名古屋市営地下鉄の駅で1月、男性が列車にひかれ死亡した。ニュースサイトのコメント欄には、「ホームドアがあれば防げたかも」「ホームドアの早期設置を」といった声があがっているが、ホームドアは費用だけでなく、位置の問題など、設置に高い壁があることがわかった。

ドアの位置の違いや高額な費用など…設置が進みにくいホームドア

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名古屋市中区の地下鉄鶴舞線・上前津駅のホームで1月15日、高齢とみられる男性がひかれ、死亡した。

2019年の統計では、ホームからの転落は全国で3047件あり、そのうち160件が人身傷害事故に至った。事故になった数は減少傾向にあるものの、転落件数は横ばいだ。

全国でホームドアを設置している駅は1月20日現在、943駅ある。名古屋駅近郊では、JR東海は名古屋駅の新幹線ホームと在来線の金山駅の2駅で、設置率は2.6%、名鉄は中部国際空港と上飯田の2駅で設置率は0.8%だ。

現状についてJR東海は、新幹線のぞみの停車駅は全駅設置済みで、在来線なども必要な所から順次設置を進めているという。

名鉄は、ドアの数などが異なるため導入が進みにくく、車両連結部に転落防止カバーをつけるなど別の対策をとりながら、ホームドア導入に向けて動いているという。

事故があった名古屋市営地下鉄は、鶴舞線以外は全線で設置されていて、設置率は約80%と決して遅れているわけではなかった。

鶴舞線だけ設置されていない理由を、名古屋市交通局の電車部に取材したところ、「鶴舞線は名鉄と相互直通運転があるため、お互いの車両のドアの位置がずれていて、設置に時間がかかってしまっている」としている。ただ準備は進めていて、2026年のアジア大会までに設置する予定だという。

ホームドアの現状について、鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、国が2015年に、利用者が多い駅から優先的に整備する方針を出し、補助金を出すなど後押しをしてはいるものの、「鶴舞線のように他社の車両の乗り入れが多く設置しにくい」「整備費用が1駅あたり数億円と高額」「ドアは1両分で2トン程度あり、盛り土の上に立つ駅などは補強しないと作れない」といった事情で、全国的になかなか進みにくいという。

国は、ホームドアなどバリアフリーの費用を運賃に上乗せしてもよいという「鉄道駅バリアフリー料金制度」を作り、さらに整備が広まるよう促している。

まるで"ふすま"…ドアが開く位置を自由に変えられる世界初のホームドア

JR西日本にはちょっと変わった「ホーム柵」があり、この春には世界初のホームドアも登場する。

2014年から大阪駅など複数の駅で採用されている「昇降式ホーム柵」。

電車が止まると、支柱の間に張られたロープが上がり、電車のドアが閉まると、ロープも下がる。ドアの位置が違う列車にも対応できるほか、軽量でコストも抑えられるというメリットもある。

世界初のホームドアもある。「フルスクリーンホームドア」だ。

ドアは案内板の裏にしまわれ、案内板も移動する。ガラス扉はもちろん、案内板もまるで「ふすま」のようにスライドする。ドアが開く位置を自由に変えられるので、どんな列車にも対応できるようになっている。

このホームドアは2023年春に開業する大阪駅(うめきたエリア)で導入される。

(東海テレビ)

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