外反母趾(ぼし)や「うおのめ」など、足トラブルの原因のほとんどは靴だと言われている。子どもの場合は、足の骨の変形につながるリスクもあるという。生涯自分の足で歩けるための足づくり「足育」を取材した。

「幼少期のケア」が特に重要

2022年12月に長崎市で開かれたのは、その名も「足育講座」。自分の足と靴と、じっくり向き合う。

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講師は「ドイツ整形外科靴マイスター」のベーレ・ルッツさん。

ドイツ整形外科靴マイスター ベーレ・ルッツさん:
快適にしっかり歩くことで、見える景色やバランスもモチベーションも違う

「整形外科靴マイスター」は、靴医学の「先進国」ドイツの国家資格で、靴職人としての高度な技術と医療的な知識を兼ね備えた、足と靴のスペシャリストだ。

ベーレさんは1997年に来日。病院での靴外来のほか、大学とタッグを組み、子どもや高齢者の足の研究にも携わっている。

フットケア師の妻・操さんとともに全国で「足育講座」を開き、トラブルの相談を受けている。ベーレさんは「幼少期のケア」が特に重要だと話す。

ドイツ整形外科靴マイスター ベーレ・ルッツさん:
3~5歳までは成長線が非常に早い。大人とは全く違う成長の仕方をする。しっかり計測して見守る必要がある。

子どもの足は“軟骨”でできていて、合わない靴を履き続けると簡単に足の骨の形が変わってしまうという。

ドイツ・フットケア師 ベーレ・操さん:
「とにかくうちの子どもは歩きたがらない、運動を嫌がる、全身がだるい」という例は、(病院を)受診すると足の変形に靴が負けてしまっている。爪も伸びず、変形をし始めている

欧米諸国に比べて、日本は足を大切にする文化が十分に浸透していないと言われている。「靴教育」が進んでいるドイツでは、子どもが自分で靴をきちんと履けるようにならないと幼稚園に入ることができない。

ドイツには、半世紀以上前から世界で唯一の子ども靴の統一規格がある。靴の幅や素材、歩く時の指の曲がる場所など機能性を含めた細かい規定があり、子どもの成長と健康を考えた靴が作られている。

ドイツ整形外科靴マイスター ベーレ・ルッツさん:
ドイツは子どもの頃からの足部成長を見守り、小児の頃から足を大事にするということは後々の寿命、快適歩行、医療費削減につながるんだよというのは1950年代から叫ばれてきた

ベーレさんは医師と連携し、相談を受けた人の足を分析。その人に合った材料を探し、靴や中敷きの制作も行っている。

足育講座の参加者:
もっと早い時期に知っていてればケアできたのかな

10歳と6歳の子どもの母親:
靴はいつもデザインで選んでいたから、本当にあった靴を選んでいなくてかわいそうだった

変形リスクも…正しい靴選び

足にあった靴はどのように選べばよいのか。長崎市にあるフットケアサロン「アヒナヒナ」を訪ねた。

まずは足の計測「フットプリント」をとる。長さや幅、甲の高さだけでなく、変形などのトラブルも分かる。

アヒナヒナ オーナーセラピスト 平山由紀穂さん:
アーチ(土踏まず)ができていない、うちくるぶしの下にふくらみがあると、かかとが内に倒れて外反足の傾向がある

扁平足になると…
扁平足になると…

土踏まずは地面からの衝撃を和らげるクッションの役割を果たすため、扁平足になると疲れやすくなり、姿勢にも影響するといわれている。 足の骨は、10歳までにほぼ固定されるため、それより早い対処が必要だ。

サロンではドイツの子ども靴の規格で作られたものも取り扱っていて、トラブルに応じたインソールのオーダーも可能だ。

アヒナヒナ オーナーセラピスト 平山由紀穂さん:
(オーダーした)インソールをして運動するとアーチ(土踏まず)があがりやすい状態になる。土ふまず部分を挙上(高い位置にあげること)しやすいようにサポートするインソールになっている

正しい足の骨を作るためにも、人生で初めてのシューズ「ファーストシューズ」選びは大切だ。ハイハイから2足歩行になると、足には急激な負荷がかかる。負荷を減らし、不安定なかかとを支える靴が求められる。

コロナ禍で外出が減ったため、子どもの足のサイズ変化に気づかない親が増えたという話もある中、変形を防ぐためには、1歳は1カ月ごと、3歳までは3カ月ごとなど、成長と年齢に応じたタイミングで足を計測することが理想とされている。

抜き取りができるインソールに足を乗せた時、子どもでは指先から12mmから17mmの余裕が必要だと言われている。

サロンに通う母親:
年齢を重ねれば歩けなくなるのは普通だと思っていたが、子どもの時にケアをしておけば、死ぬまで自分の足で歩ける足を作れるというのを学んだので、すごくよかったと思っています

足と靴に向き合う“一歩”

自分の足と向き合い、本当に合った靴を選ぶ。ベーレさんの願いは変わらない。

ドイツ整形外科靴マイスター ベーレ・ルッツさん:
靴を見る目を大人が養ってほしい、もっと注意を払って正しく靴を選んでほしい、定期的に足をチェックしてほしい

ベーレさんらが参加する日本フットケア・足病医学会 学術委員会は、2月11日に奈良県で行われた日本最大の足の医学会で「子どもの靴選びについての手引書」を提案し、承認された。今後、靴メーカーや教育現場、家庭などに手引書を広めたいとしている。

人生100年時代。生涯自分の足で歩くために足や靴の知識を持ち理解を深めることが、その「一歩」となりそうだ。

(テレビ長崎)

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