“伝統野菜”のひとつ、冬の松江の「黒田セリ」は、栽培する農家や栽培面積が年々減少している。黒田セリをどのように次の世代に伝えていくか。貴重な伝統野菜を受け継ごうと奮闘する男性を取材した。
松江伝統の「黒田セリ」
日本各地で古くから栽培されてきた“伝統野菜”。その地域で古くから作られていく中で、その土地の気候風土にあった野菜として、受け継がれてきた。一方で、その伝統野菜をどのように次の世代に伝えていくかが課題となっている。
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松江城のおひざ元、松江市黒田町では、「黒田セリ」が約300年前から栽培されている。
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黒田町は湿地でセリの栽培に適していて、松江藩5代目藩主・松平宣維が、城の西側に自生するセリを見て、栽培を奨励したのが始まりとされている。
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JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
「黒田セリ」です。松江では、そばに入れて食べるそうです。彩り豊かですね。セリとそばの香りが口いっぱいに広がります。シャキシャキしていて、おいしいです
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セリは数少ない日本原産の野菜で「春の七草」の一つ。生薬として用いられるほど栄養価が高く、松江では、出雲そばやおでんに欠かせない食材として親しまれてきた。
伝統を引き継ぐために
今が収穫の季節。「黒田セリ」の畑を訪ねた。
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JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
こんにちは。これが「黒田セリ」の畑なんですね
セリを栽培・谷悟史さん:
そうです。季節も終盤で、数も少なくなって来ているんですけど、最後の収穫をしているところです
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先祖代々、セリ栽培を営んできた谷悟史さん。谷さんは民間企業で働きながら、実家を手伝っている。この日は、知り合いの畑で収穫作業。湿地で栽培するセリの収穫を体験させてもらうと…。
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JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
低い体勢で行うので、体が大変ですね
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セリを栽培・谷悟史さん:
雪が降る中でも皆さんやっているので、寒さとの戦いもある。量もたくさんとらないといけないので
かつて「黒田セリ」は冬の間の収入源として盛んに栽培され、県外にも多く出荷されていた。
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しかし、最盛期の昭和40年代に約40軒あった農家は、今では5軒にまで減少。高齢化も進み、存続の危機に瀕している。
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さらに、ここ5~6年で畑のほとんどが住宅地になり、谷さんの畑もすぐ隣が駐車場になっている。
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セリを栽培・谷悟史さん:
この駐車場と向こうの駐車場ですね。今、工事が入っているところから手前は全部、谷家の田んぼで、全部セリを作っていました
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祖父の代には盛んに栽培していたセリも、今はこの約80平方メートルの小さな畑を残すのみだ。
JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
この「黒田セリ」の現状は、どうとらえていらっしゃいますか?
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セリを栽培・谷悟史さん:
出荷している農家が3~4軒ぐらいしかない状況。皆さん、ご高齢になっているので、もういつなくなってしまってもおかしくないという危機を感じています。田んぼに一緒に入って教えてくれるというのができなくなるのではという危機感がありましたので、お手伝いですけど、去年から一緒にさせていただいているところです
自身も代々続いたセリ農家。谷さんは何とか伝統を引き継ごうと、母親の栽培を手伝っている。
これからの夢と展望
収穫した「黒田セリ」をしゃぶしゃぶでいただいた。
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JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
しゃきしゃきした食感で、香りが口いっぱいに広がります
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栽培農家を増やそうとレストランなどに売り込み、付加価値をつける取り組みも始めている。
JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
谷さんの夢、これからの展望をお聞かせください
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セリを栽培・谷悟史さん:
サポートではあるのですが、飲食店の方々に食べ方の提案などほそぼそとやっていって、改めて「黒田セリ」が地元の名産になるように、しっかりやっていきたいと思っています
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セリは、前の年の苗を引き継いで栽培する。このため、いったん栽培をやめると、収穫量はどんどん減ってしまう。松江伝統の「黒田セリ」。細くとも、しっかりと根をおろすようにと、谷さんの挑戦は始まったばかりだ。
(TSKさんいん中央テレビ)