自民党の甘利明前幹事長は5日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、岸田文雄首相が打ち出した「異次元の少子化対策」の財源確保について、消費増税に慎重な姿勢を見せた。

甘利氏は、「消費税はよほど景気がよくならないと、引き上げると景気に相当影響するというのが経験値だ。経済成長と効果的な予算配分で(少子化対策の)予算拡大に取り組むべきだ」と強調した。

甘利氏は少子化対策の財源について、1月のBS番組で将来的な消費増税に言及したと報じられたが、「誤解報道があった」と主張した。

一方、甘利氏は、先端半導体製造技術の対中輸出規制強化をめぐり、日本とオランダが米国からの要請を受け入れ、3国が合意に達しているとの認識を示した。「(政府は)外に向けてリリースはしていないが、恐らく日本とオランダはアメリカと歩調を合わせている」と述べた。

中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の利用をめぐり、甘利氏は、中国の国内外の中国人と中国企業に中国政府への情報提供義務を定めた国家情報法に触れ、「情報が全部(中国政府に)渡されるということを前提に使わなければいけない」と述べ、日本として何らかの対策が必要だとの見解を表明した。

国民民主党の玉木雄一郎代表も「国家情報法とセットで考えていく必要がある。(中国の)国家に直結して利用される可能性があり、(他国の)ほかのアプリとは別に考えていかなければいけない」と指摘した。

玉木氏は「国民民主党所属の国会議員や党職員にも(TikTokアプリを)入れるなということを徹底したい」とも述べた。

TikTokをめぐっては、米下院外交委員会が米国内での一般利用を禁止する法案を可決。米国やEUなどが公務用端末から排除し、日本も政府職員の公用端末での使用を禁止している。

インドでは、情報が中国に渡っている疑いがあるとして、TikTokを含む中国系アプリのインド国内での使用を全面的に禁止している。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長、解説委員):
中国系動画投稿アプリTikTokについて、米下院外交委員会が一般も含めた使用禁止法案を可決するなど、米国内で使用禁止の動きが拡大している。日本国内のTikTokユーザー数は約2070万人に及ぶ。日本も政府端末などでの使用は禁止されているが、地方自治体や企業などは対象外だ。日本も米国同様何らかの対策をとるべきか。

甘利明氏(自民党前幹事長):
そう思う。中国は国家情報法で国内外どこにいようとも中国人と中国系企業は中国政府の要請があれば持っているデータを政府に提供しなければならない法律がある。(情報の)全部が(中国政府に)渡されることを前提として(アプリを)使わなければならない。

玉木雄一郎氏(国民民主党代表):
中国のソフト、アプリだということで国家情報法とセットで考える必要がある。情報を取るような話はほかのアプリでもあるが、国家に直結して利用される恐れがあるかどうかという点がほかのアプリとは違う。日本政府も機密情報を扱うような端末での使用はだめということになっているが、何が機密情報かもよく分からないから、米国のように政府機関、地方自治体、公的な端末等での使用は基本的に禁止するということ、早急に米国、EU、カナダと歩調を取る対応をやるべきだ。わが党でも所属国会議員や党職員にも、(TikTokアプリは)入れるなと徹底したい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
米国が日本に喫緊の対応を迫っているのが、中国に対する輸出規制だ。半導体製造装置では、日本、米国、オランダの企業が世界シェアの8割を占めている。この半導体製造装置について、米国は日本とオランダに対して中国への輸出禁止強化への協力を要請している。半導体製造装置は日本にとって中国への最も主要な輸出品だ。
            
松山キャスター:
日本経済の核がこの半導体製造装置だ。日本が米国の要請を受け入れて輸出規制強化に踏み切れば、日本経済にはある程度打撃がある。半導体輸出規制強化については米国との間ですでに合意しているという一部報道もある。
            
甘利氏:
外に向けてはリリースしていないが、おそらく日米蘭、半導体製造装置を作っている主要メーカーは米国と歩調を合わせていると思う。すべての半導体という仕切りではなく、ハイエンド(最先端)の半導体、14ナノ以下の最先端半導体製造装置を輸出をしないようにと。中国が最先端半導体を作り、武器に転用されれば、こちらの脅威になる。輸出規制強化は極めて妥当なことだ。中国は「中国製造2025」で主要なものは全部自国で賄えるようにして、対外諸国への影響力を確保するとの経済戦略を打ち出している。それを踏まえて対応しなくてはならない。

松山キャスター:
この問題については安全保障を重視するのか、経済を重視するのかという側面もある。
            
橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
経済と経済安全保障はある意味相反するものだ。必要なところは規制をかけていくべきだが、米国がすごいのは、経済安全保障で中国に様々な規制をかけても中国との貿易額をどんどん増やしているところだ。日本も経済安全保障という形で様々経済行為に規制をかけるにしても、日本の経済が失速しないようにバランスを取らなければいけない。なんといっても米国はとにかくイノベーション、イノベーションで、様々ものが生み出される、その国力がある。経済のエンジンのアクセルが全開になっている国だから、経済安全保障で多少ブレーキを踏んでもバランスが取れる。日本はまだそこまでイノベーションが生まれるような経済のエンジンが噴かされていない。そんな状況の中でブレーキばかり踏むのには危険性を感じる。特に半導体製造装置は、米国にとってはあまり自分たちの強みではないから、規制をかけても自国にあまりデメリットはない。日本にとってはものすごい主要な輸出品だ。これにブレーキをかけるということは、日本にとってのダメージもすごく大きい。バランスをとるのは非常に重要だ。

玉木氏:
私は橋下さんの意見に近い。もちろん軍事転用できるようなAI用の半導体、あるいはそれを作る半導体装置を中国に提供するのは一定の規制が必要だ。ただ、例えば、2019年も半導体輸出規制を強化して、それに合わせて日本は対中輸出を抑えたが、実は米国はそれを尻目にシェアを伸ばし、2021年は日米の対中シェアが逆転した。米国が巧みにやっているところもある。だから、対象をきちんと絞り込んでいくことが必要だ。例えば、16ナノ、14ナノ以下のところに限定的にやる。曖昧な規制だと、日本企業は自粛するので結果としてシェアが縮む。半導体の世界シェアを失って、もう哀れな姿になっているので半導体製造機器まで世界シェアを縮めてしまったら、(日本は)もう生きていけない。ここは巧みにやるべきだ。そのための外交交渉を経産省と外務省にはきちんとやってもらいたい。

松山キャスター:
国会では賃上げと少子化対策が大きな課題だ。少子化対策では財源をどうするか。消費税も含めてやるのかどうかという意見もあるが、どう考えているか。
            
甘利氏:
消費税は安倍政権下で2回税率を上げた。野党との取り決めを実行したのだが、当初、財務省の説明は、EU(欧州連合)では消費増税の消費に対する影響はすぐ回収される、少し落ちるがすぐに元に戻るというものだった。日本は消費税率を引き上げることで消費が落ちて回復するのにものすごく時間がかかる、引きずる国だということを痛感した。だから消費税はよほど景気が良くならないと大丈夫ということにならない。引き上げると景気に相当影響するというのが経験値だ。そういうことをかつて言ったのだが、誤解報道があった。当面は経済成長の力で、それから効果的にどこに予算を配分するかということを精査して、その仕組みで予算を拡大していくことに取り組むべきだ。消費税は消費に対する影響がかなりある。経済成長により重点部分に投下するメリハリをつけていく。そのことで当面は少子化対策をやっていくことになるだろう。

日曜報道THE PRIME
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