日本の宇宙戦略を左右する国家プロジェクト新型「H3ロケット」開発計画。17日、待望の打ち上げとなりましたが残念ながら飛ばすことができなかった。飛ばなかった原因や今後打ち上げは成功するのかについて、ロケット開発に詳しい大阪産業大学の田原弘一教授に聞いた。

ロケットが打ち上げられなかった理由

JAXAは17日の会見で、「何らかの異常を検知し、補助ロケットに、着火信号が送られなかった」としているが…

大阪産業大学 田原弘一教授:
(Q:そもそもロケットはどうやって飛ぶのでしょうか?)

メインロケットのエンジンは新しく開発された高性能なエンジンです。その脇に2本の補助ロケットがあります。今回の打ち上げについてJAXAのプロジェクトマネージャーの説明では、メインエンジンは始動したと話していました。

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大阪産業大学 田原弘一教授:
しかし、これだけだと非常に重いロケットを持ち上げることができません。補助ロケットの推力が必要です。メインエンジンは気体などの燃料ですが、補助ロケットは固形燃料で花火みたいに火薬が詰まっています。メインロケットが作動したら、本来であれば補助ロケットを着火させるための信号を送るわけですが、その信号が送られませんでした。そのため緊急停止をした状況とみられます

大阪産業大学 田原弘一教授:
(Q:信号が送られなかったということですが、どんな異常があったのでしょうか)

ロケットを制御する機器がメインエンジンの上部にありますが、制御機器には多くのハードウェアなどの電気系統に情報が送られていて、何を動かすかなどの制御をします。信号が送られなかったというのはシステムに異常があったということです。深刻な場合、メインエンジンに不具合があってそれを察知したということが考えられますが、もう一つの原因としては電気的なトラブルで着火信号が送られなかった可能性があります。プロジェクトマネージャーの話によると、おそらく後者であろうということです。メインエンジンは着火したものの、補助ロケット自体に不具合があるわけではないため、電気的なトラブルで信号が送られなかったと考えられますね

–Q:JAXAは会見で、「今年度内の打ち上げを目指してがんばりたい」と話していました。田原教授はロケット本体が無傷であるため、今回使用したロケットで打ち上げのリベンジができると考えているのですね?

大阪産業大学 田原弘一教授:
補助ロケット、メインエンジンともに外傷はありません。非常に大きい原因があれば別ですが、現状では機器は正常に機能するであろうということです。電気系統をみれば年度内に打ち上げができるのではないかと思います

–Q:神崎デスク、打ち上げを急ぐ理由というのがあるのでしょうか。

関西テレビ報道局 神崎博解説デスク:
ロケット打ち上げが国家プロジェクトではありますが、ロケットビジネスという側面もあります。アメリカとかヨーロッパも競争になっていて、各国が人工衛星を打ち上げたいけれども、どこの国に発注するのかと競われています

関西テレビ報道局 神崎博解説デスク:
日本ではこの前打ち上げたH2というロケットがあるのですが、打ち上げ成功率は高かった一方、価格がかなり高かったです。1回打ち上げるのに100億円以上かかっていました。それでは国際的に勝負できないということで、H3は半額の50億円で打ち上げられるように部品の数を減らしたり、部品の多くは自動車と共用としたりしてH3を作りました

関西テレビ報道局 神崎博解説デスク:
実際にエンジンのトラブルとかでH3の打ち上げは2年ぐらい延期が続いていました。2年ぐらいの間に、アメリカもどんどん技術が上がっていってロケットの打ち上げ費用も安くなって60億円ぐらいで飛ばせるようになりました。日本は価格で勝とうとしたけれども価格的なメリットがなくなってきています。ロケットビジネスの中で勝ち残れるかという面もあります

大阪産業大学 田原弘一教授:
(Q:ロケットに関する日本の優位性について、今後どうしていくのが良いのでしょうか)

コスト面では世界とも同等になりました。もう一つの面では人工衛星の打ち上げる能力、つまりどれぐらいの重量の人工衛星を打ち上げられるかでも、アメリカやヨーロッパと全く同じレベルに達しました。日本のロケットはメインエンジンや補助ロケットの個数などを自由に変えることができるので、人工衛星のユーザーの希望に合わせてサービスを提供するなどで日本の優位性を示していくことが大切だと思います

(関西テレビ放送「報道ランナー」2023年2月17日放送)

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