コロナ禍で海外との定期便を全て運休している松山空港。3月にソウル便が復活が発表された。海外便の復活をにらみ、愛媛の魅力でインバウンドを取り込んでいこうと、「JR」と「JAL」がタッグを組んだ。

鉄道の旅に“JALのCAさん”がお出迎え

JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」。松山と大洲・八幡浜を特別車両でめぐるぜいたくな鉄道の旅は、2014年の運行開始以来大人気で、14万人以上が利用している。

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2月2日、JR松山駅で乗客を出迎えるアテンダントの中にちょっと見慣れない制服の人が…。

八木貴士記者:
人気の観光列車・伊予灘ものがたり。お出迎えしてくれるのはJAL(日本航空)のキャビンアテンダントさんです

日本航空 客室乗務員・飯田りかこさん:
ご乗車ありがとうございます。本日は伊予灘ものがたり・JALコラボツアーにご乗車くださいまして誠にありがとうございます

日本航空は今回、JR四国や大洲市とコラボし、今後のインバウンド需要の回復を見据え、冬の大洲を満喫する新たなモニターツアーを企画。この目玉として、キャビンアテンダントが「伊予灘ものがたり」に乗車した。

日本航空 客室乗務員・飯田りかこさん:
お楽しみいただけてますか。私も初めてで緊張しておりますが、とてもすてきな車内ですよね

乗り慣れた空の旅と違い、最初は緊張も見られたが、さすがはプロの客室乗務員。洗練された身のこなしで乗客ひとりひとりと会話しながら、旅行ムードを盛り上げる。

乗客に手渡していたのは、感謝の気持ちを込めた手書きのメッセージカードだ。

ツアー参加者:
世界ナンバーワンのJALさんなので、笑顔も自然な笑顔ですごくすてきですし、お客さま目線でいうとワクワクするようなサービスをご提供していただけるので、さらに付加価値のつくツアーになるんじゃないかなと思います

ツアー参加者:
すごく新鮮だなと思いました。プロフェッショナルなおもてなしをこちらでも受けられるというので。楽しみでしょうがないです

愛媛県内外から旅行会社やインバウンドの専門家など25人が参加した今回のモニターツアー。愛媛産食材を使った高級フレンチの弁当を味わいながら、目的地の大洲を目指す。

途中、列車が止まったのはSNSで若者に人気のフォトスポット・JR下灘駅だ。飯田さんも乗客たちとの記念撮影に気さくに応じる。

外国人のツアー参加者:
すごくきれいです。海を見るのはとても楽しいです。最近はちょっとだけ外国人も戻っているので、いいタイミングと思うので、うれしい。(海外の観光客が)いっぱい乗ったら

沿線の駅や道端から地元住民らが、窓越しに手を振ってお出迎えする。地域と一体となったおもてなしを体験できるのも、伊予灘ものがたりならではの楽しみ方だ。

日本航空 客室乗務員・飯田りかこさん:
普段の乗務では、なかなかこういった電車でサービスをするということはないので、とても貴重な体験でしたし、地域の方々が近くで応援してくださってる様子を見ることができて、すごく心がジーンとしましたし、温かい気持ちになりました

歴史を守りつつ“サステナブルな魅力”を発信…

列車は、約2時間ほどで目的地の大洲に到着した。ツアー客らは大洲市内の散策に出かける。江戸時代から明治時代にかけての歴史的な邸宅や町家など、古い街並みが残る大洲の城下町は「伊予の小京都」とも呼ばれ、年間3万5,000人が訪れる人気の観光地だ。

2020年には、地域に点在する古民家を改装したホテルも開業。これまでに1万人以上が宿泊するなど、大洲観光の新たな起爆剤となっている。

ホテルの運営会社 バリューマネジメント・吉田覚マネージャー:
建物を守りながら街の魅力もあわせて増やしていく。街がちゃんとブランディングされて顧客にとって滞在価値がちゃんとある街の開発というのができているというのが、この大洲が世界から非常に評価をいただいている理由

古民家を再生させる観光地づくりは世界でも高く評価され、今年度、オランダの非営利団体が選ぶ「世界の持続可能な観光地100選」に選ばれた。こうした「サステナブル」な魅力が海外からの観光客をひきつけると期待されている。

ホテルの運営会社 バリューマネジメント・吉田覚マネジャー:
こちらの客室は一階に大きなひのき風呂がございますのと、縁側の奥にございますのが茶室ですね。元々茶室がそちらに建っておりまして、それを復元するような形でご準備したものでございます

城下街を散策しながら古民家ホテルを見学。リノベーションされた建物は、壁など当時の素材をそのまま残し、洗練された高級感を醸し出している。

ツアーの参加者:
光が柔らかくてすごい。そのまま使えるんだなと思って、味があってすごくいいですね

ツアーを終え、参加者も高評価だ。

HIS中四国法人営業部・秋岡康代部長:
欧・米・豪のお客さまって滞在が長いというところと、文化的な知的体験を好まれる方が多いので、今回のツアーというのはすごくお客さまに響くんじゃないかと思いました

日本航空松山支店・安部博史支店長:
コロナ禍になりまして、航空会社は厳しい時代が続いておりました。まさに来年度インバウンド需要が期待されております。我々インバウンドに対しては、欧・米・豪という狙いがございまして、そこに古民家再生のプロジェクトが非常にマッチしている。皆さま、この歴史的建造物をホテルに改修したものに非常に感激しておりまして、これを生かして新たな商品造成に磨きをかけていきたい

日本航空は今回のモニターツアーをもとに、来シーズンの冬ツアー商品の本格的な販売を目指している。

“鍵”は「愛媛の魅力」の売り込み方

松山空港の国際線は、韓国のソウル、台湾の台北、中国の上海と3つの定期便は全て運休が続いている。こうした中、ソウル便はいち早く3年ぶりの再開を決めた。3月26日から火・木・日の週3往復で再開される。
残る2路線の定期便再開は未定だが、このうち台北は3・4月にチャーター便が新たに8往復飛ぶことが決まっていて、愛媛県は定期便の再開へ弾みをつけたい考えだ。インバウンド・外国人観光客の取り込みに期待が高まる。

コロナ前・2019年の外国人観光客の愛媛県の宿泊者数は、延べ21万6,000人を超え好調だった。それがコロナ禍を経て、2021年は10分の1以下に落ち込んでいる。

国際線再開などのタイミングを生かし、愛媛の観光資源の魅力をうまく活用したツアー商品をどう売り込んでいくか、インバウンドの取り込みを成功させるための鍵といえる。

(テレビ愛媛)

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