愛媛・松山市にある松山東警察署は、2月27日から新庁舎での業務が始まり、歴代の署員たちが多くの事件を捜査・解決してきた旧庁舎は、その役割を終えた。管内でこれまでに発生した数々の事件、そして、市民の安全安心を守ってきた松山東署の歴史を振り返る。

約54年にわたり事件など捜査・解決

松山市中心部の官庁街や繁華街を管轄する松山東警察署は、2022年の刑法犯認知件数が1,806件と、愛媛県内で発生した事件の3割を占める愛媛最大の警察署だ。旧庁舎は1969年の業務開始以来、約54年にわたり管内で起きた事件や事故を捜査・解決してきた。

松山東警察署旧庁舎(愛媛・松山市)
松山東警察署旧庁舎(愛媛・松山市)
この記事の画像(19枚)

松山東警察署・池田大介刑事管理官:
当時のいろいろ楽しい思い出とか苦しかったこととか、そういう思い出のある建物がやっぱりなくなってしまうというのは正直少し寂しいなという気持ちですね

松山東警察署・濱田三幸刑事第一課強行犯係長:
大変寂しい思いではありますけれども、この旧庁舎最後の刑事第一課員として勤務できたことは大変光栄に思っております

県民を恐怖に陥れた“ダイナマイト殺人”

管内で発生した数々の凶悪事件の中でも1988年に起きた事件は、愛媛県民を恐怖に陥れた。1988年10月、松山市内の会社の火薬庫からダイナマイト150本などが盗まれた。

松山東警察署に捜査本部が設置され警戒を強める中、2週間後に悲劇は起きた。松山市内のタクシー会社社長の自宅で車に置かれた紙袋が爆発、親族の大学生が死亡するなど5人が死傷したのだ。

警察の執念の捜査で約4カ月後に逮捕されたのは、元従業員だったタクシー運転手の男。会社を解雇されたことを逆恨みしての犯行だった。

そして、松山東署の歴史を語るうえで外せないのは「福田和子」事件だ。15年に及ぶ逃亡劇の末逮捕された女は、今も愛媛県民だけでなく日本中の記憶に残っている。

福田和子元受刑者からかけられた言葉

時効寸前の劇的逮捕が注目を集めた「福田和子」事件で陣頭指揮を執った当時の刑事第一課長・中井邦彦さんが、旧庁舎5階の講堂を訪れた。

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん
松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん:
この部屋が作戦室で暑かったですね、あの時は。思い出すな、あの時を

1982年8月、ホステスだった福田和子元受刑者は同僚の女性を殺害して家財道具などを奪い、遺体を松山市内の山中に埋めて逃亡。15年に及ぶ逃亡劇の始まりだった。

福田和子元受刑者
福田和子元受刑者

警察は福田元受刑者を全国に指名手配。事件から約5年後、石川県にいることを突き止めたが、あと一歩のところで取り逃がした。

当時、福田和子元受刑者が知人にかけた電話音声:
楽しみにしとるんでしょうが、私が捕まるの。そんなドジはしない。切るよ、あぶないあぶない

その後、顔を何度も整形しながら逃げ続ける福田元受刑者。時効まであと1年となったタイミングで警察は勝負に出た。全国で初めて100万円の懸賞金を出したり、顔写真付きのテレホンカードを作ったりして、情報提供を求めたのだ。

そして、時効まであと21日。ついに福田元受刑者は福井県で逮捕された。決め手はテレビで放送された「電話音声」だった。

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん:
これはもううれしかったですよ。歴代先輩がずっと追いかけてきた重要な事件ですからね。その身柄が取れたことは非常にうれしかったですね

福田元受刑者の身柄は福井から移送され、松山東警察署に到着した時には多くの報道陣や事件に関心を持つ一般人が署の周辺に押し寄せた。

松山東警察署前での当時のリポート:
今、捜査員に囲まれて福田和子容疑者出てきました。身長153cmと小柄な福田和子容疑者ですので見ることができません。捜査員に囲まれて今カメラの前を通過しました

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん:
あれだけ一般の方も押しかけてきて、雑踏を整理するのが大変でした

中井さんは福田元受刑者と初めて対面した時、かけられた言葉が忘れられないという。

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん:
私の顔を見るなり「あなたはテレビで見たことあるわい」。そのことから始まりましたからね。もう度胸がすわっているんですね

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん
松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん

時効寸前の逮捕が注目を集めたこの事件は、今なお多くの人の記憶に刻み込まれている。

「福田和子」事件を含め中井さんの警察官人生にとって、松山東署で携わった数々の事件はどれも忘れられないものばかりだ。

松山東警察署 元刑事第一課長・中井邦彦さん:
寂しいですね。いろんな事件を扱いましたからね。思い出深いですからね。寂しいですね。これがなくなるとね

これまで以上の体制で市民守る

松山東警察署は、2月27日から新庁舎での業務がスタートした。

松山東警察署新庁舎
松山東警察署新庁舎

松山東警察署・池田大介刑事管理官:
素晴らしい建物ですね、スタイリッシュというか、もう令和時代にふさわしい建物

松山東警察署・濱田三幸刑事第一課強行犯係長:
治安のシンボルだと思っておりますので、この姿を見て住民の方にものすごく安心感を与えられていると思います

10階建てに生まれ変わった建物は、機動捜査隊など県警本部の初動捜査部門の機能も入り、事件数の多い松山東署と緊密に連携。これまで以上の体制で市民の安全安心を守る。

(テレビ愛媛)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(19枚)
テレビ愛媛
テレビ愛媛

愛媛の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。