探査機「はやぶさ2」が2020年に持ち帰った小惑星「リュウグウ」のカケラを1年以上かけて広島大学などが分析したところ、生命の起源は「黒い炭」という新しい成果が得られたことがわかった。

はやぶさ2の快挙から2年 世界の科学者の期待が集まる

2020年12月、いまから2年3か月前。

「はやぶさ2」の光
「はやぶさ2」の光
この記事の画像(16枚)

加藤雅也アナウンサー:(「はやぶさ2」帰還をネット視聴しながら)
あ、これかな、これですね。かわいい光ですね、星と同じくらいの明るさでしたね

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が地球からおよそ3億キロ離れた直径900mの小惑星「リュウグウ」を調査し、数々の偉業とともに地球に届けたその物質に科学者らの期待が集まった。

広島大学・薮田ひかる教授:(2020年取材)
生命の起源物質がたっぷりあるのではないかと思っています

小惑星の物質がなぜ、生命の起源の解明に関係するかというと、地球が誕生した約46億年前は地球の温度が非常に高く、生物が存在できる環境になかった。

その後、地球が冷え、太陽系の惑星から地球にいろいろな物質が降り下りてきて、約40億年前に地球に生命が誕生したと推測されている。その当時と同じ状況が保たれている小惑星の物質が地球の生命の起源のカギを握るというのが今の有力な説だからだ。

長年、地球外有機物を専門に研究し、はやぶさ2プロジェクトには初期から関わってきた広島大学の薮田ひかる教授は、日本に届いたリュウグウのカケラから「固体有機物」の分析を行うチームリーダー。

広島大学・薮田ひかる教授:(2020年取材)
もちろんエキサイティングではあると同時にプレッシャーも非常に大きく感じていますけども、最終ランナーなので気を引き締めています

分析の結果は予想外 太陽系初期の有機物はアミノ酸よりも黒い炭が主成分

2021年6月から1年間かけて、国内外の研究者40人以上が“ワンチーム”となり、地球上の汚染や風化の影響を受けていない新鮮なリュウグウの微粒子を様々な方法で分析した。

広島大学・薮田ひかる教授:
JAXAから配分された試料を広島大学でしっかり汚染のないように保管した

そのうえで、専用の溶液を加えて激しく振る操作を1か月間繰り返し、時間をかけ、純度の高い固体の有機物を精製したという。

すると、見た目が黒い天体であることが特徴の小惑星リュウグウに含まれている有機物も多くが“真っ黒”だったことがわかった。

さらに有機物はマイナス200℃以下の低温環境でのみ生じる太陽系最初期のものと明らかになり、太陽系と生命の原材料物質が宇宙でどのように形成されたのか解明する重要な研究材料になったという。

広島大学・薮田ひかる教授:
生命の材料は何だったかが、従来言われているようにアミノ酸とか、私たちの生体分子が宇宙から運ばれて、地球で生命になったというのも、非常に魅力的な昔からの考え方ではあるが、そこをちょっと面白い意味で覆すことができたというか、実際蓋をあけるとアミノ酸はあったけど、すごく少なくて、むしろ今回私たちが発見したような黒い炭のようなものが、リュウグウの主成分としていっぱいあった。

広島大学・薮田ひかる教授:
そのように、少し新しい説をくわえてみると、私たちの起源は“黒い炭”だったということが、地に足をついた考え方として言えるんじゃないかと

これまで、有力とされていた説を覆す新しい説があらわれたわけだが、今後はこの物質について研究を深めることで、私たち生命の起源の解明が期待される。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。