いまや「顔の一部」となったこのマスクを、つけるのか、つけないのか。専門家から卒業式などでのマスクなしでの参加を容認する考え方が示され、子供たちの間では葛藤が生まれているようだ。

卒業式ではマスクをつける?つけない?

大阪市にある「桃山学院中学校・高等学校」。

橋本和花子キャスター:
こちら中学3年生の教室です。見る限り、生徒全員がマスクを着けていますね

これまで学校では国の方針を受け、体育の時間を除きマスクを着けることを推奨してきた。

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そんな当たり前の学校生活が変わろうとしている。政府関係者によると全国的に感染者数が減少傾向にあることなどから、3月前半にもマスクの着用を原則、個人の判断に委ねる方向で調整していることが分かった。

また、厚生労働省の専門家会合は、学校の卒業式や入学式などについて、感染が落ち着いた地域では、マスクなしで参加することを容認する見解案を示した。

厚労省アドバイザリーボード 脇田隆字座長:
「学校の式典はリスクがないのでマスクをしないくていい」と言っているわけではなくて、一生に一度の行事であるといった卒業式・入学式という式典で、マスクを外して参加したいという気持ちも理解できるし、尊重するべきではないかと

 “マスクなし”参加を容認する専門家も

これを受けてまもなく卒業式を迎える生徒たちは、

中学3年生:
私は(マスクなし)賛成派です。やっぱりみんなでマスク外して、最後ぐらいはみんなでちゃんと“マスクなしの笑顔”見て卒業したいです

高校3年生:
やっと来たなって感じです。マスク、マスク、学校も常にマスクで。大学っていう新しいステージに入るときに、マスクない素顔を知れるのは、僕としては望ましいです

生徒数の多いこの学校では、卒業式に保護者も含めると1000人以上が参加するそうで、先生は少し複雑なようだ。

桃山学院中学校・高等学校 生田耕三教頭:
感染がなくなったわけじゃない以上、式中はマスクを積極的に外しなさい、外していいよという指導はしにくいのかなと思うんですけど。記念撮影したりとか、そういうシーンはたくさんあると思うので、そういうところでは積極的に外していいよと、声をかけることは可能なのかなと

学校生活や式典でのマスク着用について、専門家は

長崎大学 森内浩幸教授:
できるだけ大事なイベントを、みんなの一生の記憶に、記念になるような形で迎えられるようにすることに、みんな努力をすべきだと思います。感染対策一辺倒でいくというのは、これから間違いだと思います。入退場のとき、校長先生が卒業証書を渡すようなときに、マスクが要るかっていうと要らないと思います。声出すわけじゃないからですね

「顔を見られるのが怖い」との声

一方で、生徒からはこんな声も多く聞かれた。

中学3年生:
人の反応が気になる。自分の顔見て、こいつこんな顔してるんだって思われたときに、マスク外せないとか

中学3年生:
顔を見られるのが怖いという気持ちの方が勝っちゃうんで、ちょっと外すのはできないですね。(Q.卒業式は一生に一度、みんなの顔を見たいとは思わないですか?)
ちょっとはありますけど、(マスクを)外すのは嫌ですね

ある調査では、マスクについて「いつも使用したい」「できるだけ使用したい」と感じている10代の女性は、半数を超え、他の世代・性別と比べて最も高い値となっている。

マスクを外すことを強制されるのではないかと、心配する声もあります。

小学6年生の女子児童:
「マスクを外してもいいよ」という風潮はいいと思うけど、「外せ」みたいな感じはちょっと嫌だなと思います

神戸市に住む小学6年の女子児童。家ではマスクを外しているが、学校では、顔を見られるのが恥ずかしいという理由で、真夏の体育の授業でもマスクを着用してきた。卒業式でも、記念に残る写真撮影以外は、マスクを着用したいということだ。

女子児童の母:
(マスクを)外したくないのに、外さないといけないってなってしまって、卒業式がその子にとって不安の材料とかになるんだったら、してる方がいいんじゃないかなと思う

「外したくない子どもを否定しない」

専門家は、マスクを外したくない子どもを否定しないことも大切だと話します。

長崎大学 森内浩幸教授:
(マスクを外したくない)気持ちはしっかりと受け入れていくというところだと思います。マスクをしなければ周りからずっと非難されるようなことが続いて、そういう風になってしまった子供たちのことを、私たち大人が責任を持って対応しないといけないわけです

子どもたちが安心して過ごせるよう、慎重な対策が求められる。

「マスクなしの会話に抵抗ある」

ある調査によりますと、10代後半の女子の66%、3人に2人は「マスクなしの会話に抵抗ある」と回答している。その理由として、「恥ずかしいから」「顔を見られたくないから」という声が上がった。

そもそも感染対策として、マスクには効果が認められている。不織布マスクだと、約8割の飛まつ拡散を抑えられることが理化学研究所などの研究で明らかになっている。

自分が感染しないための対策としても一定程度効果があるといわれているが、主に人にうつさない効果があるといわれている。感染対策のためには、みんながマスクを着けている環境があることがいいことになる。

一方で、子供たちの成長への影響が懸念されている。長崎大学医学部の森内浩幸教授によりますと、マスクをしていると「相手の表情・感情が分かりにくい」ので、「コミュニケーション能力が低くなる・育ちにくい」という現象が明らかになっているとのことだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2023年2月9日放送)

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