瀬戸内海の島々からなる自然豊かな広島県江田島市に、初めての「クラフトビール」が誕生した。手掛けたのは広島市で老舗の酒類卸会社。コロナ禍の苦境に立ち向かい、構想から2年。完成までの道のりを追った。

コロナ禍で“攻めの一手”

広島市安芸区の酒類卸会社「ヒラオカ」は1910年創業の老舗で、県内各地の酒屋などに商品を卸している。

広島市安芸区の酒類卸会社「ヒラオカ」
広島市安芸区の酒類卸会社「ヒラオカ」
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ところが、新型コロナによる影響で売り上げは激減。必死で従業員の雇用を守りながら苦境の時期を耐えてきた。そんな中、2021年から“攻めの一手”として本気で挑んだのがクラフトビール。
2022年には江田島市で明治から続く酒蔵の一角に拠点を設け、醸造所を整備。「島の人と地域活性化に取り組みたい」という思いで新規事業に踏み切った。

ヒラオカ・平岡保幸 専務:
コロナ禍明けに需要が復活していく中で、その一助になれたら面白いかなと思います

2022年2月、改装工事中の醸造所にて
2022年2月、改装工事中の醸造所にて

2022年7月、醸造所「江田島ワークス」の工事が完了。設備などがそろい、初めて麦芽を入れて稼働させる日に加藤雅也アナウンサーが醸造所を訪れた。

加藤アナ:
クラフトビールの製造に向けて仕込みが始まっています。麦芽独特の香りが漂っていますね

新設した醸造所で麦芽を入れた仕込みがスタート
新設した醸造所で麦芽を入れた仕込みがスタート

ヒラオカ・平岡保幸 専務:
できた麦汁をタンクに入れて酵母で発酵させて…。いろいろなところで勉強させていただて、それがカタチになるかどうかですね

販売する側から、製造する側へ

仕込みを始めて約7カ月後、2023年2月9日に再び醸造所を訪ねた。

醸造所「江田島ワークス」への案内看板
醸造所「江田島ワークス」への案内看板

そこには真剣な表情で準備に取り掛かる平岡専務の姿があった。

ヒラオカ・平岡保幸 専務:
やっとですね~

構想から2年、試行錯誤を重ねてようやく納得できるビールが完成した。

ヒラオカ・平岡保幸 専務:
難しいですけど、毎回変えるごとにちょっとずつ出来が良くなってきたので。まずは地元の方々にも味わっていただいて、受け入れてもらえればと思います。われわれは販売する側でずっと来ましたが、今度は自分たちが作ったものがどう評価されるか

ボトルのエンブレムは、江田島市の地形をモチーフにデザイン。地図上で“鳥が羽ばたいている”ように見えることや、江田島出身の六角紫水が手掛けたキリンビールのデザインのように伝説・神話の生き物をモチーフにしたいという思いが込められている。

江田島の新たな観光資源として

江田島初となる2種類のクラフトビール。グラスに注がれた黄金色のビールの味は…

加藤アナ:
色は少し濃いように見えますが、飲み口はすっきりしています。まろやかな味わいで苦みもしっかりと感じられますね

テレビ新広島・加藤雅也アナウンサー
テレビ新広島・加藤雅也アナウンサー

「新幹線などの移動時にも楽しんでほしい」と、簡単に外せる栓を採用。今後は、江田島で採れた柑橘やオリーブなどを使ってオリジナリティを出す考えだ。直営の酒屋など3カ所で販売を始め、順次、広島県内に販路を広げていくという。江田島市内で商品を取り扱う宿泊施設は大きな期待を寄せている。

クラフトビールを取り扱う宿泊施設「江田島荘」
クラフトビールを取り扱う宿泊施設「江田島荘」

江田島荘 料飲部・矢野祐也 スーパーバイザー:
われわれの施設で提供しているのがフレンチのコース料理なので、江田島で作られたビールとコース料理のペアを組めることは強みになります。江田島としても面白いことができるのかなとワクワクしますね

苦境を逆手に新事業に挑む企業の底力で、新しいビールが生まれた。その舞台となった江田島の観光振興にも明るい光を照らしている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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