折れやすいです。
竹内アナ:
最初、アルコール消毒かと思いました。

竹内アナ:
香月さんが頑張っているから、途絶えることは無いんですよね?
香月さん:
だと思います。親が作っていたから、私がしなければという思いでやっています。でも、できれば早く後継者に譲りたいなと。

 

竹内アナ:
深瀬の頃を知っている作り手は香月さんだけなんですよね?
香月さん:
ほとんどいないですね。みんなどうしているんでしょうね…続けてくれればいいのにね。やっぱりヒノキ細工を絶やしてはいけない。これだけみんな応援してくれるから、それに応えていかなきゃいけないかなと思っています。

(石川テレビ)

石川テレビ
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