2月22日は、島根県が制定した「竹島の日」。隠岐の島町で販売されている地元産のアワビを使った新商品には、韓国による不法占拠が続く「竹島」への関心を高めてほしいという思いが込められている。「竹島」の記憶の継承につなげようと、生産を手がける家族の思いを聞いた。

「竹島に想いめぐらす塩あわび」

漁師歴25年のベテラン・吉田敏さん(62)。

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35年前に隠岐の島町にUターンしたあと、一念発起して素潜り漁師になった。アワビやサザエ、ウニといった海産物をとるほか、加工にも取り組んでいる。

吉田さんは、かつて「竹島」で漁をした人の子孫。

2023年の「竹島の日」(2月22日)を前に、アワビを塩辛に加工した新たなみやげ物を開発し、販売を始めた。

新商品の名前は「竹島に想いめぐらす塩あわび」。

吉田さんの曽祖父、そして父へと受け継がれた「竹島」の記憶をヒントに生まれた。

父の「竹島」に関する記憶

吉田さんが見せてくれた2枚の写真。

そこには、1934(昭和9)年に隠岐・西郷港から「竹島」に向けて出漁する船の様子、そして「竹島」に到着した時の様子が写されていた。

吉田さんの曽祖父・重太郎さんの後ろ姿も写っている。明治から昭和初めごろにかけて、隠岐から「竹島」へ盛んに出漁していた。

そこで、島民はアワビやサザエ、ワカメなどの海産物を採ったほか、ニホンアシカなどを捕獲し、貴重な収入源としていた。

吉田徹さん:
第十神福丸の船長をしていたのが、重太郎、わしのじいさんだから

敏さんの父・徹さん(89)は、元教師だ。子どものころから、祖父・重太郎さんに「竹島」での漁について聞いていた。

そして、その記憶と記録を地域の人たちや竹島の研究者に伝えてきた。

吉田徹さんは、写真を見せながら「これはこれから久見(隠岐の島町北西部の集落)に行くところ。久見に行って野菜や米を積んで、久見の漁師を4~5人乗せて、一昼夜かけて竹島に行く」と当時の様子を語った。祖父・重太郎さんらが捕まえたアシカの脂が傷の治療薬の代わりに使われたことなど、当時のエピソードも鮮明に記憶している。

半年がかりでようやく…

そんな父の「竹島」に関する記憶を、敏さんは引き継ごうとしているが、そこに新商品のヒントがあった。

それが「竹島」でアワビが大量にとれたという話。そのアワビを使って当時作られていたという「塩アワビ」の加工に取り組むことにした。ただ、その製法については過去の資料になく、敏さんは、アワビの身の厚さや塩の割合などを試行錯誤、半年がかりでようやく商品化にこぎつけた。

吉田敏さん:
「竹島」に関して、私もいろいろ研究して、ますます、皆さんに「竹島」のことに関心を持っていただくように、いろいろな話を伝え聞き、また話していきたい

曽祖父、父、そして自身の思いを込めた「塩アワビ」。「竹島」での漁に向かう船がかつて発着した西郷港の隠岐汽船のターミナル内のみやげ物売り場で2月14日から販売されている。今後、隠岐空港や西郷港近くの市場、さらに島根県の物産観光館やオンラインショップなどへ販路を広げていく計画だ。

(TSKさんいん中央テレビ)

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